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ファナック(6954) 25/3期決算メモ ややネガティブ継続 

25/3期0.2%増収11.9%営利増とコスト削減、円安もあり売上横ばいも増益確保

株価3706円(4/28) 時価総額36890億円 発行済株995418千株

PER26/3期DO予(25.2X)PBR(2.01倍)還元率60% 26/3DO予88円  配当性向2.4%

 

要約

・25/3期0.2%増収11.9%営利増とコスト削減、円安もあり売上横ばいも増益確保

・26/3期予想はトランプ関税問題などを受け会社予想開示回避、上期不透明で収益減速懸念

・27/3期は26/3下期からの回復、新製品群の寄与等で収益回復期待

 

 

25/3期0.2%増収11.9%営利増とコスト削減、円安もあり売上横ばいも増益確保

 

  4/23に25/3期決算発表、同日電話会議が開催された。25/3期は売上高7971億円(1/27増額修正予想比52億円増額、0.2%増)、営業利益1588億円(同65億円増額、11.9増)、経常利益1967億円(同63億円増額、8.2%増)、税引利益1476億円(同84億円増額、10.8%減)とFA、ロボマシン回復、サービス拡大でロボット不振も微増収を確保、円安、販管費の抑制等で増益着地となった。また受注は7961億円(16.3%増)に。

 

 四半期ではQ4が売上高2069億円(同期比4.1%増)、営利418億円(同21.2%増)と、23/3Q4以来の同期比増に転じたことで通期増収に転じ、利益面では固定費削減、円安効果で増益に転じた。

 

 地域別売上を見ると、米州2143億円(6%減)、欧州1427億円(15%減)と昨年度過去最高額を記録したところから円安ながら減収に。一方でアジアは1351億円(20%増)と過去最高額、中国1866億円(9%増)、日本も1092億円(4%増)と、欧米以外で健闘した。また四半期地域別でも同様な動きでQ4米州14.6%減、欧州23.1%減と3四半期同期比減少しているのに対し、中国30.6%増、アジア78.7%増、日本1.2%増と3四半期同期比増と同じ傾向となっている。四半期受注では全体で2114億円(同期比21.9%増)、全四半期で同期比プラスとなり、受注面では底打ちした形に。地域別でも欧州を除きQ1から全て同期比プラス受注となっており、BBレシオも1.02とQ3の1.02と並び、2四半期連続で1を上回った他、欧州もQ4では同期比横ばいまで改善した。

 

 製品別ではロボットが3296億円(13.5%減)と昨年度最高額から唯一減少した。国内では自動車関連向け、一般産業向け共に堅調で売上は14%増となった。しかしこれまで好調だった中国でのEV関連向け需要が下降気味で、一般産業向け電子産業向けも低調で売上が大きく減少した。欧米でも主に自動車関連向けの低調さが響き、売上が減少した。ロボマシンは1376億円(33%増)と反動減からの回復が目立った。FAは1948億円(8%増)と受注回復が寄与し増収に転じた。主力のCNCシステムが、中国及びインド市場での旺盛な需要に支えられて売上を伸ばし、特に中国では設備投資に積極的な産業からの需要が堅調、NC化率向上政策による補助金効果も寄与したとみられる。一方、国内や欧州では工作機械業界の需要が低調に推移した。サービスは1352億円(4%増)と堅実に伸ばし過去最高額更新となった。受注ではすべての製品で増加、FAが202億円(25%増)、ロボット3173億円(6%増)、ロボマシン1420億円(86%増)、サービス1327億円(4%増)は過去最高の受注額に。

 

 四半期売上推移では四半期を通じロボットが同期比減少、ロボマシンが同期比増加、FAはQ2より同期比増加、サービスはQ4に同期比減少に転じた。受注ではFA、ロボマシンが四半期全てで同期比増加、ロボットは在庫調整が進みQ3より同期比増加に。

 

 なお最大部門のロボットにおいてロボット工業会との比較では、従来、工業会よりも受注で高い伸びを示していたが2025年7~9月以降、四半期で工業会よりも劣る数字となっているのが気がかり。工業会の統計では2024年のロボット市場は全体的に低調で、特に欧米向け輸出が落ち込んだ。一方で、国内の自動車向けは比較的堅調であったとしており、同社の国内実績と一致する。工業会は2024年第4四半期に中国向け受注が7四半期ぶりに増加に転じアジア全体で底打ちの可能性があるとしていた。同社の通期大幅減収は、期後半の市場全体の動きとはやや異なり、同社の中国EV市場へのエクスポージャーの大きさや、特定の顧客・用途での不振が影響した可能性があるとみられる。

 

 利益面では収益性が高いと推定されるFA部門の比率が24.4%と1.8ポイント上昇、採算の良いとみられるサービスが0.6ポイントアップし17.0%となったことでMIXが良化、円建てが多いものの円安効果は間接的にあるとみられることなどから営業利益で増益を確保した。

