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補助金終了がEV浸透率に逆風、中国が市場を牽引―英・EV&バッテリーセミナー

 エネルギー移行市場に対して専門的な予測分析を行うRho Motion社が7月31日、ロンドンでウェビナー「2024 EV & Battery Market Slowdown: Temporary Setback or Long-Term Trend?」を開催した。同社の司会のもと、EV市場、エネルギー貯蔵システム(ESS)、リサイクル、充電インフラなど、多岐にわたるトピックが議論された。
 

 

 ウェビナーの冒頭では2024年上半期の市場動向を振り返った。特にドイツとフランスにおける補助金制度の変更や、米国環境保護庁(EPA)の乗用車排出基準の緩和、中国におけるプラグインハイブリッド車(PHEV)とレンジエクステンダー式電気自動車(ERV)の売上増加が市場に与える影響について言及が行われた。
リサーチャーのジョージ・ウィットコム氏(George Whitcombe)によると、ニュージーランドやドイツでのEV浸透率の低下が顕著であり、これはそれぞれの国の政策変更による影響が大きいという。

 

 

 特に、ドイツでは政府の突然のBEV(バッテリー式電気自動車)補助金の終了が市場に大きな影響を与え、EV浸透率を5%以上低下させた。一方で、フランスやイギリスでは成長が続いている。特にイタリアでは、2024年の補助金制度の開始により6月に過去最高の販売を記録し、短期的な効果だが、市場の需要喚起に期待が寄せられている。
 

 

 2024年上半期において、中国のEV浸透率は40%を超え、市場の成長を牽引している。中国では特にレンジエクステンダー式電気自動車が大きな成長を見せており、この背景には、中国政府が持続可能な交通手段の普及を強力に推進していることが挙げられた。

 

 

米国市場については、テスラが市場シェアの36%を占めているものの、今年の上半期においては売上11%減少を経験しており、トヨタ(78%増)、フォード(64%増)、ステランティス(25%増)など他のメーカーがその隙間を埋めている。

 

 

ESSプロジェクト遅延多発 市場高成長は変わらず

 

 2024年上半期には、グリッドとビハインドメーター市場で75ギガワット時以上が稼働し、2022年の市場規模をすでに上回っている。これによって今年のエネルギー貯蔵(ESS)市場は前年比で約35%成長すると予測された。この成長は主に中国の政策によるもので、特に再生可能エネルギープロジェクトにエネルギー貯蔵の導入が義務付けられたことが大きな要因である。

 

 

 しかし、多数のプロジェクトの遅延が市場全体に影響を及ぼしており、特に米国と中国でのプロジェクトの進捗が期待に追いついていない。上半期において、予定されていたエネルギー貯蔵プロジェクトのうち、実際に稼働したのは約半数にとどまっていている。それにもかかわらず、ESS市場は依然として最も成長が期待される市場であり、特にリチウム鉄リン酸塩(LFP)電池の需要が高まりを見せている。数字で見ると中国は2024年時点で世界全体のESS配置の54%を占めており、支配的な地位を示している。

 

 

 リサーチャーのティロットソン氏(Pete Tillotson)は、エネルギー貯蔵市場における地域差を言及し、米国ではカリフォルニア州とテキサス州が市場をリードしている一方で、欧州では英国がグリッド市場を牽引していると述べた。また、住宅用や商業用のエネルギー貯蔵がドイツやイタリアで急速に成長していることが指摘された。

 

 

OEMとの連携により リサイクラーが供給を確保

 

 バッテリーリサイクル市場に関しては、中国が引き続き市場を支配している一方で、北米やヨーロッパでも新たな生産能力の増強が進んでいる。特に、リサイクル能力の不足が続いている現状を踏まえ、OEMとリサイクラー間の供給契約が増加していることも注目されている。

 

 

 例えば、欧米では、Ascend Elements、Li-Cycle、Redwood Materialsといった主要なリサイクラーがOEMとの契約を結んで廃バッテリーなどを確保したりして、供給の安定が期待されている。アジアでも、中国のGEMや韓国のSungEel Hitech、LOHUMなど、国内外の原材料調達を強化している。こういう動きは今後も続くと予測されている。

 

 

 中国においては、過剰な生産能力の問題を解決するため、今年3月にMIIT(中国工業情報化部)が2024年のホワイトリスト申請を停止することを発表し、市場の過剰な拡張を抑制するシグナルを示した。これに加えて、リサイクルプロジェクトへの国の補助金提供を開始しており、これはリサイクル業界にとって重要な支援策とされている。また、廃バッテリーの輸入制限の緩和も検討されており、国内市場の供給不足を補うための一環であると期待されている。

 

 

足りない急速充電インフラ、EV普及にダメージ

 

 リサーチャーシャン・トムク氏(Shan Tomouk)によると、充電インフラが依然としてEV普及の大きな障害となっている。例えば、米国では充電インフラの地域差が著しく、カリフォルニアが全体の25%を占め、他の州との格差が非常に大きい。加えて、都市部と農村部での充電インフラのアクセス格差も、EVの普及を阻む一因となっている。また、今年4月、テスラは一時的にネットワークの拡張を制限する方針を発表して、設置ペースは以前よりも遅くなっている。

 

 

 もう一つEV普及における課題となっているのは、欧米では依然として低速充電器が主流であることだ。急速充電器を設置する資金やスペースが限られている学校、病院、図書館、路上駐車場などの公共施設では低速AC充電が主に利用されている。これに対して、米国のウォルマートや英国のSainsbury'sのような大手小売チェーンが積極的に広大な敷地と十分な資金を活用して急速充電ステーションを設置している。特にSainsbury'sは各地で150キロワットの急速充電器を設置して、近いうちに60か所目の充電ステーションをオープンする見込みだ。この動きは今後も続くと予想される。

 

 

 一方で、中国では公共充電インフラが引き続き急速に拡大していて、約47%の充電インフラが急速充電器であり、これは他の国々に比べて非常に高い割合だ。

 


(IRuniverse)

 

 

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