週刊バッテリートピックス 「日本ガイシが台湾社に出資」「インドネシア初のEC電池工場」など
2024年7月1日~7月7日のバッテリー業界では、国内外ともに個別の企業の出資や協業の動きが盛んだった。日本では日本ガイシが台湾社に出資。海外では韓国のLGエナジーがインドネシア初の電気自動車(EV)向け電池工場を稼働させ、仏ルノーや豪ライオンタウンとの協業も発表した。大型車や航空機での水素燃料電池の導入も進んだ。
<国内>
●RSテクノロジーズ、バナジウムレドックスフロー電池事業で現況報告
半導体ウエハー生産加工のRSテクノロジーズは7月5日、自社ホームページ上で、連結子会社のLEシステムが手掛けるバナジウムレドックスフロー電池の市場成長と同社の事業について状況を発表した。定置用蓄電池市場の拡大に伴いレドックスフロー電池も需要拡大が見込まれるとした。
プレスリリース:20240705171117851s.pdf (xj-storage.jp)
●パナエレクトリック、純水素型燃料電池を発売へ 12月から
パナソニック傘下の エレクトリックワークスは7月3日、自社ホームページ上で、「純水素型燃料電池の新製品を2024年12月に発売する」と発表した。純水素型燃料電池は高純度の水素と空気中の酸素との化学反応で発電する電池。パナソニックは2021年から純水素型燃料電池を販売している。今回の新製品は顧客の要望の多い「PH3(三相三線タイプ)となる。
●日本ガイシ、台湾パネルセミに出資
日本ガイシは7月2日、自社ホームページ上で、薄型発光ダイオード(LED)ディスプレーや半導体事業を手掛ける台湾スタートアップの方略電子(PanelSemi Corporation、パネルセミ)に出資したと発表した。両社はかねて、日本ガイシの超小型・薄型のリチウムイオン二次電池「EnerCera(エナセラ)」やセラミック基板、セラミックパッケージなどの製品開発で協業していた。出資でより関係を強化する。出資額は公表していない。
プレスリリース(日本ガイシ) 薄型LEDディスプレイや半導体関連事業を展開する台湾のスタートアップ企業に出資 | ニュース | 日本ガイシ株式会社 (ngk.co.jp):
●グリーン人材開発協議会が設立
(出所:グリーン人材開発協議会ホームページ)
東京大学大学院の小島祐輔氏らは7月2日、「グリーン人材開発協議会」を設立した。再生可能エネルギーや蓄電池、水素などに精通して、国内のカーボンニュートラルの実現を担うことができる「グリーン人材」を育成する。代表は国際大学の橋川武郎学長。
関連記事:蓄電池などに精通したグリーン人材を育成、脱炭素後押しへ開発協議会発足 | MIRU (iru-miru.com)
ホームページ:グリーン人材開発協議会 公式webサイト (greentalent.jp)
●PXP、フレキシブル型のペロブスカイト太陽電池の実用サイズのサンプルを作製
次世代太陽電池のスタートアップPXP(本社:神奈川・相模原)は7月2日、「フレキシブル型のペロブスカイト/カルコパイライトタンデム太陽電池の実用サイズのサンプルを作製した」とPRタイムズに投稿した。
●エンパワーとソフトバンク、全固体電池の高エネルギー密度化で技術開発
電池開発スタートアップのEnpower Japan(エンパワージャパン、東京・港)とソフトバンクR&Dは7月2日、それぞれのホームページ上で、「全固体電池の高エネルギー密度化の技術開発に成功した」と発表した。
全固体電池は、液体電解質とは異なり、正極活物質‐固体電解質の界面の密着性が低いため、イオン伝導 に関わる界面抵抗が増加して、電池容量の減少や、出力特性と寿命特性の低下、正極活物質‐固体電解質 間や固体電解質間同士の界面形成が難しい。今回の実験では、重量当たりのエネルギーを従来の約1.2倍に伸ばすことに成功した。2030年前後の実用化を目指す。
プレスリリース(エンパワー):全固体電池の高エネルギー密度化の技術開発に成功 〜350Wh/kg級の重量エネルギー密度を実証~ - Enpower Greentech (enpower-greentech.com)
プレスリリース(ソフトバンク):HAPS向け全固体電池 350Wh/kg実証 ~均質化編~ | ソフトバンク先端技術研究所 | 企業・IR | ソフトバンク (softbank.jp)
●伊藤忠、乾電池デュラセルを発売 シンガポール社と代理店契約
