フジミインコーポレーテッド(5384)25/3Q3決算メモ ややポジティブ
25/3期ラッピング、ポリシング上伸し18.8%増収29.1%営利増予想は大幅上振れ期待
株価2087円(3/26) 時価総額1663億円 発行済株80099千株
PER(DO25/3予:16.6X)PBR(2.04X)配当(25/3期DO予)75円 配当利回り:3.6%
要約
・25/3Q3はシリコンウエハ向け活況で29.1%増収55.5%営利増と収益上伸続く
・25/3期18.8%増収29.1%営利増予想は営利Q3累計進捗率85%と高く上振れ期待高まる
・新中長期計画で26/3期売上高770億円、29/3期売上高1000億円、各営利率20%目指す
25/3Q3はシリコンウエハ向け活況で29.1%増収55.5%営利増と収益上伸続く
1950年に国内初の精密人造研磨材メーカーとして誕生。1957年からは半導体分野へ進出し国産初の研磨スラリーを開発、その後は半導体関連の研磨関連事業を核として成長を続けてきた。現在、半導体シリコンウエハの研磨材やポリッシング剤、CMP研磨材などを製造、シリコンウエハラッピング材では90%以上のシェアを有する。2/17に25/3Q3決算が行われたが説明会は実施されず、3/6には幕張のSiC/GaN加工技術展2025では会社概要並びにパワー半導体の動向を踏まえ同社のSiC研磨技術セミナーを行った。
25/3Q3は売上高160.46億円(同期比29.1%増)、営利33.58億円(55.5%増)、経常利益40.60億円(2.0倍)、税引利益28.95億円(2.0倍)と収益伸長を続けた。
主要地域別セグメント別では日本が売上高90.62億円(36.3%増)、営利28.65億円(65.2%増)と大幅伸長した。製品としてはCMP製品、シリコンウエハ向け製品の販売が好調に推移した。アジアは売上高69.84億円(20.9%増)、営利12.72億円(42.9%増)とTSMCを中心とする先端ロジックデバイス向けCMP製品、HDD基板用製品が増加した。
製品別動向ではシリコンウエハ向けが52億円推定(56%増)と、シリコンウエハ出荷面積の回復が寄与した。内訳はラッピング19.66億円(75.8%増)と、原材料の高騰分を製品価格に転嫁したこともあり高い伸びに。ポリシングは32.99億円(47.9%増)と、ユーザーの稼働率回復が寄与した。また全体として円安も大きく寄与している。CMP向けは売上高230.35億円(16.3%増)。AI向け先端ロジックデバイスやメモリ向けも拡大、但しPCやスマホ向けが力強さを欠いており地域的にはばらつきがある。機能材・溶射材は21.70億円推定(21.2%増)で、半導体製造装置向けが堅調なほか、各種用途でも堅調な伸びに。金額は小さいがディスク向けはデータセンタ向けの需要が寄与し6.55億円(48.5%増)に。
25/3期18.8%増収29.1%営利増予想は営利Q3累計進捗率85%と高く上振れ期待高まる
25/3期予想は9/20の増額修正予想を変更せず、売上高611億円(期初計画比64.0億円増額、18.8%増)、営利106.5億円(同21.5億円増額、29.1%増)、経常利益111.5億円(同24.5億円増額、24.5%増)、税引利益83.5億円(同18.5億円増額、28.5%増)予想とした。
用途別ではシリコンウエハ向けの増額が大きくなっている。但し、同社は25/3H1で期初計画比売上高が35.46億円上振れ、営利で16.02億円上振れている。9/20の修正予想比で売上高4.46億円、営業利益で4.52億円上振れて着地しているにもかかわらず通期予想を変更しなかった。そのような中で25/3Q3累計売上高が76.6%の進捗率、営業利益では85.0%の進捗率となっている。このため、利益については上振れの期待がある。
用途別に25/3Q3累計での売上高進捗率では、シリコンウエハ向けが77.2%、CMP向け77.0%、ディスク、機能材・溶射がほぼ75%となっている。現状、シリコンウエハ加工面積での回復が緩やかながら継続、先端デバイスではTSMCの売上高が拡大している。このため、主力2用途向けが上振れる可能性が高い。
