東京製鐵 2025年1月契約売出 3カ月連続の全品種据え置き
東京製鐵は16日、記者会見を開き、2025年1月契約の鋼材販売価格については3カ月連続の横ばいで、全品種を据え置くと発表した。実質的な鋼材の荷動き増加と市況回復については、「年明け以降に期待をしたい」とコメントした
輸出環境もホットコイルとH形鋼ともに先月から横ばいで、現在成約済みのものがホットコイルでFOB 560ドル〜570ドル。H形鋼がFOB 700ドル~720ドルを維持している。生産予定については12月全体で23万トン(前月予定比5000トン減)、H形鋼が7万5000トン(1万トン減)、ホットコイルは10万トン(横ばい)[内、輸出は5000トン(5000トン減)]、厚板4万トン(横ばい)。
物件価格及び在庫販売価格についても鋼材価格同様に横ばいとなった。H形鋼が12万円、異形棒鋼が9万円、厚板が10万3,000円(建値と同額)。12月16日(月)午後より販売開始した。
東京製鐵の基調コメントは以下の通り。
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海外マーケットは欧米主要国のほか、アジア地域においても鉄鋼関連製品の安定取引に向けた対策が進められ、各国にて保護貿易規制は強まってきているが、 鉄鋼関連市況はおおむね底ばいにて推移をしているものの、反転の動きまでには至っていない状況にある。
このため、足元では各国の鉄鋼メーカー各社を取り巻く環境は依然厳しさを増している。2025年を目前に控え、新年以降の世界的な景況感の回復と鉄鋼市場の活発化が待ち望まれるが、特に中国国内の鉄鋼需給の改善が鍵となるため、その動向と世界の経済及び金融政策、鉄鋼需給の変化について注視していく。
国内マーケットは、2024年問題による影響が随所で、鉄鋼関連製品の商業停滞を引き起こし、建材製品においては施工会社による選別受注の姿勢が恒常化しているため、計画案件と実施案件のギャップが拡大し、全国的に鋼材需要は減少傾向にあった。ようやく底打ちの気配を感じられるようになり、 来年に向けて新規着工案件の引き合いも増加しているが、足元では長期休暇を控えていることから、実質的な鋼材の荷動き増加と市況回復については年明け以降に期待をしたい。
鋼板品種については、 足元で薄板産品在庫が約400万トン減少し、市中の在庫調整が進んでいる環境にあるが、各種産業において目立った生産量の回復には至っておらず、鋼材商況は未だ盛り上がりに欠ける状況となっている。
また、為替変動次第では、輸入鋼材の動向も引き続き注意が必要となる。とはいえ、新年に向けては、鉄鋼メーカー各社の減産姿勢が継続し、今後の需要の回復次第で需給バランスの改善がさらに進み、鋼材市況の回復が期待される。引き続き国内外の需給動向を注視していく。
以上のような状況のもと、国内外のマーケット状況を鑑み、先月に引き続き、 鋼材市況の早期底入れを図るため、今月は前品種据え置きとする。需要に見合った生産を継続し、需給の調整に努める。
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また、小松﨑裕司取締役常務執行役員営業本部長はこのコメントに補足する形で、以下のように見解を示した。
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海外は概ね商況としては横ばいで、値動きに乏しいという状況。足元のメーカーの動きを見てると、ベトナムでも多少の価格調整の範囲に動きが限られているし、中国でも大手メーカー筆頭に値動きに乏しい。先月も少し触れたが来年スタートのアメリカ新政権の通商面での舵取りを見極める観点から総じて様子見の気配がある。
中国では先日、中央経済工作会議が開かれ、25年の内需拡大方針が示された。中国の輸出環境が不透明な中で、積極的な財政政策や適度な金融緩和政策により、内需のテコ入れを図っていくものと認識しているが、この方針発表による、鉄鋼価格の上昇は限定的だと思う。いずれにしても、年明け以降は中国の鉄鋼需給や各国の保護貿易の動向について、 金融政策と合わせて注視していく考えだ。
国内に目を向けると、市中在庫は一部サイズで歯抜けがある状況も含めて、調整は進んでいると認識している。ただ、荷動きは、地域特性もあり総じて盛り上がりに欠ける。気配は感じられるが、市況の底打ち、反転にはまだ至ってないと捉えている。
また、これから冬季減産を迎える。需要の回復、工事の進捗次第であるが、年明け以降の需給バランスの改善、それに伴う市況の回復に期待したいと思う。
原料の鉄スクラップについては、海外相場の軟調傾向が続いており、輸出の新規商談は停滞気味にある。国内も需給は緩んでおり、相場は目先弱含みで推移するとみている。
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2025年1月契約の品種別販売価格(O/T NET ベース価格、トン当たり円)は以下の通り。
※24年11月契約の価格から全品種据え置き
H形鋼及び形鋼:2023年4月契約において3,000円の値上げ後、1年5か月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。
H形鋼=11万5,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
縞H形鋼=12万5,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
I形鋼=11万6,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
溝形鋼=11万1,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
角形鋼管(コラム):2022年9月契約において5,000円値下げ後、2年連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万円の値下げ。
角形鋼管=11万8,000円(2024年10月契約にて1万円値下げ。)
U形鋼矢板:2023年4月契約にて3,000値上げ後、1年と5か月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、1万2,000円値下げ。
U形鋼矢板=12万7,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
異形棒鋼:2023年7月契約にて5,000円下げ後、1年と2か月連続で価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万円の値下げ。
異形棒鋼=8万8,000円(2024年10月契約にて1万円値下げ。)
厚板:2023年7月契約にて1万円下げ後、1年と2か月連続で価格据置とした が、2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。
厚板=10万3,000円(2024年10月契約にて1万5,000円値下げ。)
コイル類4品種 2024年2月契約において2,000円値上げ後、7か月連続で価格据置としたが、2024年10月契約において、1万5,000円の値下げ。
(2024年2月以前の値上げは2022年5月契約にて3,000円値上げ以来だった。)
ホットコイル=9万2,000円(前回の値下げは2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)。10万円を下回るのは、2021年5月契約(9万4,000円)以来。
縞コイル=9万5,000円(前回の値下げは2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
酸洗コイル=10万円(前回の値下げは2023年7月契約にて1万2,000円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
溶融亜鉛めっきコイル=12万4,000円(前回の値下げは2023年7月契約にて7,000円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
以下カットシート類(2023年7月契約において値下げを実施依頼、1年と2か月連続で価格据置としていたが、2024年10月契約において、更に1万5,000円値下げ)
熱延鋼板=9万7,000円(2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
縞鋼板=10万円(2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
酸洗鋼板=10万7,000円(2023年7月契約にて1万2,000円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
[申込締切日:2024年12月18日(水)12時まで]
なお、年末年始の休業、及び冬季定期修理スケジュールは以下の通り。
田原工場 12/30~1/3 及び1/27~1/30
岡山工場 12/28~1/4 及び 3/1~3/7
九州工場 12/31~1/8
宇都宮工場 12/29~1/5 及び2/25~3/12
(IRuniverse K.Kuribara)
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