長野計器(7715) 25/3Q3決算メモ ポジティブからややポジティブに引き下げ
25/3期4.1%増収8.4%営利増予想はQ3低迷で未達懸念も最高益更新は確保期待
株価1989円(2/18) 時価総額388億円 発行済株19433千株
PER(25/3DO予7.1X)PBR(0.9X) 配当(25/3予)46円 配当利回り:2.3%
要約
・25/3Q3は17.0%減収26.6%営利減と海外子会社の円換算額減が影響し大幅減益
・25/3期4.1%増収8.4%営利増予想変更無く、Q3不振影響残り最高益更新も利益微増懸念
・新中期経営計画の26/3期売上高753億円、営業利益97億円は発射台低く未達懸念
25/3Q3は17.0%減収26.6%営利減と海外子会社の円換算額減が影響し大幅減益
圧力計と圧力センサを2本柱として事業展開、圧力計は世界トップシェア。25/3Q3決算が2/10に発表され、同日説明資料が開示された。25/3Q3は売上高149.76億円(前年同期比17.0%減、Q2比20.0%減)、営利15.73億円(同26.6%減、同30.4%減)、経常利益15.19億円(同24.4%減、同29.6%減)と大きく低迷した。この要因の一部は、海外子会社の決算数値がQ3(海外は9月末)に急な円高(Q2=161.04円からQ3=142円)となり円換算額の減少要因が大きく影響した。また国内も車載や一般産業向けが伸び悩み、全体として大幅な減収減益となった。なお、25/3Q3累計では3.4%減収、5.4%営利減となり、Q2累計時の3.7%増収、6.8%営利増から減収減益に転じた。
セグメント別では圧力計が売上高73.22億円(同期比22.3%減、Q2比28.0%減)、営利5.75億円(22.1%減)に。全体の50割強を占める産機・プロセス向けが37.59億円(同期比25.5%減と円換算の売上が減少、国内も産機業界の伸び悩みが影響した。FA・空圧も17.80億円(同期比23.4%減)と国内の設備投資の伸び悩みなどが影響した。利益面では減収影響に加え円換算額の調整もあり大幅減益に。
圧力センサは、売上高48.93億円(同期比15.9%減)、営利8.16億円(同36.4%減)に。全体の1/4を占める産機・設備向けが12.81億円(15.9%減)と米国が堅調も国内が減少、半導体向けは19.47億円(12.9%減)と一服、自動車向けが3.91億円(20.9%減)と生産調整等も長引き3四半期2ケタ減少、建機も7.95億円(6.8%減)と国内堅調も海外不振で減少した。利益面では減収影響、円換算額の調整影響で大幅減益となった。
計測制御機器は売上高9.38億円(同期比5.3%減)、営業利益0.43億円(同38.6%減)となった。医療器械の売上増加も生産自動化用の空気圧機器の売上が不振、自動車・電子部品向けのエアリークテスターも低調に推移した。利益面では金属材料及び電力等の価格高騰が影響した。
ダイカスト他は売上高18.23億円(0.3%増)、営業利益0.38億円(同期比28.3%減)に。自動車業界が主で売上が減少、利益は金属材料及び電力料等の価格高騰が影響した。
全体の営業利益の増減要因(差引5.70億円減少)では、減収影響が為替調整影響も含め30.71億円と最も影響が大きく、これを減収に伴う原価減少17.28億円、人件費削減4.54億円、その他の削減で補ったものの、大幅減益に。
25/3期は4.1%増収8.4%営利増予想変更なく、進捗率悪く会社予想未達懸念
25/3H1で収益の上振れ着地となったが、上期段階で下期不透明要素が多いとして通期予想を変更せず、25/3期予想は売上高707億円(4.1%増)、営利77.5億円(8.4%増)、経常利益76億円(2.6%増)、税引利益55億円(1.7%増)、4期連続最高収益予想を据え置いた。25/3Q3発表でも予想を変えておらず、25/3期予想に対し25/3Q3累計での進捗率は売上高で71.6%、営業利益71.8%、経常利益72.8%と、進捗率がやや悪い。これは一つには海外子会社がQ2対比でQ3(9月末)が一時的に円高に振れたことが影響しているが、国内も伸び悩みがあったとみられる。
