タングステン市場近況2024#10 中国内外で値動きに違い、景気対策への反応分かれる
2024年10月のタングステン市場はまちまち。9月下旬から断続的に打ち出された中国の景気対策を受け、国際価格と中国価格は動きが分かれた。国際価格は横ばいで、先行きの中国需要には様子見気分が強い。一方の中国価格は鉱石価格が底を打ったのを手掛かりに一定の安心感が広がり、持ち直している。
■APTと酸化タングステンは1か月横ばい
ベンチマークであるタングステンAPTと、APTに連動しやすい酸化タングステンは、ともに9月12日から1か月以上横ばいが続く。APTの国際価格は仲値$335/MTUから動かず、中長期の水準としては5月半ば以来の安値圏にある。FerroAlloynetは10月28日付の週刊レポートで、様子見気分から「取引自体が少なく、APT市場は膠着状態にある」と述べた。
過去3か月間のタングステンAPT価格の推移(EU Free market)($/MTU)
酸化タングステンも$337/MTUと、 5月初旬以来の安値圏での推移が続く。
過去3か月間の酸化タングステン価格の推移(Wo3 99.99%min FOB China)($/MTU)
■中国鉱石価格が底入れ、カーバイドやバーは3か月ぶり高値
一方の中国関連には安心感が広がる。まず、中国の鉱石価格が、9月26日-10月2日の国慶節連休期間を底に値上がり。10月17日にはRMB14万1000/mtと9月上旬以来の高値に戻した。これを受け、鉱石の国際価格も8月から続いていた横ばいを終了し、10月17日に$262.5/MTUに上げた。
過去3か月間の中国内外のタングステン鉱石価格の推移(WO3 65%)(RMB/mt) ($/MTU)
フェロタングステンも同じ値動き。8月下旬からの横ばいを終え、10月17日には$44/kgと8月半ば以来の高値に戻した。
過去3か月間のフェロタングステン価格の推移($/kg)
中国鉱石価格に連動しやすいタングステンバーとタングステンカーバイドにも安心感が広がる。ともに段階的に値を上げて、7月上旬以来の高値を付けた。
過去3か月間のタングステンバー価格の推移(w-4 99.9% China)($/kg)
過去3ヵ月間の炭化タングステン価格の推移(99.7%min 2.5-7.0um Fob China)($/kg)
もっとも、FerroAlloynetはフェロタングステンについて「製鉄所はまだ在庫が充足しており、調達を先延ばしにしている」と指摘し、取引自体が大幅に回復しているわけではないとした。また、他のタングステン製品についても最終製品の需要が大きく改善したわけではなく、中国国内の鉱石企業の一部は価格引き下げに動いたとも伝わる。
関連記事: 中国 川下の需要が減少し、複数のタングステン企業が長期注文のオファーを引き下げ | MIRU
中国国家統計局が10月27日に発表した中国の2024年1-9月の一定規模以上の工業企業利益は前年同期比3.5%減と、2024年に入り初めて前年割れした。中国の製造業はやはり苦境が続く。景気対策期待はあくまでも先行き期待にすぎない。中国価格も、本格反発と言うにはやや尚早かもしれない。
中国の工業企業利益の推移
(出所:中国国家統計局ホームページ)
(IR Universe Kure)
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