インドネシアMHP、中国勢との協力深まる ヴァ―レと格林美が提携、華友コバルトに続き
ブラジル資源大手のヴァ―レ傘下のヴァ―レインドネシア(PTVI)は11月11日、自社ホームページ上で、「中国バッテリーリサイクルの格林美集団(GEM) と、インドネシアのスラウェシ島でのニッケル工場建設で提携する」と発表した。新工場の総投資額は約14億ドル(2200億円)で、年間6万6000トンの混合水酸化物沈殿物(MHP)生産を目指す。
■2000億円かけMHP6万トン生産へ
格林美側も同日、同内容を発表した。両社によると、投資総額には研究開発費として約4000万ドル、環境対策費3000万ドル、周辺や従業員のための公共施設建設費への1000万ドルなどを織り込んだ。
プレスリリース(GEM):格林美股份有限公司
発表資料にはないが、両社は提携に伴い合弁会社を設立する模様だ。Seeking Alphaが11月11日に伝えたところでは、GEMは合弁会社の発行済株式の25%、ヴァ―レ側が30%を保有し、残りは匿名の第三者が取得する。両社は将来的には下流のアノードと前駆体プラントの建設も検討するとも伝わった。
■新大統領、初の外遊先も中国
プラポウォ大統領と習近平国家主席が会談
(出所:中国外務省ホームページ)
今回の提携は、インドネシアのブラボウォ新大統領が11月8日から訪中したことに伴うもので、調印式には大統領自らが立ち会った。ブラボウォ氏が初の外遊先に中国を選んだことでもわかる通り、インドネシアは急速に対中接近を強める。11月7日には米ブルームバーグ通信が「中国金属採掘大手の浙江華友コバルト業がインドネシアで計画中のニッケル工場建設計画が進展している」と伝えたばかりだ。
関連記事:中国の華友コバルト、インドネシアMHP工場の建設進展か フォード、ヴァ―レと協業 | MIRU
今回の格林美との工場は同じスラウェシ島のMHP工場だが華友の工場とは別で、格美林の工場の方が規模は小さい。インドネシアとしては単純な資源輸出国から工業立国への脱皮を図るため加工業への移行を進める中、プロジェクトの大小にかかわらず加工業への投資を手助けしてくれる中国企業はありがたい存在だ。他方、中国側としては目先の電気自動車(EV)販売動向や電池財資料の推移などにかかわらず資源の囲い込みはいくらでも進めたい考えで、両者の思惑が一致している。
華友のプロジェクトはもともと住友金属鉱山に持ち掛けられた案件だったが、住友側から撤退した経緯がある。その穴を埋める形で名乗りを上げたのが華友だったわけだが、中国勢の貪欲さに、インドネシアの鉱業界での日本勢の影は薄い。
(IR Universe Kure)
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