
前回、6月のインタビューでも述べていたが、メタルドゥはリチウムイオン電池のリサイクルを一歩進めたブラックパウダーの生産をこの9月から開始する。
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その設備が西淀川事業所に設置された、ということで訪問した。この西淀川事業所はブラックパウダー生産のために新たにリースで借り受けた建屋。元は印刷会社の倉庫だった。電池スクラップ保管の建屋と破砕、選抜機の建屋の二棟を借りている。8月17日より営業開始。設備は30日に設置が始まった。訪れた日は電気工事が行われており、試運転は9月1日から。
(正極材スクラップ破砕、選別マシンは約9000万円。二つの集塵機の高さが7mあるため、建屋の天井も地面から13mと高い)
この設備は台湾製で、最初に正極材スクラップを投入し、破砕、粉砕.テーブル選別を行い、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミ含有のブラックパウダーちアルミはくとに物理的に分けるまでを行う。
パウダーのほうにアルミはくがほとんど残らないことがこのマシンの利点。従って、ブラックパウダーは勿論、アルミ箔部分も有価で売れ、投入したものについては100%資源化できるフローである。
ブラックパウダーは国内外で電池メーカーなどに販売する。
メタルドゥでは現在、月間200〜300トンのリチウムイオン電池スクラップを回収しているが、そのうち100トンの正極材スクラップをブラックパウダーに処理していく。
(正極材スクラップ)
メタルドゥはかつての大阪商事時代から電池のリサイクルには取り組んでおり、その扱いには慣れている。詳しくは以下のコラムを参照。
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しかしながら、これまでのメタルドゥはどちらかというと、コレクターであり、トレーダーという性格のリサイクラーであり、プロセッサーとしてのファンクションはそれほど強くなかったのだが、山頬社長時代になり、スーパーアロイ、チタンスクラップの付加価値を上げるための加工処理設備を次々に導入。そしてこのリチウムイオン電池からのブラックパウダー生産、という流れもある種、必然。サスティナブルな電池リサイクルを求める世界的な潮流、電池メーカーからの要請もある。
この西淀川で生産するブラックパウダーは前述した正極材スクラップから得られるもので、広く市場に流通しているブラックマス、とは異なり、不純物の少ない、リサイクル原料としてはきわめて良質な原料である。
電池関係はこれまで神戸の2nd物流センターに集めていたが、今後は西淀川事業所に集中させる。あえて2棟の建屋を使うところにもメタルドゥが電池リサイクルへかける意気込みが伝わる。
「我々の供給するブラックパウダーが国内のブリカーサメーカー、電池メーカーに使われて、その電池が国内のEVに使われるというリチウムイオン電池のクローズドループに寄与することができたらベスト」と山頬社長。
(iruniverse tanamachi)