エンビプロとサトー、LIBリサイクル過程の情報化に着手――デジタル化でトレースへ
エンビプロ・ホールディングス(本社:東京都港区)は30日、自動認識ソリューション事業を手掛けるサトー(本社:東京都港区)と連携して、使用済みリチウムイオン電池(LIB)の回収から再資源化までのリサイクル過程の履歴をトレースする情報取得の実証実験を28日から開始したと発表した。
エンビプログループのVOLTAが手掛けるLIBの回収・処理・再資源化の工程をサトーのRFID温度ロガータグ「LogBiz-Thermo(ログビズ・サーモ)」などを用いてデジタル化し、取得したデータをクラウド・サーバーへアップロードする。また、エンビプログループのブライトイノベーションが開発中のトレーサビリティ管理システム「TraceView(トレースビュー)」へデータを蓄積し、CO₂排出量の算定も同時に行う。蓄積する状態データは、使用済みLIBの回収量や、各処理工程の日時、在庫量、保管場所、温度、ブラックマスの製造量など。これらの履歴をシステム上で可視化することで、リサイクル過程のトレーサビリティを実現し、ウラノス・エコシステム*へのデータ連携を想定としているという。
実証実験のイメージ図
※ウラノス・エコシステム:2023年4月に経済産業省が発表した、Society5.0⦅サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(物理空間)を高度に融合することで経済発展と社会的課題の解決と産業発展を両立する人間中心の社会⦆の実現というビジョンに共感した方々とともに、こうした取組を通じて、その実現を目指す、一連のイニシアティブ:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/digital_architecture/ouranos.html
具体的には、使用済みLIBの入ったドラム缶にRFID温度ロガータグと、衝撃データロガーを貼り付ける。各ロガーの機能を有効にし、ロガーとIDを付与したタグとして貼り付けて出荷する。輸送中は温度ロガーと衝撃データロガーでログを継続的に記録して状態をモニタリング。LIBリサイクル工場では、タグのIDを軸に在庫管理および工程内ステータスを記録し、各種履歴をトレースできるようにするという。このIDと、製造したブラックマスの容器に付与された出荷IDをひも付けることで、LIBが適正に処理された履歴を一気通貫で確認できるようになり、排出事業者にもそれを提供する。 PoCでは、使用済みのサトー製プリンターから回収したLIBを使用し、回収から再資源化までの処理履歴が確認可能になる、データ取得の実効性と実用性を検証する。
LIBの材料となるリチウムやニッケル、コバルトなどのレアメタルは、将来的に材料不足が予想されており、使用済みLIBの回収から再資源化の効率向上は社会課題の一つとなっている。これらに対応するため、エンビプロとサトーは、LIBのリサイクル過程をデジタル情報として取得し、将来的にはバッテリーパスポートにデータ連携することを目的に、処理過程の可視化とリサイクル資源の生産量予測などの実現を視野に入れている。
(IRuniverse G・Mochizuki)
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