東京精密(7729)25/3Q1WEB説明会メモ ややポジティブ継続
25/3H1予想を計測事業の未達で減額も25/3期6.2%増収6.7%営利増予想は増額期待
株価8653円(8/2) 時価総額3647億円 発行済株42156千株
PER(25/3DO予:13.7X)PBR(2.23X)配当(25/3DO予)250円 配当利回り:2.9%
要約
・25/3Q1は11.3%増収3.9%営利減も26.5%受注増と、計測期ずれで減益も受注上振れ
・25/3期予想開示、6.2%増収6.7%営利増予想は民生向け不振等で中計予想未達成見通し
・26/3期は中国向け拡大継続と先端半導体設備投資増から収益上伸し最高益更新期待
25/3Q1は11.3%増収3.9%営利減も26.5%受注増と、計測期ずれで減益も受注上振れ
25/3Q1決算が8/2に開示され、同日WEB説明会が実施された。25/3Q1は売上高296.26億円(11.3%増)ながら営利40.83億円(3.9%減)、経常利益43.29億円(8.1%減)、税引利益35.54億円(9.5%増)と増収営利減となった。但し受注が374.17億円(26.5%増)、受注残高957.96億円(8.5%減)と、受注が好調に推移、長納期となっていた受注残の消化が進んだ。
セグメント別では半導体製造装置事業が売上高220.46億円(17.8%増)、営業利益33.14億円(3.3%増)、受注270.81億円(33.1%増)、受注残高804.33億円(11.6%減)となった。受注では中国向けが伸長、受注額の約50%半ばを占め倍増に近い伸びとなった模様(具体的数字は非開示)。中国スマホ向けに全般的に伸長したとのこと。またAI半導体向けでは前下期80億円受注に対し、上期で40億円と想定、Q1はほぼ計画並みの20億円程度となった模様。なお、同社の半導製造、検査装置ではロジック向けが50%前半、メモリが10~20%、電子部品向け20%、残りがパワー半導体その他というイメージ。Q1ではメモリ向けの90%がHBMを中心としたDRAM向けとのこと。
計測器事業は売上高75.80億円(4.0%減)、営業利益7.68億円(26.3%減)、受注103.36億円(12.0%増)、受注残153.62億円(11.7%増)となった。受注はEV2次電池用充放電試験装置の需要が堅調で、汎用・自動計測機器で投資先送り感から多少ボトムうち傾向があり、全体では受注増に。一方、売上では一部案件の納入変更があり、前期比減少に。利益面でも納入の期ずれが影響し、営利減となった。
25/3期予想開示、6.2%増収6.7%営利増予想は民生向け不振等で中計予想未達成見通し
会社側では25/3期会社予想について生成AI関連好調も民生回復不透明として期初に25/3H1予想のみを開示し、売上高715億円(前年同期比12.5%増)、営利140億円(同22.9%増)経常利益138億円(同14.3%増)、税引利益95億円(11.1%増)、受注高640億円推定(7.6%増)予想としていた。今回、25/3Q1において計測事業で一部案件の納入予定変更などがあり、売上高700億円(期初計画比15億円減額、10.2%増)、営利130億円(同10億円減額、14.1%増)、経常利益130億円(同8億円減額、7.7%増)予想に減額修正した。なお税引利益については固定資産売却益約40億円計上することから120億円(同25億円増額、40.4%増)予想とした。
事業別では半導体製造装置が売上高530億円(期初計画比横ばい、同期比12.8%増)、計測事業売上高170億円(同15億円減額、2.4%増)と売上減額は計測の納期遅れ15億円が影響、半導体製造装置売上は計画通りとしている。なお受注では718億円推測(期初計画比78億円増額、20.6%増)、内訳は半導体製造装置515億円推測(会社側ではQ1比10%減想定し、期初計画比75億円増額、21.7%増)、計測は受注203億円推測(同3億円増額、0.6%増)予想としている。
また今回25/3Q1実績を踏まえ、25/3期予想を開示、25/3期を売上高1430億円(6.2%増)、営利270億円(6.7%増)、経常利益270億円(2.1%増)、税引利益218億円(12.5%増)予想とした。この数字は2022年5月に策定した新中計数値目標の25/3期売上高1700億円(半導体1320億円、計測380億円)、営業利益375億円(営業利益率22%)に対し、売上高で270億円、営業利益で105億円減額となり、大幅減額修正予想に止まる。
事業別では半導体製造装置事業が売上高1060億円(中計計画比260億円減額、前期比5.9%増)、計測事業を370億円(同10億円減額、6.9%増)とした。半導体製造装置事業について、全体として策定時よりも回復が遅れたこと、加えて現在も民生用の不振が長引いていることが影響、全体の60%を占めるプローバの減額が大きいと見られる。また期待していたSiC向けダイシング装置やグラインディング装置などもEV投資の後倒しなどの影響があり一部納入の後ずれで受注残高が高水準でとどまり26/3期に売上がずれ込むことも影響している模様。但し受注についてはQ1で上振れ、Q2が期初計画のままで数字を置いたとのこと。期初では上期440億円程度を想定していた模様で、今回上期受注は515億円予想としており、Q1で75億円上振れていた模様。
