錫価格が低迷 LME2ヵ月ぶり安値、米関税ではんだ向け需要の縮小警戒
錫価格が低迷している。4月上旬に急落した後、1か月近く立ち直れていない。米国のトランプ関税により、電子製品などの最終需要が鈍るとの警戒が根強く、市場のムードが冷え込んだままだ。相互関税の発動前にほぼ3年ぶりの高値に上昇していただけに、反動安の面もある。
■4月に3年ぶり高値も急落、再浮上できず
過去3か月間のLME錫価格の推移
ロンドン金属取引所(LME)の錫の国際価格は5月6日に3か月先物が$3万19250/tonと、2月中旬以来ほぼ3か月ぶりの安値を付けた。相互関税発表直後の4月9日に付けた$2万9600からはやや戻し$3万台を回復したものの、4月2日には$3万8175と2022年5月以来の高値圏に上昇していただけに、上値の重さが際立つ。
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■電子製品への関税警戒、供給も抑制
価格低迷の要因としてはまず短期的に、トランプ関税によって錫が中核材料として使われる電子はんだの需要が鈍るとの警戒がある。上海有色網(SMM)は5月6日付のレポートで、「米相互関税は一部で緩和が見られるとはいえ、AIチップや家電製品などでの関税引き上げリスクは未解決のままだ」と指摘した。
中長期的でも、世界経済の回復遅れから電子製品の需要も改善が遅れるとの懸念は根強い。取引先である電子メーカーが生産を減らし、錫の調達も手控えているとの見方がある。さらに中国の捜狐網の5月6日の報道によると、中国では環境保護的な意味から、当局によって錫の生産が抑制される動きも強く、供給も鈍りがち。需給がともに弱く、取引熱量が低下して価格が上向かずにいる。
このほかに、投機的な取引による乱高下もある。捜狐網は、「一部の機関投資家は価格変動を利用してレイアウトを作成し、将来の利益に賭けるためにポジションを増やしたり、短期的なリスクを回避するためにポジションを減らしたりしている」と分析した。米相互関税をきっかけに世界景気の先行き不透明感が高まる中、投機的なポジション調整の動きも強まりやすくなっている。政治的な好材料が出ない限り、錫価格が本格反発するにはしばらく時間を要しそうだ。
(IR Universe Kure)
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