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アドテックプラズマテクノロジー(6668)25/8Q2決算メモ 25/8Q2好調でポジティブ継続

25/8期中国半導体製造装置向け拡大で8.0%増収27.2%営利増予想、

株価(4/18)1094円     時価総額94億円   発行済株8,586千株

PER(DO25/8期予:7.2X) PBR(0.75X)配当予22円 配当利回り2.0%

 

要約

・25/8Q2は47.6%増収、営利2.4倍、経常5.4倍、受注65.7%増と中国向け拡大し収益上伸

・25/8期中国中心に拡大続くも米中摩擦等考慮し8.0%増収27.2%営利増予想据え置き

・創立40周年迎え5年後先端半導体向け高周波電源にDC電源等加え売上高400億円目標

25/8Q2は47.6%増収、営利2.4倍、経常5.4倍、受注65.7%増と中国向け拡大し収益上伸

 

 25/8Q2決算が4/11に発表され、4/18に説明会が実施された。25/8Q2は売上高62.90億円(計画比1.90億円上振れ、47.6%増)、営業利益4.51億円(同0.53億円未達、2.4倍)、経常利益7.00億円(同4.42億円上振れ、5.4倍)、税引利益9.90億円(同3.90億円上振れ、12.4倍)、受注37.01億円(65.7%増)と中国向け半導体製造装置向け拡大で収益大幅回復に。

 

 部門別に半導体・液晶関連事業が売上高27.95億円(28.6%増)、営業利益4.29億円(2.5倍)、受注高35.81億円(68.8%増)、受注残高55.75億円(4.1%減)に。顧客所在地別売上ではAMATが中心の米国向けが4.28億円(19.6%増)、中国含むアジア向け16.99億円(39.5%増)と、中国向け中心に伸長、シンガポールASM向けも堅調、韓国はHBM関連好調も他が不調で微減で全体では中国が牽引。国内は5.72億円(4.8%増)と緩やかな回復に。利益面では増主効果に加え、ベトナム工場で板金加工などの内製化の取組み効果が出始め、高周波電源・マッチングユニット生産も稼働率が多少向上、円安もあり収益性が向上した。受注も中国中心に伸長し大幅回復に。

 

 IDX部門は売上高7.24億円(3.5倍)、営業利益0.02億円(0.05億好転し黒字転換)、受注1.20億円(7.1%増)、受注残3.66億円(61.4%減)と、医療装置向け納期期ずれ分の納入があり売り上げ大幅増も、低採算案件で利益寄与はほとんどなかった。なお受注は医療向け等微増も金額は振るわず。

 

25/8期中国中心に拡大続くも米中摩擦等考慮し8.0%増収27.2%営利増予想据え置き

 

 25/8H1が計画比上振れしたものの、米中摩擦などを考慮し25/8期予想は変更せず、売上高122億円(8.0%増)、営利18.9億円(27.2%増)、経常利益18.0億円(11.6%増)、税引利益13.0億円(7.1%増)予想を据え置いた。けん引役は中国半導体製造装置メーカー向け受注拡大で、国内は半導体製造装置向けに加えオプトラン向けにスマホCMOSセンサ向け蒸着装置、スパッタ装置向けなども受注が入り緩やかに回復した模様。米国は関税問題もあり一時的に受注見送りとなっているが、売上については製造装置メーカーが30%を占める中国向けの減少を他地域への出荷で賄い、全体としては横ばいから微減にとどまるとの情報を得ているとのこと。

 現状、半導体製造装置向け受注が拡大、部材不足による適正以上の受注残が解消となっており、現在は適正化し、韓国向けの一括受注分を除くと受注残高が50億円程度と適正規模になっているとのこと。生産面ではQ3について現有のベトナム工場の生産キャパにおいて4000台を超えるとしている。米国向けの不透明さはあるものの中国向けの好調が続いており、会社計画に対し営業利益は多少上振れが見込める。一方、IDXについてはバイポーラ電源などの量産を踏まえ、3/1付けでIDXの量産開発業務について人員を含めアドテックに移管集約した。集約品目としてバイポーラ電源マイクロ波システムなどの量産品。IDXは医療器加速器や粒子線、研究用加速器などの一品製品に限定、アドテックで量産することで収益の拡大を加速させる。具体的に25/8期会社別収益予想は開示していないものの、25/8期IDXは非量産品で売上高12~13億円、アドテックに移す量産品が2~3億円となる模様。

 全体として高周波電源の稼働率アップ、Q3の受注がQ2比で減少し、Q1の25億円弱程度となり、Q4も同程度に推移するとしており、納期正常化で2Q受注分はQ3で売上計上、Q3受注分も年度内納入が可能とのこと。このため下期半導体・液晶関連で60億円の売上は見込めよう。利益面では4月に価格改定効果もあり、下期の営利で多少増額が見込めるものの、為替円安一巡で経常利益は計画線に落ち着くとみられる。

 

 