セグメント別でも変更しておらず、25/3Q累計進捗率は売上で圧力計74.0%、圧力センサ69.6%、営業利益で圧力計90.6%、圧力センサ72.8%となっている。平均的に収益性の最も高い圧力センサについて多少進捗率が悪く、収益性が圧力センサの1/2程度の圧力計の進捗率が高い点から、Q4について圧力センサの挽回がないと利益の未達となる可能性がある。圧力センサについては半導体向けの進捗率が70.6%となっているが、車載向けでは52.8%に止まっている。半導体向けについては緩やかながら回復が見込め計画並みの着地が見込めるものの、車載向けの低迷は続くとみられ、25/3期の圧力センサは会社予想未達成が懸念される。また計測制御機器は売上高で65.3%、営利で6.3%に止まっており、こちらも計画未達の可能性がある。
全体として圧力計が上振れ、圧力センサが多少未達、計測制御が未達懸念、Q3での円高分の修正がQ4に戻されたとしても会社計画に届かず、営利最高益更新は確保も営利はほぼ横ばいにとどまろう。
新中期経営計画の26/3期売上高753億円、営業利益97億円は発射台低く未達懸念
同社は新中期経営計画で26/3期に売上高753億円、営業利益97億円を経営目標としている。
まず、既存事業の競争力強化においては特に圧力センサの強化に注力する。具体的には圧力センサの増強において、上田計測機器工場に分散していた工程を丸子電子機器工場に集約、主力のステンレス圧力センサを「加工から研磨」まで一貫生産工場とする。生産能力も月産80万個を月産120万個体制に引上げる計画で生産開始は2025年夏を予定。この他、自動車向けではFCEV向けの各種圧力センサについても採用車種の拡大が見込まれる。
圧力センサでの最大のターゲットは半導体製造向けの拡大。同社製品は主に前工程で利用されるが、ドライ中心からウエット工程まで全て品揃えができた。今後、国内で半導体新工場建設が相次ぐ中で、各種圧力センサ、圧力計の取り込みが期待される。またガス圧力センサでは特殊ガス用の生産能力を大幅に引上げ、純水、薬液用の新製品投入も強化。半導体洗浄装置においてバッチ式から枚様式にシフト、様々な薬液供給がなされ、製造装置あたりの使用個数が拡大、純水・薬液計測用圧力センサの生産能力も大幅に高める。さらにグローバル展開ではアシュクラフトブランドによる各種半導体向け製品の投入を本格展開、米国大手半導体製造装置メーカー、半導体工場向けに本格的な拡販を行う。
新事業領域については「光学式」圧力センサの開発がある。光学式センシング技術を活用し、高温(400℃)環境で高精度に圧力を計測できる光干渉方式を用い、有害な水銀などの圧力伝達用封入液を使用せず、環境配慮製品となっている。もう一つの製品として、高精度圧力計測・制御機器の事業拡大がある。これは高精度圧力センサ(≦±0.1%F.S.)の校正器としても利用可能で、今後、水素、アンモニアなどの利用拡大に伴い、様々な計測に利用されよう。
このように、圧力センサの能力増、高付加価値化、グローバル展開などに加え新規事業領域での売上拡大が期待されるものの、足元の車載向けの停滞、半導体向けの本格拡大のずれ込みなどがあり、26/3期中計計画の達成はトランプ政権が打ち出す自動車の関税政策による自動車向けへの影響、半導体生産も中国の設備投資一服感、先端半導体向け以外の回復の遅れなどから、ハードルが高まったとみられる。
株価は連続最高益更新見通しから7/9に3555円の年初来高値更新となり1999年3550円以来の高値を更新した。その後は半導体関連株の下落などで下落、8/5には2057円まで下落。その後は25/3H1で上振れ着地し11/15に2668円を付けた後は再度下落、25/3Q3累計で減収減益に転じたことで2/10に2000円大台割れの1987円と昨年来安値更新となった。現状、25/3期会社予想EPS283.02円に対しPER7.0倍はプライム精密平均PER21.1倍に対し割安であるが、25/3期会社予想未達懸念、26/3期中計も達成のハードルが高まったと判断、今後も成長が続くと見られるもののポジティブからややポジティブに評価を下げたい。
(H.Mirai)
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