レアアース市場近況2024#14 小幅に下落、中国の内需不振やミャンマー地滑りで心理悪化
2024年7月上旬~7月中旬のレアアース市況は小幅に下落している。中国の弱気な経済成長発表で同国の内需不振が意識され、レアアース市場でも需要不足観測が根強い。6月にミャンマーのレアアース鉱山で起きた死亡事故も市場のムードを暗くし、明るい材料が見つけにくくなっている。
■中国のレアアース指数、安値更新目前に
中国のレアアース業界団体である中国稀土協会が日次で発表しているレアアース指数は7月16日に155.0を付けた。じり安の展開が続き、3月に付けた過去1年半ほどの安値である153が目前となっている。
中国レアアース指数の推移
(出所: 中国稀土協会)
中国国家統計局が7月15日に発表した2024年4-6月の実質国内総生産(GDP)は前年同期比4.7%成長と、中国当局が通年目標とする「5%程度」を下回った。不動産の不振が続く中、レアアース需要も回復遅れへの懸念が強い。1-6月はレアアース輸入量も前年同期比20.5%減と減少率は1-5月の14.3%減から悪化した。
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■金属ジスプロシウム4年ぶり安値
中国指数の下落基調に加え、ミャンマーで6月に起きた地すべりもセンチメントを暗くし、国際市場でもさえないムードが広がる。重希土類の代表格である金属ジスプロシウムは7月11日に$322/kgに下げた。それまで下値支持線だった4月上旬の水準を突き抜け、2020年秋以来ほぼ4年ぶりの安値に沈む。
金属ジスプロシウムの価格推移(99.5% FOB China)($/Kg)
ジスプロシウムと並んで供給過剰が指摘される金属テルビウムは7月11日に仲値$902/kgと、4月2日以来約3か月ぶりの安値を付けた。こちらは$900が下値の節目として意識される。
金属テルビウムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
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超硬向け需要が多い金属ランタンも、7月11日に$3.48/Kgに小幅に下落。既に2005年夏以来18年超ぶりの安値水準にあり、下げ余地も乏しい中での下落となった。
金属ランタンの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)
■ネオジム節目割れを回避、北方稀土の公示が支えか
一方、$60/kgが節目として注目されてきた金属ネオジムはかろうじて節目割れを免れた。6月13日から7月3日までの3週間を仲値$61.5/kgで過ごしたが、7月4日に$62に持ち直した。「中国レアアース大手の北方稀土(集団)高科技の公示価格が横ばいだったことが安心感を誘った」(SMMの7月12日のレポート)との見方がある。
もっとも、ネオジムの供給先として有力な電気自動車(EV)バッテリーは世界的に失速感が強く、気は抜けない。SMMは「多くの軽希土類生産者は、価格見通しについて悲観的な見方を崩していない」とも指摘した。
金属ネオジムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
<Topic>
7月9日
世界で最も強力とされる永久磁石「ネオジム磁石」を発明した佐川眞人氏が、欧州特許庁が主催する「欧州発明家賞」の非ヨーロッパ諸国部門に選ばれた。一部報道機関が報じた。9日にマルタ共和国で受賞発表と表彰式が行われた。
関連記事: ネオジム磁石発明の佐川眞人氏、欧州発明家賞非ヨーロッパ諸国部門受賞 | MIRU (iru-miru.com)
7月4日
豪州レアアース大手のArafura Rare Earthsは7月4日までに、「韓国とドイツの金融機関からそれぞれ融資を獲得した」と発表した。
関連記事: 豪Arafura Rare Earths社 Nolansプロジェクトへ韓国とドイツより大型融資 NdPr脱中国サプライチェーン | MIRU (iru-miru.com)
7月1日
中国国有レアアース大手の北方稀土(集団)高科技が7月1日に発表した7月の公示価格で、ネオジムはRMB48万8000/tonと6月から横ばいだった。6月は5月のRMB49万8000から引き下げていた。
プレスリリース:reht.com/index/newscenter.do?TYPE_CODE=020201
(IR Universe Kure)
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