第3回「ヤード環境対策検討会」――規律付けの基本的な方向性示す
環境省のヤード環境対策検討会は15日、第3回の会合を開き、取組の基本的な方向性を取りまとめた。実態調査の結果を踏まえて、廃棄物処理法における①現行の届出制度が十分に機能しているか、②有害使用済機器の範囲は十分か、③廃鉛蓄電池等の解体に伴う生活環境保護上の配慮は十分か④不適正輸出を防ぐ仕組みとして更なる検討が必要か――の4つの視点で論点を整理し、おおむね規律付けを強化する方向が打ち出された。
見直しの方向性を、論点ごとに概括したのが一連の下図になる。
まず1点目の「現行の届出制度が十分に機能しているか」についてである。有害性などの生活環境保全上の観点から規制対象物のあり方を検討し、有害性基準で分類し直す方向を打ち出している。3つのカテゴリーで示された下図右下の「見直し後の枠組み(案)」がそれである。保管・処理過程で騒音、悪臭など環境保全上の支障が生じる可能性がある「金属・プラ・雑品スクラップ」も、新たにその性状に応じた規制を検討する。また、すでに規制対象となっている有害使用済機器の中で有害性の低いものは、雑品スクラップなどと同様の同じ扱いとする方向を示している。見直し後の枠組みは、有害性基準で規制の在り方を示したもので、必ずしも現行の廃棄物処理法を前提にしたものではないという。
2点目の「有害使用済機器の範囲は十分か」を巡っては、新たに規制対象に含める方向性を打ち出した「金属・プラ・雑品スクラップ」について、それ自体の有害性は低いものの保管・処理される過程で環境負荷が生じる可能性をはらんでいると指摘。その上で、物品の個別指定は困難として、機器に限定しない「包括規制」方式を提案している。
例えば廃鉛蓄電池を巡って、破砕された状態のもの(巣鉛)が流通すると、規制できない懸念が残るという。だから、解体物にも規制をかける必要があるとの声を踏まえたものである。また、地域の実情に応じた規制を可能とするよう、柔軟な制度設計も求めている。
3点目の「廃鉛蓄電池等の解体に伴う生活環境保護上の配慮は十分か」では、廃鉛蓄電池の解体・精錬と廃リチウムイオン電池の処理を巡って発生している生活環境上の支障事例に焦点を当て、対策について見直しの方向性を示している。廃油、廃PCB、廃水銀なの特別管理産業廃棄物並みの扱いが必要なものもあるため、有害性の高い機器については、事業場の処理能力などの事前審査体制の導入や、運用時の管理者の配置の義務付けなどにも言及している。
4点目の「不適正輸出を防ぐ仕組みとして更なる検討が必要か」では、国内処理の原則を有害性の高い物品(廃鉛蓄電池や廃リチウムイオン電池など)にも適用し、その国内発生分は環境対策が確実に行われる国内での解体を優先する制度を検討するよう求めている。廃鉛蓄電池の不適正解体で、鉛、希硫酸などの流出事例が確認されたり、廃鉛蓄電池から取り出された巣鉛などが、バーゼル法(特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律)に基づく輸出手続きなしに不適正に輸出される事例が発生しているためだ。
廃鉛蓄電池から取り出された巣鉛、粗鉛や、廃リチウムイオン電池から取り出されたコバルト・ニッケルについては、その処理要件を定めるよう求めてもいる。
不適正輸出の防止策を巡っては予備罪や未遂罪の法的措置の検討もと踏み込んでいる。
同日の会合では様々な意見が出されたが、3点目の「廃鉛蓄電池等の解体に伴う生活環境保護上の配慮は十分か」を巡って、ヤードでの廃鉛蓄電池の解体・精錬や、廃リチウムイオン電池の処理を前提にした見直しの方向について、あくまでヤードの機能は保管にあり、解体・精錬や処理は別のスキームとの指摘などが出ていた。
実態調査(調査対象:47都道府県、20政令市、62中核市の計129自治体、調査期間24年10月29日‐11月29日、集計対象期間23年10月1日‐24年9月30日)の結果、いま廃棄物処理法の規制対象外で今回の見直し検討の主対象にもなっている、金属・プラ・雑品スクラップ、鉛蓄電池などの再生資源物(いずれも有価物)の保管などを行っている全国の事業所数は3,260(廃棄物処理法の規制対象の有害使用済機器保管事業所届け出件数612は含まない)にのぼることがわかった。地域別では関東地方が最多の2019、中部地方の414がこれに次いだ。ただ、近畿、九州地方では管内の事業所を把握していない自治体もあり、さらに多くの事業所が存在する可能性もあるとしている。
回答を寄せた129自治体のうち、再生資源物保管等事業場に対する条例を制定しているのは12自治体だった。また90以上の自治体が、条例制定よりも国レベルの法制度による規制を要望しているという。法制化に向けた意見としては、不適正業者や悪質業者の排除効果が見込める許可制の導入を求めるものが目立ち、廃棄物処理法以外の規制を求める声も寄せられたという。
確認された再生資源物等の搬出先として最も多かったのは、「国内の再生資源物商社・卸売業者」だったが、3位、4位には「海外の再生資源物商社・卸売業者」「海外のリユース業者」がランクイン。一定量が輸出されている実態が改めて分かった。輸出先は2つのルート別に見ても、中国が1位だった。
(IRuniverse G・Mochizuki)
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