資源循環型の鉄づくりに大きな責務―電炉鋼材フォーラム

挨拶をする渡辺会長。当日の様子はオンラインでも発信された
普通鋼電炉工業会は3日、業界関係者に情報発信を行う「電炉鋼材フォーラム」を都内で開催した。電炉鋼材業界の動向を報告したほか、EVERSTEELやダニエリエンジニアリングジャパン、鉄リサイクリング・リサーチなどが講演の講師を務めた。
冒頭の主催者挨拶では渡辺敦会長が登壇し、「天然資源が限られている日本では、電炉で使用する鉄スクラップは非常な資源であり、資源循環型の鉄づくりをしていることに非常に大きな責務を感じている」と強調。「電炉業界に関する情報を共有する場として有効活用してほしい」と呼びかけた。
続いて、同会の品質管理委員長を務める上道雅丈氏が電炉鋼材の概況を説明した。2023年の電炉生産量は約2280万トンで、国内の粗鋼生産量の約26%を占めている。海外の電炉動向を見ると中国が2000年以降から大きく生産量を伸ばし近年は1億トン前後で推移している状況だ。また、インドも生産量が増加傾向にあるという。
上道氏は国内外の生産動向や国内の鉄鋼備蓄量、市中スクラップ回収率の推移などに触れたほか、オンラインの疵検出器や寸法測定装置など最新の計測技術の採用により、圧延工程での技術革新が進められていることを説明した。
EVERSTEEL・谷口氏、「脱炭素貢献に誇りを」
鉄スクラップAI解析システムの開発を手掛けるEVERSTEELの谷口哲朗Business Development Dept.は、「今、日本の電炉業に求められるDX」の題で登壇。明確なビジョンや、データ・ファクトを重視した上で、「効果的な業務効率化」「脱炭素貢献のブランディング」の取り組みを進めるべきと提言した。
特に脱炭素に関しては、「(脱炭素化)が電炉業界にとっての追い風であるにも関わらず、現場の多くの社員が『自分の仕事が脱炭素に貢献している』という実感を持てていないのが現状」と問題点を指摘。社員が誇りを持てる社内文化を醸成し、優れた人材の確保や魅力的な労働環境の構築を進めることの重要性を強調した。
谷口氏によれば、世界デジタル競争力ランキング2024では日本は32位となっており、業界別にみたデジタル化の進展度では、鉄鋼メーカーをはじめとする製造業の進展度が全体と比較しても低い状況にあるという。同氏は製造業における成功事例を紹介したうえで、積極的な投資を呼び掛けた。
当日は1248人(会場246人、オンライン1002人)が参加し、今回で24回目を迎えた電炉鋼材フォーラムは盛況のまま幕を閉じた。
なお、他の講演内容については後日、別記事として掲載する。
(IRuniverse K.Kuribara)
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