【年末企画・ガリウム・ゲルマニウム】中国輸出規制で高騰、25年はトランプ登場で一段高か
2024年のガリウム・ゲルマニウム価格は高騰した。中国が西側諸国に対する資源武器化の一環としてガリウムとゲルマニウムの輸出規制を強め、供給ひっ迫懸念が強い。今後もトランプ新政権の登場で米中対立が先鋭化すれば中国側が輸出規制を一段と強める可能性は高く、2025年も米中対立の最前線の物質として価格高騰が続きそうだ。
■ガリウム13年ぶり高値、12月に急伸
過去1年間のガリウム価格の推移(EU Spot market)($/kg)
ガリウム価格は12月19日に高値$640/kgと、2011年12月以来13年ぶりの高値を付けた。年初比では7%の上昇になる。2023年夏の中国の最初の輸出規制後に狼狽的な買いで急伸したガリウムは、2024年はむしろ小幅安での推移だったが、12月になり急伸した。2023年7月の輸出規制発表からの上昇率は3.2倍に達する。
過去15年間のガリウム価格の推移(EU Spot market)($/kg)
■ゲルマニウムは24年に2倍に値上がり
ゲルマニウムも過去最高値圏に上昇している。金属ゲルマニウム、酸化ゲルマニウムはともに統計がさかのぼれる過去20年間での最高値圏にある。
過去20年間の金属ゲルマニウムと酸化ゲルマニウム価格の推移(99.99% China)($/kg)
ゲルマニウムは2024年に入ってからの方が、値上がりが激しかった。金属ゲルマニウムの12月19日高値は$3000/kgと年初比81.8%高。酸化ゲルマニウムは同日に高値$1830/kgを付け、年初の2.1倍に上げた。
過去1年間の金属ゲルマニウム価格の推移(99.99% China)($/kg)
過去1年間の酸化ゲルマニウム価格の推移(99.99% China)($/kg)
2023年後半にろうばい的な買いが入ったガリウムに比べ、ゲルマニウムは2023年の反応が鈍かったが、2024年に入り遅れて輸出規制に反応した形だ。市場関係者からは「規制発表直後は在庫があったうえ、光ファイバーの需要が落ち気味だったこともあってガリウムのようなろうばい的な先回り買いは入らなかったが、2024年に入り在庫消化が進んだ」(ハヤカワカンパニー副社長 西野義幸氏)との声があった。
また、下半期には「夏に大手ゲルマニウムメーカーに環境査察が入ったため一時生産が減少し、中国国内でも現物が不足している」(中国市場に詳しい日系商社の幹部)との事情もあったようだ。
■中国は「武器」手放さず 今後も上昇避けられないか
ガリウムは主にアルミニウムの副産物として、またゲルマニウムは亜鉛精錬や石炭灰の副産物として抽出・精製される。生産国では中国がガリウムの9割超、ゲルマニウムでは6割超をそれぞれ占める。
ガリウムとゲルマニウムの世界生産シェア
(出所:いずれもJOGMEC)
その中国は2023年7月3日に同年8月1日からのガリウム・ゲルマニウムの輸出規制を発表。輸出業者に対し税関での審査を義務付けた。さらに、2024年12月3日にはガリウムとゲルマニウムの対米輸出自体を禁止した。いずれも米国や西側諸国による半導体規制などに反発した措置とされる。
関連記事:中国 半導体材料のガリウム、ゲルマニウムの輸出規制に動く 日本の半導体材料業界に影響必至 | MIRU
関連記事:中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出を禁止 昨年の規制から一段と強化、3日発効 | MIRU
西側諸国は中国の規制に対抗すべく代替手段を探すが、現在までのところうまくいっていない。戦略物質仲介の米Strategic Metals Investは最新の公開レポートで「欧米は中国が国内のニーズを満たした後、輸出する意思のあるガリウムに依存し続けている。欧米企業は限られた供給を確保しようと躍起になっているため、ガリウムの価格は上昇している」と現状を分析した。同社の推計では、米国が中国のガリウム優位に追いつくためには、冶金学者など専門人材の育成なども含めて1世代以上の時間が必要とみられる。
中国がこうした優位性を手放す可能性は低く、2025年も状況が変わることはなさそうだ。Strategic Metals Investは「トランプ新政権が中国政府に対する姿勢を強めるにつれ、ガリウムはより広範な地政学的対立の焦点となる可能性がある」とし、「さらなる制限や価格上昇は避けられない」と予測した。
関連記事: 「中国産ゲルマニウム、しっかりした申請で輸入可能に」ハヤカワカンパニー西野副社長に聞く | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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