東京製鐵 2025年3月契約売出 好転の兆しみえるも5カ月連続の据え置き
東京製鐵は17日、2025年3月契約の鋼材販売価格について全品種を据え置くと発表した。建築関連からの引き合いが増え、好転の兆しがみえるものの、長く続く国際市場の不安定さに冷静に対処する目的などから5カ月連続の据え置き判断となった。
輸出環境もホットコイルとH形鋼ともに先月から横ばいで、現在成約済みのものがホットコイルでFOB 560ドル〜570ドル。H形鋼がFOB 700ドル~720ドルを維持している。生産予定については2月全体で23万5000トン(前月予定比3万トン増)、H形鋼が7万5000トン(横ばい)、ホットコイルは10万5000トン(1万トン増)[内、輸出は2万トン(1万5000トン増)]、厚板4万トン(1万5000トン増)。
物件価格及び在庫販売価格についても鋼材価格同様に横ばいとなった。H形鋼が12万円、異形棒鋼が9万円、厚板が10万3,000円(建値と同額)。2月17日(月)午後より販売開始した。
東京製鐵の基調コメントは以下の通り。
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海外マーケットについて、各種の鉄鋼関連指標は依然として世界的に様子見の状態が続き、まだ方向性が定まらない環境にある。アメリカにおける各国への鉄鋼関連製品への関税政策の導入による世界経済への影響などは予断を許さない状況にありますが、今しばらく冷静な見極めが必要と捉えている。一部の国においては鋼材価格の値戻しへ向けた動きが出ているもの、春節明け以降も中国国内での需要は盛り上がりに欠けていることから、アジア地域全体の鋼材市況は軟調のまま推移している。引き続き、世界全体や中国の経済、金融政策の変化と鉄鋼需給について慎重に注視していく。
国内マーケットは、建設需要の動向に大きな変化は見られず2月以降も全国的に建設用鋼材の取引は到着状態にあり、鋼材市況は停滞が続いている。一方で、鉄鋼メーカーへの引き合いは、大型案件に加え、中小向け短納期案件の問い合わせも多くなっていることから、今後、緩やかながらではあるが、鋼材の荷動きが増加し、市中在庫のバランス改善が進むことで事業の持ち直しが実現することを期待したい。
鋼板品種は、世界的な景気の調整局面により、足元は各種産業の輸出環境が低調であることに加え、国内向け需要についても盛り上がりに欠け、商況の回復には至っていない。現状は一部の部品や製品で供給力不足も発生しているが、製造業における国内拠点の強化策やDX化に向けた投資意欲が高く、新年度スタートを目前に控え、早期の商況好転をめざす動きがみられるようになった。なお、輸入鋼材全般については、引き続き国際市場の不安定さから、今後の動向に注意が必要な状況に変化はない。継続的に国内外の需給動向を注視する。以上のような状況のもと、先月に続き、国内外の関連状況をよく見極めるため、販売価格は全品種据え置きとした。引き続き、需要にあった生産を継続し需給バランスの調整に努める。
また、小松﨑裕司取締役常務執行役員営業本部長は上記のコメントに補足する形で、以下のように見解を示した。
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海外マーケットは中国ミル、台湾ミルも揃って値上げがあり、その動向がマーケット全体へ浸透していくか注目している。採算難のほか、3月5日から始まる全国人民代表大会での政府策を見越しての動きもあるとみている。とはいえ、アジア全般でみると、マーケットは春節明けで一進一退の状態にあり、様子見気配が強いと認識している。一方、アメリカが3月12日に発動予定の輸入関税を見込んだメーカーの強気の姿勢がみられ、値上げが続いている。関税をはじめとしたアメリカの政策とそれが与える影響に注意していく。
国内に目を向けると、取引がやや膠着状態にあるほか、市況も一部で下げ止まり感が強まっているとは思う。市中在庫は概ね適正水準だと認識しており、品種によっては品薄感さえある。建築関連では新年度以降の引き合いが増えていて、緩やかではあるが市況の持ち直しが期待される。
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2025年3月契約の品種別販売価格(O/T NET ベース価格、トン当たり円)は以下の通り。
※24年11月契約の価格から継続して全品種据え置き
H形鋼及び形鋼:2023年4月契約において3,000円の値上げ後、1年5か月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。
H形鋼=11万5,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
縞H形鋼=12万5,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
I形鋼=11万6,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
溝形鋼=11万1,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
角形鋼管(コラム):2022年9月契約において5,000円値下げ後、2年連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万円の値下げ。
角形鋼管=11万8,000円(2024年10月契約にて1万円値下げ。)
U形鋼矢板:2023年4月契約にて3,000値上げ後、1年と5か月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、1万2,000円値下げ。
U形鋼矢板=12万7,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。)
異形棒鋼:2023年7月契約にて5,000円下げ後、1年と2か月連続で価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万円の値下げ。
異形棒鋼=8万8,000円(2024年10月契約にて1万円値下げ。)
厚板:2023年7月契約にて1万円下げ後、1年と2か月連続で価格据置とした が、2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。
厚板=10万3,000円(2024年10月契約にて1万5,000円値下げ。)
コイル類4品種 2024年2月契約において2,000円値上げ後、7か月連続で価格据置としたが、2024年10月契約において、1万5,000円の値下げ。
(2024年2月以前の値上げは2022年5月契約にて3,000円値上げ以来だった。)
ホットコイル=9万2,000円(前回の値下げは2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)。10万円を下回るのは、2021年5月契約(9万4,000円)以来。
縞コイル=9万5,000円(前回の値下げは2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
酸洗コイル=10万円(前回の値下げは2023年7月契約にて1万2,000円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
溶融亜鉛めっきコイル=12万4,000円(前回の値下げは2023年7月契約にて7,000円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
以下カットシート類(2023年7月契約において値下げを実施依頼、1年と2か月連続で価格据置としていたが、2024年10月契約において、更に1万5,000円値下げ)
熱延鋼板=9万7,000円(2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
縞鋼板=10万円(2023年7月契約にて1万円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
酸洗鋼板=10万7,000円(2023年7月契約にて1万2,000円下げ。2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。)
[申込締切日:2025年2月19 日(水)12時まで]
(IRuniverse K.Kuribara)
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