伊藤忠商事は7月2日、自社ホームページ上で、シンガポールの乾電池販売大手Duracell Singapore Pte Ltd(本社:シンガポール)との間で、販売代理店契約を結んだと発表した。世界的な乾電池ブランドである「Duracell(デュラセル)」を7月から販売する。デュラセルは米国の電池メーカーで、シンガポール社はアジアでの販売を統括する。
プレスリリース:世界有数の乾電池ブランド「Duracell」の日本市場における販売代理店契約締結について|プレスリリース|伊藤忠商事株式会社 (itochu.co.jp)
<海外>
●独ファルタ、リチウムイオン電池巡りポルシェと協議
ドイツ電池メーカーのファルタは7月4日、自社ホームページ上で、「同国高級スポーツカーのポルシェとの間で、大型リチウムイオン電池事業への出資について協議している」と発表した。
ファルタのリチウム電池事業を子会社に移管し、ポルシェがこの子会社へ出資することを検討している。既に拘束力のないタイムシートを締結済みとした。
プレスリリース:VARTA AG in talks with Porsche about investment in V4Drive business (varta-ag.com)
●LGエナジー、インドネシア初のEV電池工場 ルノーやライオンタウンと協業も
韓国の現代自動車グループと電池大手LGエナジーソリューション(LGNS)は7月3日、インドネシアでのEV用電池セル工場を稼働させた。ロイター通信をはじめ外電各紙が伝えた。インドネシア初のEV向け電池工場となる。年間生産能力は10ギガワット時(GWH)。
LGエナジーは、7月2日に自社ホームページ上で、仏自動車大手ルノーと、オーストラリアのリチウム採掘企業ライオンタウンとの協業もそれぞれ発表した。ルノーとは、現行の三元系リチウムイオン(NCM)電池セルにリン酸鉄リチウム(LFP)電池セルを統合することによるEV向けバッテリーの生産費用の縮小に取り組む。一方、ライオンタウンとはリチウム供給を巡る長期的なパートナーシップを結ぶ。
●独BASF、チリのリチウム開発も断念か
米ブルームバーグ通信は7月3日、ドイツの総合化学大手BASFから、「チリのリチウム採掘資産への投資を断念した」とのメールを受け取ったと伝えた。
関連記事:独BASF、チリのリチウム開発も断念か インドネシアに続き、EV失速で「バッテリー死の谷」 | MIRU (iru-miru.com)
●米ニコラ、4-6月の水素電池トラック販売好調
米EVの二コラは7月2日、「2024年4-6月期の水素燃料電池を搭載した大型トラックの納車台数は72台と1-3期(40台)から80%増えた」と発表した。自社予想では50-60台と予想していた。通年では300─350台を目指す。ニコラはテスラのライバル会社と目される米EV大手で、主に大型車を手掛ける。
●アメリカン航空、英ゼロアヴィアから水素燃料電池エンジンを購入へ
アメリカン航空は7月2日、自社ホームページ上で、「水素電池の新興メーカーである英ゼロアヴィアとの間で、水素燃料電池エンジン100基を購入する仮契約に合意した」と発表した。アメリカン航空は2022年からゼロアビィアに出資しており、今回は出資も拡大した。ただ、拡大規模は明かしていない。
ゼロアヴィアとは、日本航空(JAL)も2023年から水素航空機開発で協業している。
(IR Universe Kure)
関連記事
- 2025/05/01 ミライラボ、中古EVバッテリーの二次流通促進へあいおいニッセイ同和損保と提携
- 2025/05/01 (速報)2025年4月国内新車販売台数 前年同月比4か月プラスも2年前の同月より5か月連続下回る
- 2025/05/01 ニッケルブログ#20 EU競争力指針-ニッケル産業からの意見
- 2025/05/01 米ウクライナ、資源協定を締結 復興基金を共同設立、米財務省が発表
- 2025/04/30 第5回サーキュラーエコノミーシンポジウム詳報4〜キヤノン、トヨタ
- 2025/04/30 欧州からの風:2025 April「EU使用済自動車規則案:揉めるプラスチック再生材含有ターゲットの行方は?」
- 2025/04/30 AUTOMOBILE COUNCIL2025:自動車メーカーの誇りとクラシックカーの遺伝子
- 2025/04/30 第5回サーキュラーエコノミーシンポジウム詳報3〜金城産業、ベステラ、Rジャパン
- 2025/04/30 【貿易統計/日本】 2025年3月の廃バッテリー輸出推移統計
- 2025/04/30 【貿易統計/日本】 2025年3月のニッケルくず輸出入統計