ゴミ埋め立て地の枯渇、資源の有効活用などの課題に対処するため、2001年に家電リサイクル法が本格施行されてから今年で25年目を迎えた。家電製品協会(東京都千代田区、槙公雄理事長)の星野隆宏環境部長に家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)の引取実績の推移や現状、製品回収率向上に向けた課題などについて尋ねた。
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――引取実績のこれまでの推移と24年度の結果についてどう受け止めているか
廃家電4品目の引き取り実績は、2009年5月から開始された省エネ家電の購入を促進するエコポイント制度の影響で、2010年がピークとなっている。特にアナログ方式のテレビ放送や無線通信を終了し、デジタル方式に移行するアナログ停波が11年7月に実施され、ブラウン管式テレビが約1700万台廃棄されたことが強く影響した。

家電製品協会 2024年度版家電リサイクル年次報告書より引用
その際に購入された液晶・有機EL・プラズマ式テレビの引き取りが2020年度から数値に表れ始めている認識。テレビの使用期間を約15年と想定すると、21から25年度までは同水準で推移するとみていたため、24年度の1458万3000台(前年比0.9%増)という結果は概ね予想通りであり、次年度も同じ水準となる見込みだ。
なお、今年度は引き取った家電の製造年月日を確認するビンテージ調査を実施予定としている。2010年のテレビ買い替えの影響が大きすぎたことで、それ以外の要因による増減が予測できない状況が続いていたため、現在廃棄されている家電製品の使用期間を把握し、今後の傾向の予測に役立てていきたいと考えている。調査の結果は来年の7月頃に取りまとめる予定。
――販売された家電製品の回収率はどのように変化しているか
国が取り纏めている回収率データを見ると、テレビや冷蔵庫、洗濯機については9割近くが回収できている。正確に言えば、テレビは23年度から12.3ポイント減の81.6%となったが、これは24年4月から有機ELテレビが家電リサイクル法の対象に追加され、分母(販売数)が増加したためで実質的には変化していないと考えている。
課題はエアコンの回収にある。24年度の回収率は41.1%に留まっていて、いかに家電リサイクルルートでの回収を増やすかを模索しているところ。国もエアコン回収率向上を政策として掲げており、昨年には再商品化などに関する基本方針の一部を改正。スクラップ業者などによるエアコンの引取台数を半減させ、30年度までにエアコンの回収率を53.9%以上にすることを目標とした。ただ、事業者が家電リサイクル法の正規ルート以外で処理した際の罰則などはないため、スクラップ業者などの引き取り台数をどうコントロールしていくかは国とも連携しながら、具体案について議論していく必要がある。

なお、古物営業法施行規則の一部が今年の10月から改正される予定で、エアコンの室外機の売却時には、対価の総額が1万円未満となる取引であっても本人確認が必要となる見込みだ。そのほか、千葉県警などでも不正ヤード対策の強化を図っているところ。不適正な取引ルートを絞ることで少しでも多くの製品が正規のリサイクルルートに戻ることを期待したい。当協会としては家電リサイクル券の電子化の実証試験などに取り組んでいる。
――洗濯機・衣類乾燥機の再商品化率が過去最高の93%を記録した
再商品化率とは廃家電4品目からどの程度資源に再生する事が出来たかを重量比で示したもの。洗濯機・衣類乾燥機の再商品化率は前年も92%となっており、高い水準を維持している状況だ。素材別再商品化の構成比率を見ると前年から非鉄・鉄等混合物が1ポイント増の12%となっており、若干ではあるが上昇傾向にある。洗濯機から回収される非鉄・鉄等混合物はほとんどがモーター由来であり、銅線や構成部品が適切に分別・処理されていることを示していると考えている。銅相場が2020年ごろから上がったことも影響しているかもしれない。

家電製品協会 2024年度版家電リサイクル年次報告書より引用
また、洗濯機には洗濯槽の回転を滑らかにする目的で塩水(飽和塩水)が使用されているが、従来は廃棄処理されていた。これが技術の進歩などにより、塩水として再利用されていることも、洗濯機の再商品化率の高水準維持に若干ではあるが貢献していると思う。
――家電リサイクル法の対象機器について
家電リサイクル法の対象機器は4つの要件(①市区町村等における廃棄物の処理設備や処理技術では、円滑で適正なリサイクルを行うことが困難なもの②有効利用できる資源が多く含まれていることから、リサイクルを行うことが資源の有効利用を図る上で特に必要なもののうち、リサイクルに係る経済的な制約が大きくないもの③設計や部品等の選択が、その製品のリサイクルの難易度に大きく影響するもの④小売業者によって配達販売される製品のため、小売業者による円滑な収集が行えるもの)すべてに該当するものとして政令により定められている。電子レンジや携帯電話などそのほかの家電製品については小型家電リサイクル法の対象となっているため、家電リサイクル法の対象機器は現状の4品目で問題ない認識。
――最後に
当協会では事業関係者に対しての取組だけではなく、消費者への啓発活動に注力しており、20~30代といった若い世代をターゲットとしたSNSでのPR活動を展開してきた。さらに、東京都千代田区の科学技術館では将来の循環型社会を担う子供たちに向けたブース「家電リサイクルベース」を設置し、家電リサイクル4品目実物商品カットモデルの展示やプロジェクションマッピングによるリビング・クイズショーを実施している。今年度は同ブースを拡張予定で、さらに子供たちに興味を持ってもらえるように、体験型の設備を追加することなどを検討している。ぜひ多くの人に足を運んでもらいたい。
【ほしの・たかひろ】
1990年4月~2007年2月 松下電器産業株式会社(官公庁営業部門)
2010年10月~2024年3月 パナソニック株式会社(家電リサイクル事業担当)
2024年4月~現在 一般財団法人家電製品協会
(審議会等の官職)
2016年11月~中央環境審議会循環型社会部会
「小型電気電子機器リサイクル制度及び使用済製品中の有用金属の
再生利用に関する小委員会」委員など
(IRuniverse K.Kuribara)