工作機械工業会5月受注確報 5月4.2%増1245億円と17ヶ月ぶりに同月比増加
5月工作機械受注は1245億円(4.2%増)、17ヶ月ぶり同月比プラス
6/25の15時に日本工作機械工業会の2024年5月工作機械受注確報が開示された。5月受注は1242億円(同月比4.2%増)と17ヶ月ぶりに同月比増加となり、3カ月連続で1200億円超となった。外需中心に堅調な動きで、底打ちの気配が出つつある。
外需は9.8%増896.9億円と17カ月ぶりに同月比増加、中国のNC化率75%目標が焦点
外需は896.9億円(同月比9.8%増、前月比6.1%減)と同月比で17ヶ月ぶりに増加、前月比も2ヶ月ぶりに増加し、880億円超は5カ月ぶり。主要4業種で同月比全て増加、前月比は自動車のみ減少。一般機械は289.1億円(同月比12.9%増、前月比12.7%増)4ヶ月ぶりに280億円超。自動車は202.8億円(同月比12.4%増、前月比2.6%減)と3ヶ月連続200億円超。電気・精密は135.2億円(同月比19.3%増、前月比9.3%増)と13ヶ月ぶりに130億円超となった。航空・造船・輸送機械は78.9億円(同月比45.7%増、前月比60.0%増)と、米国での不正問題から前月受注取消あったと推定される分が改めて発注され、3ヶ月ぶりの70億円超に復元。
主要3極別ではアジアが426.2億円(同月比18.3%増、前月比1.6%増)と、2カ月連続で400億円超えとなる。主要4業種全てで同月比増加した。国別では中国が279.9億円(同月比19.0%増、前月比5.4%増)と同月比2カ月連続増、前月比は4カ月連続増と底打ちがはっきりしてきた。中国の主要4業種では一般機械98.5億円(同月比14.6%増)、自動車87.3億円(同月比26.1%増)、電気・精密65.0億円(同月比22.6%増)と軒並み2ケタ増加。中国においては16ヶ月ぶり増加、自動車の大口受注も有り2ヶ月連続の250億円超に。この需要回復の背景には、4/9に「工業分野の設備更新を推進する実施プラン」が公表され、数値目標として2027年までに工業分野の設備投資の規模を2023年比25%以上増加させ、一定規模以上の製造業について、核となる製造工程の数値制御(NC化率)を75%超に引き上げるとしたことが挙げられる。しかも、非効率な設備や耐用年数を超えて老朽化した設備の廃棄を加速するとした。ちなみに2023年の工業分野の設備投資額は前年比8.7%増の4.4兆元(約92兆円)、設備投資全体の70%を占める。このため、将来的に設備更新投資は年間5兆元を超えるとしている。現状、中国の設置工作機械のNC化率は2010年当時の約40%が2021年には約50%に達した(日本はNC化率90%以上)とみられるが、NC化率75%目標、しかも古い設備は廃棄となれば大きな需要が生まれることとなるため、改めて中国での工作機械受注の急拡大もあり得る局面となった。その他ではインドが41.98億円(同月比26.3%増)、台湾22.23億円(56.2%増)、タイ21.85億円(35.1%増)など高い伸び率に。北米は276.3億円(同月比9.0%増、前月比21.7%増)と前月のアメリカが236.0億円(同月比6.3%増、前月比24.9%増)と、大口キャンセルの反動増で北米では2か月ぶりの270億円超に。北米主要4業種では自動車38.2億円(同月比4.3%増)で2カ月連続で40億円割れ。一般機械も75.6億円(同月比2.8%減)と4カ月ぶりに80億円割れ。一般機械は80.7億円(2.0%増)で3ヶ月連続80億円超。電機・精密は29.1億円(同月比69.5%増)と堅調。航空・造船・輸送機械は47.2億円(同月比47.9%増)と不正問題が影響しキャンセル発生の前月の反動増で4か月ぶりに45億円超に。欧州は172.6億円(同月比3.6%減)と、5ヶ月連続減かつ連続180億円割れで、外需の構成比で19.2%と17カ月ぶりに20%割れに。ドイツは35.2億円(同月比17.0%減)と6ヶ月連続減、イタリアも24.1億円(同月比23.8%減)と8カ月連続減少。主要業種4業種は一般機械62.0億円(同月比16.0%減)、電機・精密は21.3億円(同月比36.0%増)と5カ月ぶりに20億円超、航空・造船・輸送用機械も16.5億円(同月比45.3%増)に。ボーイングの737問題を受けてエアバス増産に向けた発注が出ていると推測され、トルコやイタリアなどで恩恵が広がっている模様。
