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ローツェ(6323) 25/2期決算メモ 26/2期実質最高益更新でややポジティブ継続

25/2期33.4%増収30.9%経常増は中国と先端半導体向け好調でM&A費用増でも最高益

株価円(4/25)1507円   時価総額2659億円   発行済株17640千株 

PER(DO26/2期予:11.3X)PBR(2.3X) 配当(26/2予)17円  配当利回り:1.1%

 

要約

・25/2期33.4%増収30.9%経常増は中国と先端半導体向け好調でM&A費用増でも最高益

・26/2期は3.0%増収ながら5.2%営利減予想もNV社負担フル分除き実質営利最高益更新

・27/2期NV社の負担が大幅軽減、ローツェイアスの収益拡大、FPDも拡大し収益上伸期待

 

25/2期33.4%増収30.9%経常増は中国と先端半導体向け好調でM&A費用増でも最高益

 

 4/11に25/2期決算が開示され、4/14にWEB説明会が実施された。25/2期は売上高1244.06億円(期初会社予想比36.22億円増額、33.4%増)、営業利益320.24億円(同4.07億円上振れ、32.7%増)、経常利益354.54億円(同39.36億円上振れ、30.9%増)、税引利益236.34億円(同7.18億円上振れ、20.7%増)、受注1100.81億円(23.3%増)、受注残588.63億円(8.0%減)と営業利益はM&Aコストで上振れが小さいが、円安で為替差益が5.98億円増加し、経常利益では上振れ幅が拡大、24/2期を抜き売上では初めて1000億円超え、またすべての利益で23/2期を上回り最高益更新となった。

 

 なお下期に連結子会社化したNV(Nanoverse Technologies,Ltd)社の連結業績への影響額が営業利益で30.58億円(のれん償却額14.25億円、営業損失16.33億円)を含んでおり、買収時点で売上規模が0.52億円とほとんどなく、25/2期でも売上寄与は無視できる水準で、この影響を除くと営業利益は350.82億円(45.3%増)、経常利益385.12億円(42.2%増)、税引利益256.34億円(30.9%増)となる。また税引利益ではライフサイエンス事業の減損損失で特別損失として21億円を評価損として計上したため、増益率が低くなっている。

 

 ちなみにNV社は2022年7月に米国オレゴン州で設立されたベンチャー企業。事業内容は半導体、FPD、自動車、航空宇宙などのハイテク産業向けにレーザ加工とプロセス計測における革新的なソリューションを提供するために設立された。特にアドバンストパッケージ分野に重点を置いており、新しい半導体製造装置の開発に注力している。NV社は、特許に裏打ちされた独自のレーザ加工技術およびプロセス計測技術(ヘテロダイン光学分光法、エリプソメトリー、干渉法)を保有している。特許として「Heterodyning optical phase measuring device for specular surfaces(鏡面用ヘテロダイニング光位相測定デバイス)」 は、回転する構造化光を拡散面経由で鏡面サンプル(ガラスなど)に投影し、反射光をヘテロダイン位相計測で分析して3次元形状を算出するシステムに関するもの。ヘテロダイン方式を用いて「鏡面」(光沢のある表面)の測定に焦点を当てている点が特に重要で、アドバンストパッケージで用いられる多くの材料や構造(研磨されたシリコン、金属配線、ガラス基板など)は鏡面であり、従来の光学計測技術では測定が困難な場合が多いが、この特許技術はこうした課題に対処できるとのこと。

 

 この技術とレーザ加工を組み合わせ、アドバンストパッケージで用いられる扱いの難しい材料や構造(薄型ウエハ、ガラスインターポーザ、微細な再配線層(RDL)など)を同一プラットフォーム上で加工し、かつ計測する統合システムが実現できるとしている。現在NV社は評価機を半導体メーカーに納入、その後認定を得た上で、27/2期には本格的な製造検査装置の販売を行うとしている。同社はNV社株式33%を約111億円で買収、実質支配力基準で連結子会社化し、のれんが91.12億円発生、これを3年間の短期で均等償却することとした。また売上計上がほぼないため25/2H2ではNV社の半期営業損失分15億円が発生する。同社は損益連結を25/2H2より始めるため、25/8期はのれん償却額14.25億円、NV社営業損失16.33億円、合計で30.58億円が25/2期連結営業利益から差し引かれるとした(26/2期はフル寄与で合計60億円の営業損失計上予定)。