昨今のAI半導体設備投資の拡大を踏まえると、Q2も最低限Q1水準の確保が可能とみられる。また民生用の回復が不透明、中国向けも高水準維持も構成比がQ1の50%超から40%程度に落ち着く前提としているものの、引き合いの旺盛さに変化がないとのこと。現在、アドバンテストが高機能SoCテスタ需要が急拡大しているという背景から、早晩、遅れて連動する形でプローブ需要も急拡大が見込まれる。AI関連受注が下期にかけて急拡大するとみられ、半導体事業の収益は下期に更なる増額が期待される。上期受注で550億円程度の獲得が可能とみられ、売上についても下期増額が期待される。利益面でもQ1で製品構成で利益率の低い製品構成が高まったことでMIX悪化があったとのことで、Q2以降の売上高総利益率の改善も進むとしており、利益面でも下期増額が期待される。
計測機器は売上高370億円(中計計画比10億円減額、6.9%増)を見込む。上期が売上高170億円(期初計画比15億円減額、2.4%増)と減額され、期ずれの一部が下期納入されるも影響が若干残るとする見通し。一方で受注は上期203億円(同3億円増額、18.0%増)を想定している。充放電システムの受注拡大と工作機械向けがボトムから下期に緩やかな回復、自動車向けも内燃機関向けシュリンクが一巡し、受注増を見込む。現状、計測事業について会社修正計画並みの収益が見込まれる。
全体として下期に半導体事業の収益増額が寄与し今回の会社計画の上振れが期待され、受注については下期上伸で26/3期に向け受注残高が積みあがってこよう。
26/3期は中国向け拡大継続と先端半導体設備投資増から収益上伸し最高益更新期待
26/3期は生成AI関連の受注、売上の伸長が期待され、加えてハイブリッドボンディング向け新製品、SiC向けにバックグラインダの拡大、さらには難削材の拡大で精密切断ブレードなどの消耗品事業の拡大も見込める。
半導体製造装置事業は検査装置で高付加価値分野、デパート化を目指す。プローバにおいてはハイエンドロジック、メモリにおいてはHBM(広帯域幅メモリ)の伸長が追い風となろう。また先端デバイスでは発熱が大きな課題となっている。温度を一定に保つために、従来のチラーコントロールでは100Wレベルしか対応できず、並列でチラーを配するか水冷式などの吸熱機能が必要となる。これに対し同社は独自の吸熱材料マイクロセルウレタンフォームを開発、微少な空気穴で構成され、空気穴で熱を吸収し、マイクロセルウレタンフォームを冷却する方式。実際2000Wの発熱事例では同社しか対応できないとのことで、次世代HBMでの採用から本格拡大が期待される。
またパワーデバイス向けでは同社のコンタクト技術とテセックの測定技術、幅広いアプリケーションを融合したパワーデバイス測定システムなどの拡大が期待される。加工装置ではSiC向けの拡大、アブレーションダイサ投入、化合物半導体向けグラインダの強化拡大が見込める。アブレーションダイシングはレーザーを利用しウエハ表面を蒸発させる方法で、従来のブレードダイシングよりも高精度、高速の切断が可能、しかもウエハ表面の破損がなくクリーンなことから先端デバイスでの歩留まり、生産性向上が可能となる。ディスコが先行も、同社は精密、高剛性などで差別化を図る計画。化合物半導体についてはSiと比較しグラインダ加工時間が数倍かかり、台数の拡大とともに消耗品売上も急拡大が見込める。同社は難作材加工では機械剛性でディスコに対し優位性を持っており、消耗品ビジネスを含め収益性の向上が期待される。また同社は計測事業を有しており計測ビルトインモデルの投入拡大も投入、製造装置、計測装置の両事業を有する唯一の半導体製造装置メーカーとして差別化し高付加価値化による収益性向上も期待される。
計測事業は充放電電池評価の拡大などでトータルサポートシステムを含め、売上大幅拡大を見込む。またEVモーター分野では3次元測定器での管理が必要なほか、シャフトの真円度、同軸度、同芯度評価でも0.01μクラスの精度を測る3次元測定器や真円度・円筒形状測定器が必要で、同社の超精密測定器の需要拡大が期待される。
26/3期は半導体事業でAIロジック半導体、HBM向けの受注・売上の大幅拡大、パワーデバイスでは難削材であるSiC設備投資加速に伴うバックグラインダの本格拡大、300mmシリコンウエハグリーンフィールド投資向けの受注残高の売上寄与などで収益上伸が見込める。また計測装置はEV向け中心に充放電システムの拡大が見込まれ25/3期の納期ずれの寄与も加わり増収増益に転ずるとみられる。このため全体として収益上伸から最高収益更新が期待される。
株価は5/10の24/3期決算発表で25/3期予想開示がなかったことから5/13の11730円から下落し6/4には10295円まで下落したあと、改めてAI半導体関連として急騰、7/11には13800円まで駆け上がり1999年の16900円以来の高値を付けた。その後は生成AI関連の株価下落とともに下落、特に日経平均が歴史的な下げ幅を記録したこともあり、8/1終値10260円に対し8/2には8653円、前日比15.7%の下落となっている。現状、会社計画25/3期予想EPS538.95円に対しPER16.14倍(売却益を除くでは18.5倍)はディスココンセンサス36.4倍、東京エレクトロン28.1倍、日本マイクロニクスコンセンサス23.2倍に対し割安となっている。今回、8/2の25/3Q1決算開示で25/3期決算予想開示数値が中計を大きく下回っていることから、当面、8/5以降も短期的に大きく下げる可能性がある。但し、今回の会社予想は下期増額が期待されることから、下げが一巡すれは急反発も期待される。このため、中計未達の悪材料を織り込み、改めて生成AI半導体関連株として評価が高まるとみられややポジティブ継続としたい。
*東京エレクトロン、ディスコ、日本マイクロニクスとの株価比較
(H.Mirai)
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