営業利益の増減要因(82.51億円が106.50億円)分析では、増収効果で49億円、ラッピングなどの売価改定で2.5億円、為替円安で1.36億円のプラスに対し、経費増14.91億円、人件費増7.5億円、生産用消耗品評価減7億円などの減益効果を想定している。期初計画(82.51億円が85億円)では増収効果で14.36億円、売価改善1.9億円、為替0.2億円に対し、経費増8.5億円、人件費増5.0億円などを減益要因としていたことから、基本的には売上増額修正効果64億円が利益増額34.64億円増に大きく寄与する見通しとしている。
現状、25/3Q3累計で利益の進捗率が高く、売上が主力製品で上振れ期待があり、しかも為替前提よりも若干円安に推移しており、25/3期収益は売上増額以上に利益上振れが期待される。
新中長期計画で26/3期売上高770億円、29/3期売上高1000億円、各営利率20%目指す
同社は2023年5月に中長期経営計画2023を策定、収益性確保を図りつつ、2030年に連結売上⾼1,000億円を⽬指す計画を公表した。その中で重要施策として、研磨材メーカーからパウダー&サーフェスカンパニーへの進化を実現する新規事業の創出、半導体関連事業の強靭な基盤構築と次世代半導体向け材料分野での圧倒的な地位確⽴、コア技術の発展と新技術の開発を掲げた。
現状、24/3期はPCやスマホの伸び悩みなどが影響、会社計画に対し大幅未達となった。しかし25/3期は期初計画に対し大幅増額修正見通しとなり、売上面では24/3期計画に対し上振れ、営業利益は24/3期中計計画に対し18.5億円未達予想にとどまっている。26/3期についてはAI半導体向けの更なる拡大が見込まれ、最大需要家のTSMCの収益拡大の加速が見込まれる。またウエハ需要についても緩やかながら回復が始まっており、26/3期下期には需要回復が本格化しよう。さらにEV伸び悩みで設備投資の見直しからSiC向けが期待を裏切っているものの、26/3期は日本勢の設備増強が本格化するなどの動きがある。さらに同社は、研磨材等の製造・販売事業を承継させた南興セラミックスを連結子会社化した。南興セラミックスは、1946年の創業以来、研磨材の専門メーカーであり、22/11期は売上高18.16億円を計上しているが、26/3期には収益にオンされる。また需要拡大に対し、各務山新工場を建設中で25年末竣工、シリコン、CMP生産能力の拡大を行うほか、米国でも既存工場内に新棟を建設、25年末に設備設置完成予定となっている。また台湾では建屋増設が完了、CMP生産設備の導入を行い、26年生産を開始予定となっている。このように、M&A効果や能力増強投資の実行もあり、26/3期は中計予想に対し売上面では計画線に戻ることが期待される。また利益面では原価高影響が残るとみられるものの、営利率20%にかなり近づけるとみられる。
株価は先端半導体向けで恩恵のある企業として24年3月5日には3940円高値まで付けた後、24/3期が一転収益低迷となったことで25/3期予想が増収増益予想も23/3期に対し利益が戻らない予想となったことから9/20の増額修正発表後も継続的に下落、25年3月7日には1985円と高値の約半値、2000円大台を割り込んだあと、2000円台回復の状況にある。現在25/3期予想EPS112.56円に対しPER18.5倍はプライムガラス土石15.7倍に対し若干割高の水準、同社安値平均PER16.5倍に近い。今後、25/3期増額着地が見込まれ、26/3期については収益の本格回復、中計見通しへの回帰も期待される。先端半導体の微細化でのニーズが高まるとみられること、最大手需要家がTSMCであること、さらにSiCを中心とする化合物半導体向けについても需要回復が見込めることから、高値平均PERでは28.1倍まで買われた銘柄でもあり、新規にややポジティブとして評価したい。
*図表は統合報告書、決算説明会資料から添付もしくはIRユニバースで加工
(H.Mirai)
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