ポルトガル共和国政府は11月7日、ホームページ上で、同国のコスタ首相が辞任を表明したと発表した。リチウムと水素関連の汚職疑惑に関する捜査で首相の首席補佐官が当局に拘束されたことを受けた。欧州は脱リスク(デリスキング)の一環としてリチウムを含む重要資源の域内生産を進めるが、首相にまで騒動が拡大したポルトガルの混乱が影響する可能性がある。
■8年間の長期政権、涙の辞任
演説するコスタ首相
(出所:ポルトガル政府HP)
コスタ首相は発表声明で、「私は当然、ポルトガル人が私に託した任期を終わらせるために、全力を尽くして自分を捧げるつもりだったが、今日、検察庁の報道局が公式に確認した、私に対する刑事訴訟が最高裁判所によって開始される、またはすでに開始されているという情報に驚いた」と述べた。
ロイター通信などの11月7日の報道によると、ポルトガル検察当局はこの日、リチウム探査権利と水素製造プロジェクトに関連する捜査の一環として、首相首席補佐官ビトール・エスカリア氏を含む5人が身柄を拘束されたと電子メールを通じた文書で発表した。また警察は主席補佐官のオフィスや政府施設を捜索したという。コスタ政権は2015年から8年間の長期政権で、辞任演説は涙ながらだったと伝わった。
■ポルトガル、豊富なリチウム埋蔵量
エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、ポルトガルには約6万トン超のリチウム埋蔵が確認され、欧州のデリスキングの取り組みの中心的位置を占める。主要生産鉱物は銅や錫、亜鉛で、チタンやタングステンも採掘される。
ポルトガルの主要な鉱山
(出所:JOGMECデータベース)
JOGMECは10月、ポルトガル環境庁(APA)が9月7日、Lusorecursos社に対し、環境影響宣言(DIA)の発行を条件としてMontalegre郡のMina do Romanoでのリチウム探査を環境面で可能にしたと発表したとも伝えていた。採掘権は既に2019年に付与されていたが、ポルトガルでは自然保護団体などによる鉱物採掘への反対が多く、環境面を考慮した採掘承認は遅れがちな事情がある。
(IR Universe Kure)