ボリビア、中国事業体と炭酸リチウム開発 かつて日本も意欲のウユニ塩原で
南米ボリビア政府は11月26日、中国事業体のCBCから炭酸リチウム開発での出資を受け入れると発表した。AP通信などの複数の外電が11月28日までに伝えた。ボリビアのウユニ塩原に炭酸リチウム工場2か所を設立する。投資総額は10億ドル。ボリビアのリチウム開発にはかつて日本も参加意欲を示したが、政情などにより断念した経緯がある。
■CATLとCMOCの事業体が10億ドル出資
ボリビア地図
(出所:JOGMEC)
報道によれば、新工場はリチウム年産量が合計3万5000トンに達する見通し。直接リチウム抽出(DLE)技術を採用する。プロジェクトの権益のうち51%は、ボリビアの国営資源「リチウム公社(YLB)」が保有する。
一方のCBCは、車載電池世界最大手である中国の寧徳時代新能源科技(CATL)傘下のCATL Brunpと、銅・コバルト生産で世界的大手の洛陽モリブデン業(チャイナ・モリブデン、CMOC)による企業連合だ。
■2000年代にJOGMECなどが開発意欲も
ボリビアは南米の「リチウム・トライアングル」に位置し世界最大規模のリチウム埋蔵量を誇るが、政情不安などにより開発が遅れてきた。
(出所:JOGMEC)
今回の開発対象地となったウユニ淵源を巡っては、2000年代に独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が開発を提案し、YLBの前身だった鉱山会社COMIBOLとの協業を詰めるなど、日本勢の働きかけが先行した。しかし、これはボリビア側が独自開発にかじを切ったことによりとん挫。ボリビアの鉱山開発も、COMIBOLからYLBに管轄が移った。
そのYLBは、2021年から改めてDLEを巡る国際公募を始めた。最終的にCBCのほか、中国国有の中国中信集団(CITIC)系のCitic Guoan Group、ロシアのロスアトム傘下のウラニウム・ワン・グループなどが残り、ボリビア政府は、ウラニウム・ワンと2024年初めに別の塩湖での炭酸リチウム工場の設置を契約していた。
■中露勢との協業、中長期にマイナスの恐れも
11月27日付のIntelinewsによると、ボリビアのルイス・アルセ大統領は、今回のCBCとの協業について「ボリビアが世界のリチウムリーダーになるための道のりのマイルストーンである」と説明した。埋蔵量が大きいにもかかわらずチリなどに比べ遅れが目立つリチウム生産で、巻き返しを図ることを目指す。
しかし、JOGMECの関連レポートによると、中露勢が取り組むDLE工場は、これまでも浄水場などの建設計画の遅れや設備トラブルなどが報告され、アルセ大統領もドイツや日本などと改めて面談するなど、西側諸国に秋波を送った場面もあった。
さらに、Intelinewsは、「中露勢との接近は、中露への技術移転が進むだけで地元の利益にはならないなどの弊害があり、中長期にボリビアにとってマイナスになる恐れがある」と指摘。また、物流インフラの未整備が引き続き開発のネックになるとの見方を示した。
その上、ボリビアは2025年に大統領選を控える。選挙戦を巡っては混乱も伝わっており、政情による問題が再燃する可能性も残る。
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(IR Universe Kure)
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