島しょ部利用に特化ーターゲットを限定した超小型EV
電動の超小型モビリティ「AIM EVM」
「ミニカー(第一種原動機付自転車)」や「超小型モビリティ」に分類される超小型EV。最近では都市部内の短距離利用ではなく、島しょ部や過疎化地域における社会課題解決の一手としても有用性が認識されているようだ。21~23日にかけて横浜パシフィコで開催された「人とくるまのテクノロジー展 2025」においても、エイム(名古屋市、鈴木幸典社長)は今夏に発売予定の新型車両などが来場者の関心を集めた。
新エネルギー車の開発などを行うエイム(名古屋市、鈴木幸典社長)は島しょ部の社会環境を踏まえた電動の超小型モビリティ「AIM EVM」を2025年夏季に沖縄県で販売開始予定だ。①狭い道が多い②ガソリン代が高い③長距離走行の必要性が低い――といった島しょ部ならではの特徴を考慮した仕様となっており、高齢者を含む住民の利便性向上に貢献されることが期待される。
同車両はリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを搭載し、満充電に必要な時間は5時間(200V)。120㎞の走行が可能で、住民の1日の生活をしっかりとサポートする。また、モーター性能も一定レベルを維持しており、坂道発進の最大角度は14度。パワフルで頼もしい走行を実現する。最小回転半径は3.5mで小回りが利くのも特徴の一つだ。総重量は786kg。全長2485×全幅1295×全高1560㎜。2人乗り。
なお、最高車速は60km/hだが高速道路(高速自動車国道)は走行できない。販売価格は190万円を予定しており、担当者によると、「島しょ部の利用を想定し、性能をあえて限定したことで、価格をできる限り抑えた」という。
積み重なる「実績」と研究開発が進む「給電」
トヨタ車体の1人乗り電動ミニカーの「コムス」
超小型モビリティの本格的な社会実装はまだまだこれからではあるが、配達業などの限定されたケースでは着実に実績を積み重ねている。トヨタ車体の1人乗り電動ミニカーの「コムス」はコンビニエンスストアチェーン大手のセブン-イレブンでの宅配業務に2012年ごろから採用されており、着実に社会的地位を高めてきた。担当者によれば、ボトルネックは「価格」とのことだが、利便性や環境性のメリットがエンドユーザーに認知されれば約80~100万円という価格帯も決して高いハードルではないはずだ。
また、EVというと充電時間や充電インフラの整備状況を懸念するユーザーも多い。しかし、その分野においても各研究機関や企業が研究開発を進めており、順調にいけば将来的な課題解消もそう遠くないと感じる。「人とくるまのテクノロジー展 2025」では、島田理化工業がEVワイヤレス給電実証実験装置を披露していた。市販EV車の部品改修でワイヤレス給電を実現できるほか、プラグイン充電との併用も可能だという。担当者に社会実装の時期を尋ねたところ、明言は控えたが「そう遠い時期ではない」との回答を得た。政府の政策方針が変わらぬうちに環境が整い、超小型EVに市民権を獲得してほしいものだ。
EVワイヤレス給電実証実験装置(右が送電コイル)
(IRuniverse K.Kuribara)
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