内需は348.4億円(同月比7.9%減)と21ヶ月連続同月比減も
内需は348.4億円(同月比7.9%減、前月比4.2%減)と21月連続で前年同月比減、前月比も5月連休などもあり減少、3ヶ月ぶりに350億円割れに。主要4業種は同月比で航空・造船・輸送用機械、電気・精密が増加した。自動車77.2億円(同月比1.4%減)と3ヶ月ぶりに減少、3カ月ぶりに80億円割れと低水準が長く継続している。一般機械も143.6億円(同月比18.5%減、前月比11.9%増)と21ヶ月連続同月比マイナス。
5月販売9.4%減1131億円と大台は回復、受注残は8.2%減7927億円
5月販売は1131億円(同月比9.4%減)と低調続く。1000億円割れの前月からは回復し1000億円大台に回復した。受注残高は7927億円(同期比8.2%減)と12ヶ月連続同月比減、8ヶ月ぶりに1ケタのマイナスに止まった。
工業会の7~9月受注動向アンケート調査では見合わせ状況続く
6月上旬に実施された工業会会員アンケートでは7~9月受注動向について、見合わせが続くとしたウエイトが上昇、不透明感が増しているとの見方で、明確な受注回復の実感は11月に開催される工作機械見本市の時期になるのではとの意見も多い。但し中国向けで小型旋盤への受注が回復しており、ツガミ、スター精密など一部企業に偏っているものの受注が拡大している。今回、中国での工作機械の設置NC化率75%目標で古い機械の廃棄を求めた動きが出ており、中国での工作機械受注が大きく増加する場合には、3~6カ月遅れで日本の工作機械受注も回復する動きを期待する向きもある。
金属加工機械(切削型+成型型)の2023年世界生産額は前年比1.7%増の852.6億ドル
ガードナー社が行う金属加工機械(切削型+成型型)世界生産額調査によれば、2023年の世界生産額は852.6億ドル(前年比1.7%増)となった模様。トップは中国で273.9億ドル(1.1%増)、15年連続世界1位となっている。但し、性能面などで技術的な差異があるため、欧米での生産額で比較すると、日本が97.9億ドル(6.2%減)となり、ドイツの114億ドル(10.9%増)に抜かれる形で、世界第3位に甘んずることとなった。また米国が809億ドル(10.9%増)となっており、日米の差が大きく縮む形となった。但し、この原因は円安にあり、台数などで大きな順位変動があったわけではないとのこと。ある意味では、高性能な日本の工作機械が円安によりバーゲンセールになっているとの見方もあり、結果として円安が進行していなければ本来は受注の落ち込みがもっと大きかったのではないかとの見方もできる。いずれにしても生産額の推移であり、受注については2023年について各国とも減退、底這いが続いている。このため2024年については為替変動がこれ以上大きく変化しない前提で、世界生産額が2ケタ近く減少する可能性が十分あり得る。なお、2024年の受注については世界的な金利高などが影響、横ばい基調の一年となる懸念があるが、半導体生産の回復、世界的な軍事産業向けの隠れた需要拡大、中国の新たな設備更新特需の可能性もあり、大きな落ち込みはないとみられるが、逆に大きな拡大も見通しにくい。
(H.Mirai)
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