 

 セグメント別では半導体・FPD関連事業が売上高1023.68億円(計画比38.48億円上振れ、34.0%増)、営利329.52億円(33.9%増)、受注1093.95億円(23.8%増)、受注残588.51億円(7.8%減)となった。内訳は半導製造装置関連が売上高1023.68億円(計画比0.31億円未達、29.7%増)、受注988.03億円(24.3%増)、受注残528.34億円(6.3%減)となった。主力ユーザーのAMAT向けが240.18億円(9.9%増)と先端半導体製造装置向けに堅調な伸びを示し、米国向け全体では329.24億円(20.7%増)となった。また中国向けが中国ローカル向けに伸長、427.90億円(63.7%増)と全体をけん引した。台湾向けは従来TSMC向けの開示があったがOSAT向けなどTSMC以外への納入も増えたとみられ、全体では176.00億円(25.7%増)と先端パッケージ向けなどが寄与した模様。韓国向けはHBMなどの増産もメモリ全体では伸び悩んだ模様(韓国向けはFPDが大幅増で、これを除くと減収となった模様)。分析装置はグループ入りしたイアス社分であり、全自動気層分解(VPD)装置中心に売上高34.25億円(期初計画比4.16億円未達、10.5%増)、受注30.92億円(42.0%増)、受注残34.20億円(8.9%減)となった。FPD関連装置は売上高85.93億円(同20.82億円上振れ、2.3倍)、受注74.98億円(12.0%増)、受注残25.95億円(29.7%減)と、韓国向け大型受注が寄与した。なお半導体・FPD関連装置全体の地域別では何れも高い伸び、特に中国向け構成比が6.3ポイント向上し34.7%にまで高まった。

 

 ライフサイエンスは売上高10.74億円(計画比2.26億円未達、12.0%減)営業利益1.22億円(3.2%減)、受注6.86億円(28.2%減)、受注残高0.12億円(90.6%減)と低迷続く。

 

 全体の利益面では半導体関連装置、FPD向けの増収効果で135.38億円、為替で8.22億円の寄与があった一方で、人件費増24.65億円、のれん償却14.42億円、その他販管費増23.41億円のコスト増という内容。増収効果で売上総力率が2.1ポイント向上し39.9%まで高まった。但し、この営業利益の増減要因の中で、NV社連結によるコストが30.58億円(のれん償却14.25億円、NV社営業損失16.33億円)含まれており、NV社の売上がほとんどないとみられることから、従来の同社収益としては営業利益で350.82億円(前期比45.3%増)、営業利益率は28.2%と表面上の25.7%に対し2.5ポイント上回っており、前期比2.3ポイント向上したことになる。

 

 なお四半期収益推移では中国向けが25/2Q1をピークに減少に転じている一方、台湾向けが急回復しつつあるなど、ここにきて先端半導体向けの拡大の寄与が高まっているようにみられる。

 

26/2期は3.0%増収ながら5.2%営利減予想もNV社負担フル分除き実質営利最高益更新

 

 26/2期会社予想は、売上高1281.90億円(3.0%増)、営業利益303.45億円(5.2%減)、経常利益306.18億円(13.6%減)、税引利益234.99億円(0.6%減)予想と、先端半導体設備投資拡大を受けて増収予想もNV社負担がフルに影響、この影響が営業利益で60億円分(25/2期は半期分で30億円)コスト負担増となるため、実質は営利4%増で連続最高益、経常利益は円安一巡を考慮して実質5%減、税引利益は特損がなくなり実質15.5%増予想で連続最高純益更新予想となる。