 

26/3期予想はトランプ関税問題などを受け会社予想開示回避、上期不透明で収益減速懸念

 

 26/3期、工作機械業界、ロボット業界では、トランプ関税、自動車のEVに対する設備投資の見直しなどの影響が懸念される。一方では中国において引き続き工作機械のNC化率向上のために継続的な補助金政策、世界的には賃金上昇による省人化、自動化需要の拡大、半導体などでは微細化、AI半導体の拡大、防衛も含め世界的な防衛・航空・宇宙分野での設備増強が見込まれる。このような不透明な環境下であるため、会社側では26/3期収益見通の開示を取りやめた。

 

 足元では一部3月に前倒し納入などが行われた様子もあるが、一方で受注残高の納期先送り、また当面の受注見合わせ、関税負担の処理などにおいて米国向け輸出の一時停止など難題山積で、少なくとも26/3期の第1四半期については受注だけでなく出荷のついても減速が懸念される。但し、半導体についてはその重要性から相互関税をとりあえず実行延期としており、世界的なAI半導体需要の拡大は計画通りに拡大が見込まれる。EVについてはバッテリー大手の破綻がある一方で、BYDのように積極投資、グローバル展開加速の動きもある。さらに自動車ではHEVや高効率エンジン車等への見直し投資が期待できる。半導体については微細化の伴い半導体製造装置企業の設備投資、また微細なに伴う高精度工作機機械・複合工作機械など付加価値の高い工作機械の需要増が期待される。ロボットにおいてはファナックが従来手薄だった協調型ロボットへの拡大、ギガキャストなどん日対応した超大型ハンドリングロボットなどの需要拡大が期待される。このような環境下で、上期までは不透明感に伴う影響から収益停滞が懸念されるが、下期には新たな枠組みを前提に設備投資の実行がなされるとみられ、全体として26/3期は微減収、減益が懸念される。

 

27/3期は26/3下期からの回復、新製品群の寄与等で収益回復期待

 

 27/3期については、新たな世界経済の枠組みつくりの中で、世界的にサプライチェーンの再構築やリスク分散のための主要産業の分散設備等の実行が加速してこよう。このような中で同社はFAについてはai-Dシリーズサーボを投入、サーボシステムのエネルギー損失を10%低減、更にサーボモータの送り精度を2倍に向上させ工作機械の高精度化、加工サイクルタイムの短縮を実現、さらに小型化も実現している。同シリーズの投入で改めてCNC装置、ロボットの世界NO1企業として差別化された製品群の拡大により、実質的に価格改定効果が得られ利益率向上が見込まれる。改めて新生産革命の中核企業として収益拡大が見込まれるが、成長の中心はロボット事業とみられ、高シェアのCNC装置の構成比率は相対的に低下するとみられ、MIX悪化が継続する見通し。このため個々の製品の収益率を高めるものの総利益率の改善は小さいとみられ、利益の伸びは過去のような変化率とはならないと見られる。

 

 株価は24/3期決算発表で25/3期減益予想を開示したことからさえない展開となったが、四半期ごとに緩やかな増額修正を繰り返したことから徐々に持ち直した。しかしQ3は営利で同期比14.6%減となったこともあり4847円から急落、トランプ関税問題、円高などで全体相場下落もあり4/7には3038円の昨年来安値を更新、4/23の25/3期決算発表で上振れ着地したことから多少戻った状況にある。今回、26/3期予想を開示しなかったことから、当面、会社側の26/3期業績予想の開示があるまでは、全体相場に連動する動きとなろう。但し、トランプ関税の影響により企業の設備投資判断が遅れることは間違いなく、会社側からの予想は慎重なものとなるとみられる。現在、25/3期EPS157.31円に対しPER23.6倍はプライム電機平均PER22.2倍に近く、割高感はないが、安川電機の16.6倍、三菱電機17.3倍に対し割高となっている。現状、設備投資の遅延影響が上期では避けられないと判断、下期挽回できるとしても大幅な増収は見込みがたく、今後、会社アナウンスで営業減益予想懸念ありと考える。日本を代表するハイテク株ではあるものの、CNC装置で稼ぎ出した高収益体質から、ロボット売上構成比の高まりとともに製品ミックスの変化から27/3期も収益性の大幅回復は期待しにくい。また自動車産業への投資以上に半導体産業への投資が拡大する方向から、同社の成長スピードが半導体製造装置メーカーの成長スピードに劣後する見通しから、ややネガティブ継続と判断する。

(*営利増減は説明会資料より添付)

 

*安川(6506)、三菱電機(6503)、スイスABBとの比較

 

 

(H.Mirai)

 

 

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