インドネシアのEV電池事業、韓国LG撤退の後に中国華友コバルト 住友の撤退劇再び
インドネシアのエネルギー鉱物資源省(EMR)は4月23日、ホームページ上で、「韓国のLG エネルギーソリューションが撤退した同国の電気自動車(EV)向け電池材料事業は、中国の浙江華友コバルトが引き継ぐ」と発表した。インドネシアの事業は、過去には日本勢の撤退の後に中国企業が入り込んだケースがあり、中国勢の浸透が進む。
■LG、グループ全体でEV見直し
今回の変更の対象となるのは、ニッケル鉱山の運営から製錬所、前駆体生産までを一貫して運営するEV電池材料のサプライチェーン(供給網)の共同構築事業。日本経済新聞などは4月24日までに、LGエナジーが同事業からの撤退を明かしたと伝えた。
LGとインドネシア政府は、2020年に同事業での協業で合意していた。この事業はインドネシアが計画する98億ドル規模のEV投資プロジェクトの一環で、韓国勢はこのプロジェクトの一部として、既に2024年から西ジャワ州カラワンのインドネシア初のEVバッテリーセル工場の運営に協力している。
しかし、LGは現在、世界的なEV減速を受けてグループ全体でEV事業を見直している。韓国内では、系列のLG電子が新事業として育成してきたEV充電器子会社を清算すると発表した。LGエナジーの今回の撤退は、この流れの一環だった。
■住友の時も華友が後釜、撤退発表後すぐに決定
他国企業の撤退後に中国企業が入り込むケースでは、2022年の住友金属鉱山のスラウェシ島ポマラ地区でのニッケル製錬所の建設プロジェクトからの撤退劇が想起される。住友側は2012年からの事前調査を含め10年もの歳月をこの案件に費やしたが、最終段階でインドネシア側と折り合わず、撤退。後にはやはり、華友コバルトが入り込んだ。その後は米フォードやブラジルのヴァ―レなども加わり同事業を進める。
関連記事:中国の華友コバルト、インドネシアMHP工場の建設進展か フォード、ヴァ―レと協業 | MIRU
インドネシアは世界最大のニッケル埋蔵量を誇るが、その生産・加工システムには中国企業が深く入り込んでいる。
関連記事:中国企業がインドネシアのニッケル精錬能力の約75%を支配 | MIRU
今回も、LGの撤退が伝わったのとほぼ同時に華友の引継ぎが発表された。住友金属鉱山の時も、華友が新パートナーとして発表されたのは住友側の発表から3日後だった。インドネシア側が、提携相手の変心を感じ取るやいなや中国側に打診し、中国側も虎視眈々とチャンスを狙っている様子がうかがえる。
(IR Universe Kure)
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