経済価値を重視した循環の構築を―CPs第5回地域循環モデル構築WG

経済産業省は18日、CPs(サーキュラーパートナーズ、通称:シーピーズ)の第5回地域循環モデル構築WGをオンライン併用形式で開催した。同回では、地域サーキュラーエコノミー指標の素案が示したほか、来年度以降の事業方針を説明した。説明を聞いた委員からは企業のインセンティブや経済価値を重視して取り組みを推進すべきという意見が多数寄せられた。
地域循環モデル構築WGは、自治体におけるサーキュラーエコノミーの取り組みを加速し、地域の経済圏の特性に応じた「地域循環モデル」の確立を目指すWG。前回の第4回会合では、循環の構築方法として、企業の所有品を地域の消費者間でシェアする「企業製品シェアリング」や、有望な技術をもつ静脈産業が存在する地域と協働する「近隣地域連携リサイクル」など8種類を定めた。また、先行取組の紹介・分析も行われた。
今回の会合では地域・自治体における現状分析で使用する地域サーキュラーエコノミー指標の素案が事務局から示された。選定されたのは統計情報としてデータが取得可能な以下の31指標で、同指標を組み込んだ評価ツールのプロトタイプは近日中にCPs会員向けに公開される予定だ。
素案として提示された31の指標(事務局公開資料から引用)
地域循環モデル構築WGの委員からは、指標案に一定の評価を示す一方で、「各地域ならではの取り組みを正確に評価するためにはさらに踏み込んだ指標が必要」「正確な評価が難しい指標がある」などの指摘が挙がった。後者の意見は「環境配慮への意識度」や「地域コミュニティの成熟度」「地域愛着度」などの指標を示唆していると思われる。評価ツールがどのような仕様となっているかは定かではないが、統計情報として正確かつ公正な評価が行うのは難しいと予想され、素案からの修正が求められそうだ。
また、「各製品・素材の本来あるべき循環はどのように判断することが望ましいか」という議論では、経済価値を支持する意見が多く聞こえた。馬奈木俊介委員(九州大学大学院工学研究院 主幹教授)は、「(循環に取り組んだ)企業のインセンティブがしっかり確保できるようにするのが大事」と強調したうえで、「再利用、再生利用の価値がバリューチェーンの中で経済価値に落としこめる姿を見せる」ことでCPsの試みが地域(行政)案件ではなく企業案件であることを示すべきと主張した。
石川雅紀委員(叡啓大学特任教授)もこれに賛同し、「企業が引っ張らなければ、高度なリサイクルや資源循環は難しい」とし、先進的な取り組みを行う企業の貢献度合いが可視化できるシステムの構築を提案した。
次年度以降(2025年4月以降)は、「地域循環モデル高度化サブWGの運営」「連携促進・事例横展開」「実証事業」を推進する計画だ。サブWGの運営では、経済合理性などの観点で難易度が高い近隣地域連携リサイクル、大規模リサイクルの構築を成功させることを目的に、「広域的連携の促進」の実現に向けた検討体を立ち上げる予定だ。
次年度の活動方針概要(事務局公開資料より引用)
川崎市の臨海部国際戦略本部成長戦略推進部部長を務める大山啓祐委員は、「民間企業と自治体は比較的つながりやすいが、これまでの関係性が薄い自治体同士となるとマッチングが成立しにくい」と見解を述べ、経産省や環境省の支援を求めた。広域的連携の必要性はWG全体で共通意識としてあるものの、資源循環の枠組みから取り残される自治体や企業を出さないような仕組みについては、慎重な議論の積み重ねが欠かせないだろう。
(IRuniverse K.Kuribara)
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