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岡本工作機械製作所(6125)25/3Q1期決算メモ ポジティブ継続

SiとCu同時研削する全自動装置開発に成功、3次元実装普及加速に大きく貢献期待

株価3715円(10/29) 時価総額249億円 発行済株6703千株

PER25/3期DO予(9.8X)PBR(0.6X)配当(25/3予)160円  配当利回り4.4%

 

要約

・SiとCu同時研削する全自動装置開発に成功、3次元実装普及加速に大きく貢献期待

・25/3期10.4%減収41.3%営利減予想と前期受注低迷影響で上期大幅低迷響き回復は下期に

・三井物産資本参加で半導体関連を核に28/3期売上高690億円、営利110億円目指す

 

 

SiCu同時研削する全自動装置開発に成功、3次元実装普及加速に大きく貢献期待

 

 10/29にかねてから研究開発を進めていたSiとCu同時研削する全自動装置開発(ビアミドルSi貫通電極を用いた3次元実装技術)に成功、科学技術振興機構(JST)から開発結果成功の認定を受けた。

 

 技術の概要として、同社が開発した3次元実装技術は、以下の特徴を持つ。

1. 超薄型ウエハの積層: 従来の10倍以上の薄さを実現したウエハを高精度に積層することを可能とした。

2. 高密度配線: ウエハ間を接続する微細な貫通電極(TSV)の形成技術を確立し、チップ間の高速・大容量通信を実現。

3. 熱制御技術: 積層構造における熱問題解決のため革新的な冷却システムの導入。

 

 また技術的ブレークスルーとしては独自の研削技術を用い、従来は不可能とされていた5μm以下の超薄型ウエハの量産加工を実現し、より多くの層の積層が可能となり、チップの集積度を飛躍的に向上できる。さらに超薄型ウエハを高精度に積層するため、新たなアライメント技術も開発、光学センサーと機械学習を組み合わせた独自のアルゴリズムにより、ナノメートル単位の位置合わせ精度を達成した。革新的TSV形成プロセスとして貫通電極(TSV)の形成では従来のドライエッチング法に代わる新しいウェットエッチング技術を開発、より微細なTSV形成が可能となり、配線密度の大幅な向上を可能とした。しかも高性能コンピューティング( データセンターやスーパーコンピューターにおける処理能力の向上)、モバイルデバイスの小型化・高性能化、人工知能(AI)のAIチップ処理速度と効率の向上、 車載コンピューターの高性能化と小型化など、3次元実装技術は様々な分野での応用が期待される。

 

 今回の技術開発は、半導体業界に大きな影響を与得る可能性を秘めている。具体的には従来の製造ラインの大幅な見直しが可能で、業界全体の製造プロセスに変革をもたらす可能性、この技術を採用するユーザーは製品の性能と競争力を大幅に向上させることが可能となる。さらに 3次元実装技術を活用した新製品や応用分野が生まれる可能性もある。

 

 同社はこの技術をさらに発展させるため、2025年までに量産ラインの稼働を目指し、主要な半導体メーカーとの協力関係を強化し、技術の普及を促進、さらなる薄型化や高密度化を目指し研究開発も継続強化する。

 

25/3期10.4%減収41.3%営利減予想と前期受注低迷影響で上期大幅低迷響き回復は下期に

 

 25/3期会社予想は売上高450億円(10.4%減)、営利36億円(41.3%減)、経常利益36.億円(42.7%減)、税引利益36億円(42.7%減)。部門別売上、営利予想は工作機械事業が売上高316億円(0%増)、営利13億円推定(共通費調整後、3%減)、調整前営利20億円推定(1%減)、半導体関連事業が売上高134億円(28%減)、営利23億円(共通費調整後、52%減)、調整前営利29億円推定(46%減)予想。工作機械事業は工作機械、歯車、鋳物とも回復が鈍く横ばいイメージ。半導体関連が売上高134億円(27.9%減)予想はグリーンフィールド投資先送りから減収減益予想想定。25/3期受注は総額350億円程度と想定、内訳は工作機械事業が270億円(横ばい)、半導体関連が80億円(38%増)のイメージ。

 

 現状、工作機械受注は半導体製造装置の設備増強などの動きから、ロータリー研削盤や大型平面研削盤の受注増加が見込まれ、電機・精密向けに回復が見込め、会社予想並みの数字が見込まれる。また半導体関連装置事業受注は、300mmウエハの在庫がピークを付けた模様も本格拡大は年明けにずれ込むとみられ、同社受注回復も26/3期にずれ込もう。このため全体で会社計画並みの収益が見込まれる。なお25/3H1決算発表予定日は11/12。

 

