シグマ光機(7713) 24/5WEB決算説明会メモ 悪材料を織り込みポジティブ継続
24/5期半導体向け減速と能登震災影響から1.4%減収21.7%営利減、25/5期下期回復期待
株価1555円(7/18) 時価総額117億円 発行済株7552千株
PER(DO予:11.0X) PBR(0.65X) 配当(23/5DO予)43円 配当利回り予:2.8%
要約
・24/5期半導体向け減速と能登震災影響から1.4%減収21.7%営利減も修正計画比上振れ
・25/5期5.4%増収1.4%営利減予想と半導体下期回復見込み経常利益は復興補助で増益予想
・26/5期は先端半導体向け伸長で収益上伸期待、最高益更新期待
24/5期半導体向け減速と能登震災影響から1.4%減収21.7%営利減も修正計画比上振れ
研究開発用、製造用レーザを主体に光学部品、システム製品に展開し業容拡大図る。カタログ販売で事業を拡大し量産品も増加、またシステム製品にも事業を多角化。1/1の能登震災で能登工場被災し操業一時停止影響する。レンズ、ミラーの上位ライバル企業は海外でNewport、ThorlabsEdmond opt、国内は規模が小さいながら中央精機、神津精機など。
24/5決算が7/11に開示され説明会が7/17に開催された。24/5期は、売上高112.13億円(期初計画比4.72億円未達、5/23修正予想比0.27億円未達、1.4%減)、営業利益11.78億円(同0.97億円未達、同0.83億円増額、21.7%減)、経常利益13.49億円(同0.51億円未達、同0.89億円増額、20.2%増)、税引利益6.87億円(同2.73億円未達、同0.72億円増額、54.0%減)と、ほぼ震災影響を加味した5/23修正計画線で着地、期初計画比でも税引利益を除いて多少の減額で着地した。
事業別売上動向では主力の要素部品事業が売上高92.15億円(5.2%減)、営利15.16億円(25.1%減)。製品別では光学基本機器が売上高27.28億円(9.5%減)と、半導体業界向けで在庫調整の影響などで米国、中国向け需要が減退、また能登震災で工場が一時停止したこともあり軟調に推移した。一方、自動応用機器は売上高18.70億円(10.6%増)と半導体不足による電子基板供給制約の影響が薄れ、バイオ向け顕微鏡用ステージ、研究開発分野や通信業界向け調芯装置等が好調に推移した。光学素子・薄膜製品は売上高46.15億円(7.9%減)と半導体業界向けで在庫調整の動きがあり、一部国内の先端半導体検査向けが好調に推移したものの、全体では弱含みとなった。利益面ではMIX悪化や原材料高、加えて能登工場の一時停止影響などで2ケタ減益に。
システム製品事業は売上高20.88億円(19.5%増)、営利2.23億円(3.4倍)と、電子部品・半導体業界向け製造装置・検査装置への組込み用途の光学ユニット製品が好調に推移、防衛庁向け光学製品なども堅調に推移、利益は増収効果に加え先端半導体向けなどでMIX良化から収益率が高まった。
地域別収益では日本グループが売上高92.87億円(1.8%減)、営利15.45億円(9.5%減)と半導体向けは在庫調整の影響があったものの先端用途や特定顧客向けが堅調に推移し微減収、利益面では材料高、震災影響などで減益に。海外では米国が売上高18.07億円(12.2%減)、営利0.59億円(60.4%減)と半導体向けの停滞、利益面では減収影響に加え原材料高も影響し、大幅減益に。中国も売上高6.12億円(30.0%減)、営業損失0.02億円(横ばい)と、半導体向けの不振が影響した。
営業利益の増減要因分析では震災による一時停止を含め減収要因で1.54億円、材料費高2.28億円、人件費増や旅費、展示会費用増など1.69億円等の減益要因があった。また税引利益では災害損失関連3.69億円(在庫廃棄損、機械装置修繕等・建物等の復旧費費用等災害損失引当⾦繰⼊額)があり、減益幅が大きくなっている。
25/5期5.4%増収1.4%営利減予想と半導体下期回復見込み経常利益は復興補助で増益予想
25/5期予想は、売上高118.20億円(5.4%増)、営利11.60億円(1.4%減)、経常利益14.0億円(4.0%増)、税引利益9.0億円(31.4%増)予想。上期は半導体関連が低調で、一部震災影響も残り1.1%減収、37.2%営利減、38.7%経常減予想も、下期は半導体関連の回復、カタログ品について価格改定を行い1月より実施予定などで12.1%増収、42.6%営利増、55.4%経常増、税引3.6倍予想とした。経常利益段階で増益を見込むのは震災被害に対する復興補助金計上がみこまれるため。