 

 ところで部門別では半導体・FPD関連で売上高1266億円(2.6%増)、内訳は半導体関連が1068.93億円(4.4%増)、FPD関連65.5億円(23.8%減)、分析装置41.63億円(区分変更5.5%増)、部品修理89.92億円(区分変更6.8%増)予想とした。またライフサイエンス15.9億円(48%増)を見込む。

 

 同社の半導体関連装置の主力ユーザーは半導体向けでAMAT、TSMC、マイクロン、FPDでサムソンなど。26/2期はFPD向けでは25/2期に一部前倒し納入があり減少見通し。分析装置は緩やかな成長を見込む。主力半導体関連は、トランプ関税問題で半導体製造装置について相互関税を掛けない方針を暫定として打ち出したため、現状、部品などのサプライチェーンの混乱が懸念されるものの、米国に半導体製造装置大手が存在していることから暫定処置のまま推移する可能性があるとして、大きな影響はないと判断している。このため、AMAT向けも堅調な伸びが期待される。また中国ローカル向けが25/2Q1をピークに減少に転じているが、半導体製造の自前主義化の継続があるとの判断で、中国半導体製造装置メーカー出荷額が2024年の410億ドル(37%増)に対し380億ドル(7%減)程度と、大きく落ち込むことはないとみられる。一方、AI半導体では先端デバイスの更なる拡大、前工程に加え、中工程、いわゆるアドバンストパッケージ製造に伴う新規需要も拡大するとみている。アドバンスドパッケージ用装置では、シリコンウエハ上でパッケージングする中工程が発生、複数のウエハを3Dに積層するが、高性能化にはウエハを薄くしてTSV(竪穴形成)技術を介し積層数を如何に増やすかがポイントで、中工程搬送システムの需要が高まる。また異種デバイスの積層化や3DNAND以外で2.5D構造など、先端デバイスの多様化も進んでいる。台湾向けについてはTSMCが2025年380億ドル~400億ドルの多額の設備投資を計画しており、過去の同社TSMCへの売上推移から、26/2期はTSMCだけで100億円を超える売上が期待される。また台湾向けではTSMCに加えOSAT向けの伸長もあるとみている。なおアドバンストパッケージ向けではNV社装置は評価機出荷に止まるため、26/2期での売上貢献は見込んでいない。

 

 全体を通じ、AI半導体の更なる伸長、とりわけTSMCの業績好調、AI半導体についてはOSATへの拡大などが見込め、中国向けが多少減速も、会社計画は十分達成可能で、売上、営利については多少の上振れが見込める。但し為替前提が1$=152円前提のため、営業外で為替差益が減少、経常利益では会社計画並みの収益が見込まれる。

 

27/2期NV社の負担が大幅軽減、ローツェイアスの収益拡大、FPDも拡大し収益上伸期待

 

 27/2期についてはAI半導体向けの拡大が続く見通しの他、NV社については開発装置の納入による売上増加を見込んでおり、売上高が本格的に立上り、営業利益で約12億円の黒字転換を予想(但し評価機納入が多少遅れているようで、営利12億円達成は難しいとみられ営収支トントン程度に落ち着くとみられる)、のれん償却を含めると赤字継続となるものの、赤字幅が大幅縮小予想となる。半導体関連事業はAI半導体の一段の量産化、それに伴い、AMATの収益も一段と拡大見通し。さらにTSMCの設備増強もグローバルに拡大が続く見通しで中国向けの停滞があっても、同社半導体関連事業の拡大が続こう。FPD事業については次世代パネル需要などで投資の回復が見込まれ、緩やかながら収益回復が見込まれる。さらに分析装置については、買収したイアス社の売上の本格拡大が期待される。

 