半導体関連を核に3D実装新技術寄与も見込め28/3期売上高690億円、営利110億円目標

 

 同社は5/22に三井物産との間で資本業務提携を行い、新中計数値目標を28/3期に売上高690億円、営業利益110億円、配当性向45%、事業別では半導体関連事業を売上高270億円(25/3期予想比2.0倍)、工作機械関連420億円(同33%増)と、中核を半導体関連事業とした。この新中計は、従来「ビジョン2030」で目標とした31/3期に売上高700億円、営業利益115億円目標をほぼ3期前倒し達成する意欲的な計画となっている。

 

 

 半導体事業はSiC向けFPのシェア維持、次世代機の新規開発、具体的にはSICウエハ加工プロセスの高度化、化合物パワー半導体(SIC、GAN等)対応機の拡充、難削材ウエハ対応のポリシャー、グラインダーの開発などで売上高270億円、共通費控除後営業利益61億円を目指す。売上増の内訳は次世代材料向けが100億円増、シリコンウエハ向けはシェア維持を見込む。特にパワー半導体向けのポリシャー、グラインダー需要は27/3期に伸長が見込まれる。なお著しい成長が見込まれる次世代半導体市場の成長を捉え、競合他社対比で優位性のある製品を開発するため、技術開発棟及び顧客に対し製品の魅力を訴求するためのショールームの設備として埼玉県で固定資産を取得することも決めた。一方、販売面での強化では、9/20に100%子会社である米Okamoto Corporationが、三井物産100%子会社である米Ellison Technologies, Inc.と、米国に於ける同社製工作機械及び半導体関連装置の販売強化に向けて提携関係を強化することで合意した。Ellisonは米国26州で工作機械および産業機械の販売を行っており、強固な顧客基盤と販売・サービスネットワークを有する。Ellisonとの提携関係強化で工作機械事業では主として高付加価値製品の販売体制強化、半導体関連装置事業では主として化合物半導体関連の顧客開拓を進める。

 

 中計では従来の主力機種であるファイナルポリシャについてシェア拡大を見込むものの実学として伸びを見込んでいない。しかし現実にはAIサーバー需要などでチップあたりのウエハ使用面積が拡大、微細化のための追加投資も含め、新たに300mmウエハへのGF投資が具体化するとみられ、既存の半導体関連受注も再度急拡大が期待される。さらに今回のSi貫通電極ウエハの超平坦・金属汚染フリー・薄膜化加工のための研削技術の確立で、従来のウエハ前工程に加え半導体中工程での大型受注獲得も期待でき、26/3期以降、新分野での受注上乗せが期待される。

 

 工作機械事業では研削盤においてEV関連でリチウムイオン電池製造装置向けの長尺超精密平面加工向けやモーターコア製造用連装金型向けの超精密平面加工向けに大型超精密門形平面研削盤などの拡大が期待される。半導体製造装置・電子部品製造装置向けではセラミックス等の難作材加工向けに精密ロータリー研削盤の拡大、AI半導体拡大では基板大型化で新たなセラミック加工部材向けも見込める。また工作機械事業で改めて伸びが期待出来るのが岡本工機の歯車事業。25/3期に歯車生産能力が約3割増となり歯車だけで売上100億円超の生産能力を持つ。岡本工機は世界NO1のファナックを主力ユーザーとしており、26/3期から再拡大が期待される。また協働ロボットではファナックCRシリーズ向けに関節部分の変減速向けに納入、今後、ハーモニックドライブ向けでは非ファナック向けでも拡大が期待される。またEV化で歯車の静音化ニーズから精密歯車需要が高まる可能性がある。既に日系2社に納入実績を持ち、HEV、PHEVを含め更なる売上拡大も期待される。工作機械事業も平面研削盤を中心に半導体、EV・HEV関連向けの拡大、加えて歯車ビジネスが拡大で、中計計画の達成が可能とみられる。

 

 同社株価は先端半導体関連で上昇し3/7には21年9月高値7200円に迫る6860円と年初来高値を更新も、5/14決算発表で25/3期大幅減益予想、5/22の三井物産への第三社割り当て増資で株式希釈化、PBR1以下での割り当てなどからさらに株価が下落、8/5には高値から半値以下の3105円まで売られ、大きな反発もなく推移してきた。現在、25/3期会社予想EPS373円に対しPER10.0倍は東証スタンダード機械平均PER11.0倍とほぼ同等の水準、PBR0.6、配当利回り4.4%で下値は限定的と見られる。今回の技術開発成功により先端半導体関連銘柄として再評価されると判断、三井物産の資本参加で企業体制変革も期待でき、ポジティブ継続としたい。

 

 

 

(H.Mirai)

 

 

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