事業別の細かい開示は無いが逆算して推定値では、要素部品97.20億円(5%増)、内訳は光学基本機器27.3億円(0%)、自動応用機器20.1億円(7%増)、光学素子・薄膜製品49.8億円(7%増)のイメージ。システム製品は21.0億円(0%)想定で前期伸びた分、今期は横ばいとした。
足元、6月受注が同月比比較で30%近い減と厳しいスタートとなっているが、引き合いは増加傾向にあるとのこと。グループ会社別では日本グループが96.5億円(4%増)、アメリカ21.0億円(16%増)、中国7.2億円(18%増)、欧州8.9億円(14%増)などを見込む。米、中は在庫調整が進み、ボトムからの回復などを見込む。
受注開示が投影資料しかないため、詳しい状況は有価証券報告書の開示待ちとなるが、受注増効果は26/5期に寄与するとみられ、25/5期は円安効果で経常利益以下は若干増額が見込めるものの会社計画並みの売上、営業利益達成に止まろう。
26/5期は先端半導体向け伸長で収益上伸期待、最高益更新期待
26/5期は主力の半導体製造向けで収益性の高い光学素子のOEM拡大が急加速しよう。特にEUV微細化進展などで光学システムをコンパクト化できる非球面レンズ、広視野高NA対物レンズなど先端半導体設備用OEM製品の受注増が見込める。非球面レンズにおいては従来 の16枚構成のレンズ構成の光学レンズユニットに対し、5~8枚程度の非球面レンズで同等の性能を可能とし、組入れ装置のコンパクトに対応でき、ニーズが高まろう。また広視野高NA対物レンズは先端デバイスの3次元化、特にAI半導体では複数のチップを組み合わせて扱うチップレット集積を実現するアドバンストパッケージの高機能化要求で大型基板化に対し、従来比で5~10 倍の広視野でも高分解能を保つ対物レンズとなっており、高精度かつ検査時間の短縮要求が高まる中で大きく需要が伸びよう。また同レンズはバイオ観察顕微鏡などでの利用も期待され、非半導体分野での拡大も加速しよう。その他、車載向けでは各種センサーデバイスの数量増に伴い、光学モジュール・特注光学素子等の拡大が見込める。このほか量子コンピュータ向けビームスリッターも注目度が高まっている。量子コンピュータにおけるビームスプリッターは、光を2つの経路に分ける光学素子。ビームスプリッターに入射した量子ビットは、反射と透過の確率 が各50%で2つの経路に分かれ、量子ビットの状態は、どちらの経路を通ったかで変化する。例えば0と1の状態が等確率で重ね合わさった量子ビットが入射した場合、反射した量子ビットは0の状態の確率、透過した量子ビットは1の状態の確率が高くなる。この性 質を利用して、量子コンピュータでは様々な量子論理ゲートを実装することができ、ビームスプリッターは量子ビットの状態を操作し、量子論理ゲートを実現するための重要な役割を担うとされる。実際に光子を用いた量子ビットの制御に適しており、小型で高精度 な光路制御が可能なキューブ型ビームスプリッター、広い領域の量子ビットを制御することができ主に超伝導量子コンピュータで使用されるプレート型ビームスプリッターなどがある。この分野も研究が加速してり、潜在的な成長が高いとみられる。このほかにもがん治療向け放射線治療装置向けレーザービームエキスパンダや自動回転ステージなどバイオ、医療機器向けの納入も増加が見込める。
26/5期は利益面ではカタログ品について価格改定効果がフルに寄与する見通しの他、震災に伴い一部外注でコスト高となっていた製品群について、内製化による能力増強効果から収益性回復も見込まれ、改めて最高益更新も期待される。
株価は1/1の震災後発生で能登工場一時停止などもあり、さえない株価展開となっていたが、量子コンピュータ向けにビームスリッターを手掛けているなどで株価が高騰、3/7には1748円の年初来高値を付けた。しかし5/23に減額予想が開示され1500円付近まで下落し、この状況が続いている。25/5期会社予想EPS127.07円に対し、PER12.24倍はスタンダード精密平均PER14.1倍に対し若干割安感がある。今後、26/5期にかけ、先端半導体設備投資が本格拡大する中で、EUV検査を含め先端半導体向け製品の寄与が高まり、収益上伸が見込まれることから、悪材料を織り込み、PBR0.65倍でもあり、ポジティブ継続と考えたい。
(H.Mirai)
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