 具体的にイアス社は25年3月にローツェイアス社に社名変更、主要顧客向け販売・サービス業務のグループ内への取込み、装置内の搬送機構をローツェ製品に置き換えも完了した。そして新製品のLAGM/Expert LAはウエハ含有異物検査能力が高く評価され、LSTC(ラピダス含め16機関が参加する先端半導体研究および半導体人財育成をけん引する組織)等に納入されている。この全自動VPD装置(自動気相分解装置)はSiウエハ中の金属不純物をICP-MS(誘導プラズマ質量分析法:溶液に含まれる元素濃度を高感度、多元素同時に分析できる装置)で自動分析するための前処理装置として開発されたもの。LSTCは2nm世代及びそれ以降の最先端ロジック半導体技術の研究開発を推進する中核拠点であり、この目標達成には、GAA(Gate-All-Around)トランジスタのような新構造の導入、EUV(極端紫外線)リソグラフィ技術の高度化、新規材料の評価、そして何よりも製造プロセス全体を通じた超微量汚染の徹底的な管理が不可欠となる。具体的に2nm以下の微細プロセスでは、ウエハ表面のppb(10億分の1)レベル以下の金属汚染がデバイスの性能や歩留まりに致命的な影響を与えるが、Expert LAは300mmウエハを前処理なしで直接分析し、表面全体の金属不純物をppbレベルで検出・定量できる。また従来の湿式分解法(VPD-ICP-MSなど)と比較して酸処理などによる二次汚染のリスクがなく、ウエハ全面の汚染分布をマッピングでき 、プロセス装置由来の汚染源特定や受入ウエハの品質保証に極めて有効となるため、LSTCが目指すクリーンプロセス技術開発に直接貢献する。

 

 加えてBeyond 2nm世代では、シリコン以外のチャネル材料、新ゲート絶縁膜、配線材料など、多様な新規材料の導入が不可欠で、これらの材料は従来の分析手法では評価が困難な場合があるが、Expert LAは、SiCやGaNなど難溶解性材料の直接分析で実績があり応用範囲の広さが認められたものと推測されるが、特にMSAG(金属標準エアロゾル発生ユニット)を用いた標準添加法により、組成が完全に一致する固体標準物質が入手困難な新規材料に対しても信頼性の高い定量分析が可能である。以上のように 先端ロジック開発において必要不可欠な分析装置となるとみられ、今後の研究所での採用に加え、27/2期には量産工程でも使用されるとみられ、シナジー効果も含め、収益の急拡大が期待される。

 

 このように、27/2期についてはAI半導体向けの伸長、NV社の営業黒字転換と売上寄与、ローツェイアス社の収益拡大が相まって、収益上伸が期待される。

 

 株価は昨年4/11の24/2期好決算を受け上昇、7/8には3530円の昨年高値を付けた後、好材料出尽くし、NV社買収表明で当面の収益が伸び悩む懸念などで下落を始め、9/1に1対10の分割後は材料出尽くし、半導体関連株の下落もあり同社株価も下落した。今年の4/11の25/2決算発表前の4/7には966円と昨年来安値更新となり、4/11の発表で25/2期が上振れ、1円増配、26/2期決算が想定ほどの減益予想とならなかったこともあり、多少反発した状況にある。現在、26/2期会社予想EPS133.31円に対しPER11.3倍はプライム機械平均PER15.1倍に対し割安であるが、タツモ(6266)の7.3倍に対して割高感がある。26/2期はNV社負担が通年影響し利益減益予想となるが、前向きなM&A費用を除くと実質的に連続最高益更新となる。また主力ユーザーがAMAT,TSMCなどであり、先端半導体に絡むビジネスの拡大が加速する見通しにあり、当面、NV社コスト増による減益を織込んだと判断、同社高値平均PER17.8倍に対しても大幅に下回っており、減益予想ながらややポジティブ継続としたい。

(図表はローツエ決算説明会資料から添付、TSMC,AMATは決算ガイダンス等から作成)

9/1に1:10の株式分割(EPS、配当は分割後ベース)

 

 

*タツモ(6266)、東京エレクトロン(8035)AMATとの比較

 

 

(H.Mirai)

 

 

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