創立40周年迎え5年後先端半導体向け高周波電源にDC電源等加え売上高400億円目標

 

 同社は今年1月、創業40周年を迎えた。これを機に今回、成長戦略として5年後の目指すべき姿として連結売上高400億円、生産キャパ3倍、設計キャパ2倍、そして海外売上比率80%、新量産品の売上比率30%確保を掲げた。具体的に今後の取組としてベトナム生産人員の増強と育成、生産効率向上と高品質化の実、RF測定装置の開発及び顧客提案強化、大手装置メーカーへの高付加価値製品の提供、バイポーラやリモートプラズマ、マイクロ波システムなど非高周波製品の拡大などの取組を行うとしている。

 


 中でも中核となるのはMarkVシリーズにある。従来のシステムと比較して電力制御速度を1000倍以上に高速化し、毎秒100万回以上の制御と業界最速レベルの電力制御頻度を実現、プラズマ状態の急峻な変化に高速応答が可能となり、安定したプラズマ放電を実現できるとしている。またこのシステムは、従来機の一部アナログ制御とは異なり、「高速フルデジタル制御」を採用、高周波電源、インピーダンス整合装置、周辺計測機器の全てに共通利用可能な基幹制御システムとして開発されており、システム全体の応答性向上、同期精度の改善、インテグレーションの簡素化が期待できる。

 

 またAB級リニアアンプ(常時動作し歪が少ないが高率が低いA級アンプと入力信号の半分だけを増幅し高効率であるがクロスオーバー歪がでるB級アンプのバランスをとって歪を抑えつつ効率を向上させた)を採用することで負荷インピーダンスの変動が大きい(反射電力が高い)プロセスでも安定した電力供給が可能となっている。また最新のCPU搭載で応答性が向上しており、EtherCaTなどの高速通信方式にも対応できるなどの特長を有する。これらを総合して競合するAEI社やMKS社、ダイヘンなどにも優位性を発揮できるとしている。既に半導体製造エッチング装置大手各社が評価中で、現在は世界的に採用されている工業周波数13.56MHzで出力5kWと1kWを製品化しているが、年内には3kW品も開発中で、その他も年内にはシリーズ化する計画で、2~3年後のモデルに本格採用されるとみている。特に高アスペクトエッチングや原子層堆積/エッチング(ALD/ALE)の様な高速でガスを切り替えや電力変調を伴うプロセス、欠陥や膜質均一性に対する要求が極めて厳しい成膜プロセスなどの最先端デバイス製造に優位点を持つだけに、大きな成長を見込んでいる。

 

 現在想定される動きとしては、東京エレクトロン向けやアプライドマテリアルズ向けなどにエッチング用Mark-5RF電源の新機種がベトナム工場拡張で対応が可能となり、26/8期に新機種向け大型受注獲得が視野に入る。具体的には次世代エッチング技術として東京エレクトロンが2023年にリリースし、2026年から量産予定としているクライオジェニックエッチングに注目が集まる。同技術は従来のドライエッチングに比べて極低温プロセス(マイナス数十度にも至る極低温プロセスで、ウエハ温度を従来よりもずっと低く保つことが可能となり高速かつ精密なエッチングを実現)、高アスペクト比(深さ10μm以上の穴を、従来比2.5倍の速度でエッチング加工でき、400層を超える積層構造にコンタクトホールを形成することが可能)、低消費電力(従来比40%以上の低消費電力化)、環境負荷低減(CF系ガス使用を91%削減、HFガスに置き換え80%以上のカーボンフットプリント削減)など。この技術は主に3D NAND型フラッシュメモリの製造に有効も、すべてのデバイスに適用可能性がある。 同社としては高周波電源全体でMarkV5シリーズ化を中心に、レガシー向け、計測器などを含め、280億円の売上規模を見込んでいる。

 

 もう一つの柱としているのが新量産製品のビジネス化で、売上高比30%、120億円規模を目指す。具体的にはバイポーラ電源、リモートプラズマ、マイクロはシステムなどで、3月にIDXから移管した製品群の量産が中心となる。具体的にIDXは同社のRFとは異なる補完的な電源技術に強みを持っており、直流安定化電源、バイポーラ電源、パルス電源、マイクロ波発生器、マイクロ波コンポーネント(オートニューナー、導波管などを手掛けている。この中で今回、研究機関、医療分野、特殊産業プロセスを除き、量産機種を同社に移管した。バイポーラ電源について1品目、DCパルス電源については2品目、マイクロ波応用システムについてもユーザーが評価中であり、早晩、量産発注が見込まれる。具体的に直流バイポーラ電源では30kW製品が民生用光学系に採用の方向で、26/8期には本格量産で売上拡大が見込まれる。

 

