日本発条(5991):半導体製造の微細化で需要拡大する半導体プロセス部品を展示
セミコンジャパン2024で半導体製造の微細化で需要拡大する半導体プロセス部品を展示
12/11から東京ビッグサイトで開催されたセミコンジャパン2024において、日本発条ブースで半導体製造の微細化で需要拡大する半導体プロセス部品の展示が行われた。
日本発条(ニッパツ)は1939年、東京芝浦に自動車用懸架ばね工場を創業、以来、自動車産業とともに成長を続け、ばねのトップ企業であるとともに、現在は情報通信、産業・生活の分野に業容を拡大している。24/3期売上高7669億円、経常利益478億円を誇り、最高収益更中の企業である。その同社が今回、セミコンジャパンにて半導体製造に欠かせない半導体プロセス部品の展示を行っていた。
半導体プロセス部品としてマルチゾーン制御ステージヒータ、冷却板、シャワーヘッドを展示
同社が半導体プロセス部品市場に本格的に参入した歴史は古く、1990年代後半から2000年代初頭。同分野に参入するにあたっては、①自動車用精密ばねや懸架ばねで培った高精度な金属加工技術(精密なばね技術や薄板加工技術)を半導体製造装置部品の加工に応用できる。②長年の金属加工で培った材料特性に関する知見、材料技術が、半導体プロセスで要求される高耐久性、耐腐食性の部品開発に活かせる。③自動車部品で培った表面処理技術が、半導体製造装置の部品に求められる高い清浄度や耐久性を実現できるなど。
(出所:統合報告書2024年)
具体的な製品として、半導体製造装置用の真空チャンバー部品、クランプ部品、精密ばね、などの製造に参入し、徐々に事業を拡大してきた。そして今回展示していたのは、半導体プロセス部品と半導体テスト用部品である。
半導体プロセス部品としてはマルチゾーン制御ステージヒータ、冷却板、シャワーヘッドが展示されていた。この半導体プロセス部品の製造技術として、独自のろう付、固相拡散接合などの高度な金属接合技術がある。半導体の製造過程で使われるプロセス部品は、種類の異なる金属と金属を接合して製作されることが多く、溶射による接合方法が一般的。但しこの方法は歪みが出やすい短所がある。これに対し同社は信頼性の高いろう材を独自に開発し、「ろう材」による接合方式を採用、熱処理が真空中で均熱な温度下で施工されることで、残留歪を抑えることができ、複雑な形状のものでも接合ができ、歪みがなくより安定した品質を実現しているとのこと。また固相拡散接合とは、接合させたい材料同士を直接接合する方法で、溶接やろう付という手法とは大きく異なり、接合対象材を加熱・加圧することで接合界面での原子の移動を促し、接合する技術。 材料を溶かさず、固体のまま接合することで実現できる製法で、機能の幅が広がっている。
(出所:統合報告書2023年)
まずマルチゾーン制御ステージヒータは、半導体製造の成膜装置(CVD)において、高精度な温度管理真空チャンバー部品である。主にアルミ合金、ステンレスなどの金属製で、高度な接合技術により、複雑な内部構造の実現を可能にした。小径金属シースヒータエレメント(金属製のシースと呼ばれるパイプで覆われた発熱体のニクロム線を備えた加熱エレメント)を接合により内蔵し、使用用途に合わせた自由度の高い温度制御やレイアウトを実現している。複数ゾーンの設定や各ゾーンの温度制御、等温保持から温度勾配制御まで、あらゆる目的に利用できるとのこと。現在、半導体回路配線の微細化要求から均質な成膜分布のために、成膜装置ではバッチ方式から枚葉式に移ってきているが、枚葉式でもウエハ面内温度分布の均一化の要求が日々厳しくなっている。
これまでのヒータは同心円状のゾーンに区分けして制御されていたが、均一化を妨げる様々な要素から微妙な温度分布ムラをカバーできず、均一化に対して限界を迎えていた。この限界を乗り越えるために、縦方向にもゾーンを設け、マルチゾーン化したヒータとそのヒータを高精度に制御する必要性が出てきた。同社はこのような難加工に対しても高度な接合技術で対応することで、先端デバイス向けに需要が伸びている。
