エヌ・ピー・シー(6255) 25/8Q1決算メモ 2.5倍増収9.1倍増益 ファーストソーラー向けでさらに飛躍
25/8期1.2%増収15.0%営利減予想ながら今期も部品増で増額期待、26/8期以降増産続く
株価円(1/10)826円 時価総額182億円 発行済株22052千株
PER(25/8期DO予:10.7X)PBR(1.84X) 配当(25/8期予)10円 配当利回り:1.2%
要約
・25/8Q1はFS向け部品納入増など寄与し2.5倍増収、営利9.1倍と好調に推移
・25/8期好採算案件減で1.2%増収15.0%営利減予想も今期も部品増で増額期待
・新中計で前中計比利益増額、27/8期に売上高130億円、営利26億円目指す
25/8Q1はFS向け部品納入増など寄与し2.5倍増収、営利9.1倍と好調に推移
1/10に25/8Q1決算が開示されたが、説明資料、説明会はなくNPC通信のみメール送信された。25/8Q1は、売上高15.88億円(145.8%増)、営業利益3.73億円(797.1%増)、経常利益3.55億円(777.1%増)、受注高5.36億円(92.9%減)、受注残70.27億円(54.6%減)、生産14.16億円(42.5%減)で着地した。計画に対しFS向けの改造案件が好調に推移、高稼働維持に部品売上が計画を上回り、大幅増収増益に。
25/8期より、セグメント別での開示がなったため、伸び率がわからないが、PV製造装置7.51億円、FA装置4.91億円、PV解体装置0.38億円、部品2.77億円、環境関連サービス0.31億円という内訳。PVはFS(米ファーストソーラー社、以下FS)向けの改造案件、高稼働維持に部品売上が計画を上回ったとのこと。加えて国内PVメーカー向けペロブスカイト用開発装置の売上も寄与している。FA装置は前期に期ずれしていた電子部品業界向けの売上計上があった。PVパネル解体ではフレーム・J-BOX分離装置が海外企業2社に2台の販売実績があった。
25/8Q1受注は24/8Q1がFS社ルイジアナ工場の大型受注の反動減から大幅減に。加えて11月に大統領選があったこと、1/20に発足するトランプ政権の政策により、設備投資の方法や装置仕様が決定するとのことで、発注を見合わせた影響があるとみられる。
利益面では部品販売の好調、材料費増の抑制、生産効率の改善などが進み、装置生産が14.16億円(42.5%減)にとどまったものの、総利益率は同期比横ばいの39.8%を確保、増収効果で販管費比率が17.2ポイント改善し16.2%と低下したことで営利大幅増益に。
25/8期好採算案件減で1.2%増収15.0%営利減予想も今期も部品増で増額期待
25/8期会社予想に変更はなく、売上高109.25億円(1.2%増)、総利益32.05億円(10.4%減)、営業利益20.69億円(15.1%減)予想を据え置いた。FS向けの装置受注がなかったことから受注残高が70.27億円と24/8期末比で10.52億円減少しているものの、依然として9か月分の受注残を抱え、計画通りに売上計上がなされよう。また部品については毎期、控え目な予想を採用、期中に売上増額するのが通例となっており、今期も部品、改造の売上上振れで全体収益も増額修正が期待される。
受注面では前期比増を見込む(具体的な数字は未公表)。特にFS向けではFSの2024年PV設備投資が18~20億ドル(2023年比30~45%)と拡大予測であり、継続的な設備増強が継続する見通し。具体的にQ2にFS向け受注が期待される他、25/8期中に納入される改造案件の受注も期待され、さらにペロブスカイト案件を含め複数の受注獲得が見込まれるとのこと。
新中計で前中計比利益増額、27/8期に売上高130億円、営利26億円目指す
同社は新中計見通しとして27/8期に売上高130億円、営利26億円を目指す。
中心となるFS向けはトランプ政権樹立で中国製PVに対する高額関税が継続され、国内メーカーへの需要拡大が続く見通しの中でFSの設備増強継続が見込まれる。FSは世界第11番目の生産能力に止まるも、米国ではNO1企業であり、トランプ政権でさらに優遇が高まる可能性がある。具体的にFSのPVはシリコンに比べて製造プロセスが短く、エネルギー消費も少なく、製造コストを抑えることができている。
また材料の使用量も少なく資源の有効活用にもつながっている。さらに高温環境下でも出力低下が少なく、日射量が多く気温も高い地域でも安定した発電性能を発揮できる。製造に必要なエネルギーが少ないため、PV発電所の投資回収期間が短くて済み、環境負荷の低減にもなる。このような特性から大規模太陽光発電所市場で強みを持つため、大規模データセンタ対応のPV発電所としても有望であり、FSの成長に合わせ、同社受注拡大が加速する可能性を秘めている。
さらにペロブスカイトPVの本格量産装置受注も期待される。国内では国内PVメーカーが薄膜PVから一時撤退したこともあり、FS向けでカドニウムテルル薄膜PV装置を手掛ける同社の薄膜PV装置の電極成形工程やシート積層工程、張合せ工程等で同社技術の活用が求められよう。また同社はFS社のタンデム型PV装置の開発にも関与、国内も26/8期以降、タンデム型を含め大型のペロブスカイトPV量産装置受注獲得が期待される。さらにPV解体装置で様々な方式があるが、欧州向けに「ホットナイフ分離法」を利用したガラスが再生ガラスの原料として利用が始まり、海外でのリユース規制強化などで欧米での同社方式の受注獲得拡大が期待される。また日本でも2025年中にPVパネルリサイクル義務化の法案が出される見通しで、国内でも解体装置、リユース販売の拡大が期待される。
全体を通じ、FSの中長期的な需要拡大、加えてペロブスカイトPV、ホットナイフ分離によるPV解体分離装置の拡大が期待され、同社の成長力が高まり新中計の27/8期収益の前倒し達成が期待される。
株価は24/8Q3発表の翌日7/10に1497円の高値を付け,その後7/13のトランプ氏狙撃未遂などでトランプ氏再選の風が吹いた状況で再エネ見直し機運なども影響、全体相場の下落もあり株価は急落、8/5に745円まで下落した後は緩やかに回復、しかし10/10に25/8期減益予想としたことで株価は冴えない動きで推移している。
現在、25/8期予想EPS71.88円に対しPER11.5倍は東証グロース市場機械の上場企業が少ないこともあり指標とならないため、東証スタンダードで比較すると機械平均PER11.1倍並みの水準にある。但し同社安値平均PER14.2倍に対し割安と言え、しかも増額修正期待もある。今後、トランプ氏再選で国内PVメーカー優遇の政策がとられる見通しで、AIデータセンタ建設でガーファなどが発電設備増強を図る動きもあり、改めて米国でのPV投資拡大機運がある。また、国内ではペロブスカイトPVに対する大型設備助成策も見込まれる。このため同社社収益の拡大が加速する期待もあり、ややポジティブ継続とする。
(iruniverse mirai)
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