中国規制の対象鉱物、今週は動きなし タングステンAPT、酸化モリブデンなど横ばい
中国当局は2月4日から一部金属の輸出について、国内業者に対し国務院の管轄部門の審査申請を義務付けた。対象となった金属の価格は2月7日時点までで、すべて発表前から横ばいで値動きはない。市場では「ひとまず様子見との気分が強い」(上海有色網、SMM)との声がある。対象鉱物の現在価格を紹介する。
対象になった鉱物はタングステン、モリブデン、テルル、ビスマス、インジウム。
2月6日の時事通信によると、中国商務省と中国税関総署の報道官は2月4日の記者会見で今回の金属輸出規制について、「輸出規制は国際的に通用するやり方だ」とし、「発展と安全を統一的に計画する管理理念を体現し、国家の安全と利益をよりよく守り、核拡散防止などの国際的義務をよりよく履行するものであり、世界の産業チェーンとサプライチェーンの安全と安定の保障に有益だ」と述べた。また、「規定を満たす輸出であれば許可は交付する」ともした。
■1月下旬~末からすべて横ばい
タングステンのうちベンチマークであるAPTは1月30日に付けた仲値$342.5/MTUから動かなかった。中期で見れば、中国当局の環境査察の影響で高騰した2024年7月以来の高値圏にある。タングステンはもともと中国から産出される鉱石の品質低下問題などを背景に中国国内でも供給ひっ迫感があり、価格は下支えされている。ただ、2013年夏に付けた$400超えの水準には届かない。
過去3か月のタングステンAPT価格の推移(EU Freemarket)($/MTU)
酸化モリブデンは1月23日に仲値$21.05/LBを付けた。2023年2月に$39と過去最高値水準まで上がっており、その後は上値が重い。
過去3か月の酸化モリブデン価格の推移($/LB)
テルル、ビスマス、インジウムはほぼ似た値動き。テルルは1月30日、ビスマスとインジウムは1月23日に付けた価格から横ばいだ。いずれも中期には2024年11月以来の高値圏。つらに長期で見ると、それぞれ2024年夏~秋にほぼ10年ぶりの高値に上げており、現在はその後の調整が続いている。
過去3か月のテルル価格の推移(99.95%)($/kg)
過去3か月のビスマス価格の推移(EU Spotmarket)($/LB)
過去3か月のインジウムの推移(99.99% China)($/kg)
中国側の報道官も指摘しているとおり、今回の規制は「輸入禁止」ではなくあくまでも「輸出規制」。輸出者が該当する品目を輸出する場合、輸出管理法および両用品目輸出管理条例に基づき、国務院商務主管部門(商務部)に対する申請と許可取得が必要になる。特にタングステンについては形状別にかなり細かく対象品を規定しており、関係者は発表原文を確認されたい。
中国商務省プレスリリース: 商务部 海关总署公告2025年第10号 公布对钨、碲、铋、钼、铟相关物项 实施出口管制的决定
(IR Universe Kure)
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