宏幸(ヒロコウ) 難しいFRPリサイクルを独自技術で実現、建設現場樹脂資材へ
宏幸(ヒロコウ)(本社:神奈川県横浜市)は、平成15年2月に設立、当初はアルミ・銅製品の販売を行う企業であったが、今では金属、電子機器の貴金属加工・プラのマテリアルリサイクル事業と伜組みを超えた幅広い事業をグローバルに展開している。また、例として米国(輸出国)・東南アジア(輸入国)・日本(仲介国)といった、いわゆる3国間貿易にも強みを持っている。
さらに最近では、風力発電所の解体に伴う風車 FRP(繊維強化プラスチック)ブレードのリサイクル技術が、環境省補助実証事業にも採択され、同時に世界初の「風車 FRPブレード高度リサイクル技術」として特許所得している。
今回は、風力発電所の解体も多く手がけるベステラと、ヒロコウエコテクノロジーセンター(神奈川県足柄上郡)の視察に同行した。ベステラはサーキュラーエコノミ―等の推進に力を入れており、全国で受注している風力発電所から発生する廃材もリサイクルしてきたが、宏幸の新技術に着目し、今回の工場視察を行うこととなった。
環境省補助実証事業として開発
今回応じてくださったのは、同社事業部門担当の武田啓氏。元々同氏は不動産会社に勤務していたが、環境事業に興味があり、宏幸に入社したという。
ヒロコウエコテクノロジーセンターは、同社の使用済電子機器、OA機器などの基盤リサイクルの拠点になるが、現在ここにFRPのリサイクルプラントが設置されている。同社が扱うFRPは、風車ブレード、ユニットバス、飛行機、船など。前述の通り、このリサイクル事業は環境省の「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金脱炭素型循環経済システム構築促進事業(うちプラスチック等資源循環システム構築実証事業)」を通じて実証を進めてきたもので、その開発は順調に進み、風車ブレードをリサイクルし、再生FRP合成樹脂材を製品化するにいたった。
これは現状、太陽光発電パネル下のエコ敷マット(防草に効果)として各種メーカー及び販売店から高い評価を得ているという。実例としては、大阪のメガソーラーにおいて、1,000枚ほどのエコ敷マット納入がある。また、工事現場など使用している敷鋼板の代替品の22mmエコ敷板製造成功し、3月から製品化へ展開予定という。
また、この技術を社会実装するにあたって、解体を行う阪和興業株式会社他の各排出事業者や収集運搬事業者の協力(風力発電解体撤去フロー、ブレード裁断、積込・搬出、解体工事課題とブレードリサイクル化の提言など)のもと、環境省及び経済産業省が管轄するプラスチック資源循環法の「再資源化事業計画」に申請を行い、令和6年7月22日に同計画は認定された。
微粉末化技術がポイント
ではこの技術の内容だが、大まかに説明すると、まずブレードなりFRP製品を切断し、これを粗破砕するとともに、電線の被覆などのPVC(塩ビ、工場端材)を微粉末化して混錬(ブレンド)し成型、建設現場資材や合成樹脂建材、エコ敷マットなどへと製品化する。ここでポイントとなるのは、FRPを微粉末化(数十μ)することで、ここまでの性状(写真)にする技術はいままでになかった。
また、一般的な処理においてなにかと難点のあるPVCを混錬、非常に強度の高い製品に成形している。成形において重要な役割をしているのが10%ほど加える添加剤で、これがなんであるのかということは公開できないとのことであった。ただ、バイオ(植物)系の素材であることは公開済みであるとのこと。
ライフサイクルでのCO2削減効果も、普及時を2030年とした場合、ブレード焼却、建設資材生産、運搬、解体、廃プラ処理によるCO2排出を、同技術により合成樹脂建材を製造すれば、削減効率△33,479t-CO2/年(△68.3%)と脱炭素化貢献も大きいものとなっている。
本年1月から、同社はリクシルと協業し、本格的にユニットバスの浴槽・床などに使われるFRPのリサイクルを開始した。FRPは防水性や耐久性に優れていることから、浴槽などの素材として広く普及している。従来までは工場排出の廃FRPは、粉砕しセメントの原燃料とするサーマルリサイクルを行なっていたが、宏幸と協業することで、LIXIL筑波工場から排出される廃FRPを、すべてリサイクルすることが可能になったという。
宏幸は、従来から再資源化事業として廃プラを微粉末化して再生骨材や再生レンガ、また使用済み基盤を破砕し得られる貴金属の回収を行うビジネスを行なっており、これらを微粉末化する技術に長けていた。それが、今回のFRPの再資源化にも活かされている。
FRPブレードはかなりの重量物でもある。そのため、解体事業者はできるだけ現場から近い再資源化施設に搬入したいところだ。宏幸でも、こうした課題は把握しており、このエコテクノロジーセンターに設置しているプラントと同様の設備を設置した再資源化施設を、日本国内の要所に設置していく計画を立てているという。
同社は、かねてから大学の研究機関とも共同でリサイクル技術の開発にあたっており、これが身を結び、特許申請技術を開発するまでにいたった、産学連携の成功例の一つといえるだろう。
FRPのリサイクルには湿式、乾式といくつかあるが、同社の技術はエネルギー消費も低い、まったく違った発想の技術である点が注目ポイントだ。
(IRuniverse kaneshige)
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