電気自動車(EV)の主要材料であるグラファイト(黒鉛)価格は足元では低迷している。金属価格サイトのAsian Metalによると、バッテリー材料として多く用いられる鱗片状黒鉛の国際価格は10月20日に高値650$/mtと、2021年10月半ば以来およそ2年ぶりの安値水準にある。中国当局が10月20日、グラファイトの一部製品について12月1日から輸出を許可制にすると発表した。今後の価格動向が注目される。
グラファイト鉱石
(出所:wikipedia)
アジアンメタルによると、土状黒鉛の価格は10月20日に高値2550元/mt と1年前に比べ1.6%の安値。球状黒鉛の価格は1万3300元/mtで前年の同時点に比べ24%も安い。ほかの形状も多くが前年よりも安い水準にある。
■中国は高純度品などを輸出規制の対象に
一方、中国商務省などは10月20日、以下の製品の輸出について所定の手続きを経るよう通告した。
(1)高純度(純度>99.9%)、高密度(抵折強度>30Mpa)の人造黒鉛とその調整品
(2)天然鱗片状黒鉛とその調整品(球状黒鉛、熱膨張黒鉛を含む
(3)(1)(2)以外で商務省、国防省、税関総署が禁輸対象にしているもの
中国商務省の発表文(中国語): 商务部 海关总署关于优化调整石墨物项临时出口管制措施的公告 (mofcom.gov.cn)
■用途は多様、近年はEV向けで注目
グラファイトの生産国
(出所:JOGMEC資源情報)
エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の資源情報によると、グラファイトは耐熱性に優れ、耐火物をはじめとして金属用坩堝、鋳型、電気炉電 極にも使用されるほか、加工が容易であることから、電池用電極、鉛筆の芯、そしてリチウムイオン電池(LIB)負極材などに使われる。主要産出国は中国とインドで、この 2国で世界の生産量の 78%を占める。 ただ、近年はアフリカ・モザンビークが産地として注目されている。
(出所:JOGMEC資源情報)
日本はグラファイトを含む重要鉱物の供給元の分散に取り組み始めたところだ。9月の経済産業省のカナダ訪問時には、パナソニックエナジーが黒鉛製造を手掛けるカナダのNMGとの間で負極材料の量産化に向けた協力促進で合意した。
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(IR Universe Kure)