 また2017~2018年度頃に半導体製造装置に付着した微粒子除去するプラズマ装置として一度市場投入したものの、その後断念していたリモートプラズマについても同製品を取り扱う大手と協業して再参入する。リモートプラズマは特に注目されるのが、同社がRFで一般的に採用している13.56MHzではなくIDXの2.45GHzマイクロ波を使ったマイクロ波ソリッドステート合成器で戦略的再注力とみられる点。リモートプラズマの多くはRFを利用しているが、マイクロ波プラズマは特定の条件下でより高密度のラジカル(反応性の高い化学種)を精製できたり、電子温度を低く抑えられたり、特定のガス化学反応に対し高効率だったり利点を有する。

 

 同社はこれらの利点を生かし、競合他社(特にリモートプラズマでは米アドバンストエナジー社が高いシェアを有している)との差別化を図り、特定市場やニッチ市場の応用分野を開拓するとみられる。なお他社と協業するのはリモートプラズマシステムが複雑性、多様な応用範囲へのアクセスに対するか課題があるため。具体的には同社が中核となる電源技術を提供する一方で、外部パートナーがガス供給、真空系、チャンバー、制御、プロセス最適化などのシステム全体の構築を行うとみられる。現在、リモートプラズマはデバイスの微細化に対応し、High-k/Low-k絶縁膜の様に新しくデリケートな材料が導入される場合にダイレクトプラズマにおけるイオン衝撃、チャージアップ、紫外線照射などのデバイスダメージが深刻な問題となる中で、主に反応性ラジカルを供給することでこれらのダメージを大幅低減するために利用されてきた。

 

 また特定の化学プロセスを高選択制且つ精密制御することを可能にし、従来のガスパージで除去困難な汚染物質除去にも利用されている。しかも今後はダイレクトプラズマが適さない先端プロセスを実現するために重要な手段としての地位が高まりつつある。具体的には3次元集積化ではダイレクトプラズマではイオン衝突やチャージング効果により3次元構造や材料にダメージを与え可能性が高い。一方、リモートプラズマでは反応種をリモートで生成することでダメージを抑制できる。低ダメージエッチングだけでなく、3次元で必要とされる敏感な層への成膜、ハイブリッド接合など中工程の先端パッケージの表面処理などへも応用が広がりつつある。具体的には2024年12月にリモートプラズマ用マイクロ波システム開発が完成、26/8期後半に量産開始、27/8期に本格拡大を目指す。なお現在、協業先は開示されていないものの、例えば最大手ユーザーであるASMなどであれば、自社のALD(原子層堆積)装置おいてRFリモートプラズマチャンバークリーン機能を備えたEmerALDXPなどがある。同社が新たなマイクロ波ベースのリモートプラズマソースを提供することは製品の高度化に寄与することになる。いずれにしても協業先とのコラボレーションで、新量産分野ではリモートプラズマ中心に120億円達成の実現が期待される。

 

 全体を通じ、先端半導体製造装置向けの拡大に加え、次世代光学薄膜製造装置向け、IDXから移管したマイクロ波技術の応用拡大などで、5年後の29/8期に売上高400億円達成はかなりハードルが高いとみられるが、現状の3倍程度のクリアは十分可能と思われる。

 

 株価は10/11の本決算で7/12修正予想に対し未達成、しかも25/8期予想がコンセンサスに達せず期待外れとなったことで10/10の終値1918円から急落、10/17の説明会でも先行き不透明との説明があり、12/23には安値1182円まで下落した。その後1/10発表の25/8Q1が好調だったことで反発、2/17には1528円まで戻した後、トランプ関税などで影響が大きいとの懸念で急落、4/12の25/8H1決算発表手前の4/10には年初来安値1000円を付け、その後25/8H1で増額修正がなかったことで大きな戻りがない状況で推移している。現在、25/8期会社予想EPS152.01円に対しPER7.2倍は東証スタンダード電機平均PER13.6倍に対し割安感がある。また高周波電源国内最大手のダイヘンの11.9倍に対し割安、京三製作所6.4倍と似通った水準にある。現状、受注は同期比増が明確となり、今回40周年を経過し5年後売上400億円目標を打ち出したこと、既存に加えIDXから量産品の移管を行い、今後、本格的な事業拡大が見込める。現在、トランプ関税問題、米中の半導体問題などが懸念材料としてあるが、プラズマ電源大手は世界で6~8社寡占であり、このうち2社が米国で1、2位を占めている。このため、米国から中国への輸出が途絶える可能性もあり、日本勢からの供給が増える可能性がある。またプラズマ電源は中国ローカルメーカーが技術的に大きく遅れているため、製造装置向けは日、欧、韓に頼らざるを得ないとみられ、同社のへの追い風となる見通し。このような状況から、同社株価は悪材料を織り込んだと判断、最高益更新については27/8期にずれるとみられるものの26/8期以降、収益急拡大期待がありポジティブ継続としたい。

 *図表は決算説明会資料、カタログより添付もしくはIRユニバースで決算数字に基づき加工

 

*電源競合のダイヘン(6622)、京三製作所(6742)との比較

 

 

(H.Mirai)
 
 

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