レアメタルの一種で半導体の材料となるアンチモン価格が高止まりしている。8月29日に仲値$2万5250/tonと過去最高値を更新し、1か月以上この水準を維持している。資源枯渇懸念が根強い反面、世界的な製造業の低迷を背景に需要縮小観測も続き、高値圏で動きが取れなくなっている。
■9月15日の中国規制前後には動きなし
過去3か月間のアンチモン価格の推移(99.65% China)($/ton)
中国は9月15日からアンチモンを輸出規制の対象としたが、実施日前後には価格は動かず反応はなかった。
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■今年に入り2.1倍に値上がり
過去20年間のアンチモン価格の推移(99.65% China)($/ton)
アンチモン価格は2024年5月に既に過去最高値を更新し、その後もじりじりと値を上げていた。2024年に入ってからは8月29日までに2.1倍に値上がりしている。
価格上昇の最大の理由は、資源枯渇に伴う供給ひっ迫懸念だ。アンチモンは中国とロシアからの供給が世界の約7割を占める。しかし、ロイター通信が5月末に米国地質調査所(USGS)のデータを引用して報じたところでは、中国のアンチモン鉱石埋蔵量は2012年の95万トンから2023年には64万トンに減少した。中国国内でも枯渇懸念が強く、8月12日の上海有色網(SMM)は「鉱石の在庫がひっ迫しており、一部の精錬所が減産に踏み切り始めている」と伝えていた。
一方で需要も弱い。アンチモンの主用途は難燃剤だが、これは製造業不振を背景に需要の改善が見られない。太陽光パネルの清涼剤にも使われるが、こちらも中国景気の低迷を背景に需要に一巡感が出ている。
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過去3か月間の三酸化アンチモン価格の推移(99.5%min FOB China)($/ton)
アンチモンの加工品である三塩化アンチモンは9月12日に$1万9950/tonを付けた。やはり過去最高値だが、こちらは9月15日の中国の規制を前に駆け込み需要があったとみられる。
中国はアンチモン加工で存在感が大きく、例えばオーストラリア産アンチモンなども加工は中国で行われているのが現状だ。中国当局は今回、アンチモンの関連技術も規制の対象とした。
(IR Universe Kure)