シャワーヘッドは半導体製造の成膜やエッチングなどの工程で、半導体基板上にプロセスガスを供給する部品。同製品は多数の微細孔と、内部では接合によって形成された複雑なガス流路を施すことで、高精度なプロセスガスの分布調整が可能となる。多数の微細孔と、内部には接合によって形成された複雑なガス流路を有している事により、高精度なプロセスガス分布調整が可能となるが、高精度化でシャワーヘッドも多層化が求められているが、多層複合処理において、高精度の接合技術が差別化となっている模様。
静電チャック用冷却板は電気的な力で対象物(ワーク)を吸着させる静電チャック(Electric Static Chuck:ESC)の部品となっている。静電チャックはウエハを固定する用途で用いられるが、物理的に固定する方法と違い対象物に非接触で保持するため傷やダメージが少なく、しかも対象物全体を均一に吸着できるため、ウエハの変形や反りを防止し、ウエハに熱を均等に伝えられるという特徴を持つ。特に半導体回路の微細化に伴い、静電チャックの温度管理に対する要求が厳しくなっている。この温度制御を実現するが、冷却板の役割となっている。具体的にはプラズマプロセスやエッチングプロセス中、基板には熱が発生するが、この熱を効率的に吸収して冷却することで、基板の温度を一定に保ち、プロセス精度を向上させる。また基板の温度を均一化し、膜厚の均一性やエッチング精度に悪影響を与えないように、冷却板は基板の表面温度を均一化する役割を担う。冷却板内を冷却水や冷却ガスが循環することで、基板の温度を効率的に管理、プロセス中の熱による変形や損傷を防ぐ役割を持っている。
実際、主温度管理においてウエハ面内の温度分布の均一性がより重要性が高まり、温度制御の精度が0.1°C単位で要求され、ステージヒータ同様に従来の同心円状のゾーン制御では不十分となり、より細かいマルチゾーン制御が必要になっている。微細化に伴い半導体デバイスの構造(トランジスタゲートや配線幅など)は数ナノメートル(nm)のスケールとなっているため、微細な構造は、プロセス中の温度変動に対して非常に敏感である。また均熱レンジ(最大値と最小値の平均からのずれ幅)が±1.0°C以下を達成する必要も生じている。具体的にはプラズマCVDやALD(原子層堆積)プロセスでは、膜厚の均一性が求められ、温度変動があると化学反応速度が変化し、膜厚に不均一が生じ、エッチングにおいても温度変動がエッチング速度や方向に影響を与え意図しない形状や欠陥を生じるリスクがあるため。なお3D-NANDなどでは層数が増加し、プロセス中に熱が逃げやすくなり、適切な冷却と温度管理の必要性が増す。
またシリコンに加えてゲルマニウム(Ge)やハフニウム(Hf)などの新素材が導入される場合、材料の熱特性に応じた温度管理が要求される。同社は主として高い熱伝導性を有するアルミ合金製冷却板を製造、ヒーター同様に上記のような課題に対し、高度接合技術を核として材料調達から精密加工、セラミックス溶射施工まで一貫生産しいち早く対応、アルミニウム系冷却板で国内外販大手となっている。
2026 中期経営計画において半導体プロセス部門売上を27/3期に倍増の300億円目指す
同社の半導体プロセス部門は同社の産業機器ほか事業の中の主要事業となっている。25/3H1の売上は84億円(同期比17%増)となっているが、先端半導体生産が順調に拡大、関連する製造装置の受注拡大が寄与している。さらに25/3期予想では202億円(期初計画比31億円増額、前期比31%増)予想と上伸予想となっている。
同社の2026中計では27/3期に売上高300億円を目指しているが、先端半導体の拡大で25/3期増額修正予想となっており、今後もAI半導体の伸長などで27/3期の上振れも期待される。現在、ホンダ、日産の持ち株会社化などが検討されているなど、従来の同社メイン事業の先行き不透明感が生じている中で、同社収益を支える大きな柱となってこよう。
(H.Mirai)
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