25/3期光通信向け一服、半導体横這いもライフサイエンス黒転で0.7%増収13.8%営利増
株価3720円(5/7) 時価総額362億円 発行済株9732千株
PER(26/3DO予:16.2X)PBR(0.65X) 配当80.00円 配当利回り:2.1%
要約
・25/3期光通信向け一服、半導体横這いもライフサイエンス黒転で0.7%増収13.8%営利増
・26/3期デジタルコミュニケーション不振、トランプ関税等で0.2%減収52.7%営利減予想
・28/3期に売上高500億円、営利80億円目標もハードル高い
25/3期光通信向け一服、半導体横這いもライフサイエンス黒転で0.7%増収13.8%営利増
25/3期決算が4/30に開示され、同日WEB説明会説明会が実施された。25/3期は売上高380.69億円(1/31減額修正予想比0.69億円上振れ、0.7%増)、営利52.87億円(同1.87億円上振れ、13.8%増)、経常利益54.46億円(同0.54億円未達、3.5%増)、税引利益39.43億円(3.43億円上振れ、14.5%増)と、1/31の減額修正に近い数字で着地した。但し、期初計画に対しては売上、利益ともに減額での着地となった。
部門別では半導体事業が売上高161.23億円(期初計画比28.77億円未達、1/31減額修正予想比1.23億円上振れ、3.3%減)、総利益76.75億円(2.2%増)、営利15.29億円(4.7%増)となった。サーバー用途、自動車用用途で市場の落ち込みが継続、Q4にAIサーバー向けソケットが売上増となったものの、全体では減収を余儀なくされた。但し利益面では不良在庫の廃棄が減少、円安効果もあり増益に転じた。なおR&Dの配賦基準見直しにより、24/3期旧基準値比では販管費分の負担増で営利12.3%減となっている。
ライフサイエンスは売上高30.54億円(同5.54億円上振れ、同2.54億円上振れ、29.0%増)、総利益13.65億円(44.1%増)、営業利益4.53(同10.06億円改善し営業黒字転換)となった。一部既存顧客からの受注増加に加え、新規量産品立上げが寄与し大幅増収に。利益面でも増収効果、コスト構造見直しの効果から売上総利益率が4.7ポイント向上し44.7%となり大幅な総利益増となり、営業利益でも黒字転換を果たした。なおR&D配賦基準変更前比では16.05億円の利益改善となっており、従来基準で仮定した場合、未だ開発費先行で実質的に大幅な営業利益の改善が進んでいるものの、R&D費用控除後では若干の営業赤字となっている模様。
エナジーセービング事業は売上高139.98億円(同3.98億円上振れ、同2.02億円未達、1.22億円増額、6.7%増)、総利益46.89億円(11.0%増)、営利8.20億円(15.2%増)となった。自動車生産の伸び悩みの中で同社は自動車の電装化に対応した低騒音・高効率ギアビジネスで非日系企業などの新規需要を獲得、事務機市場は低調も売上は堅調に推移した。利益面では増収効果、為替円安影響もあり総利益率が1.3ポイント改善し33.5%となり、営業利益でも2ケタ増益に。なおR&D比基準見直し前では12.2%減と売上比率が高い分でR&D費用負担増分が見かけ上高まったために増益率が多少高めとなっているとみられる。
デジタルソリューション事業は売上高48.93億円(同10.07億円未達、同1.07億円未達、13.2%減)、総利益37.38億円(14.1%減)、営業利益24.84億円(17.9%減)にとどまった。部門別では期待が高かった光通信デバイス向け光学レンズが36.80億円(同8.40億円未達、13.6%減)と、AI用途等のハイエンド領域において、ユーザー側の次世代製品への移行を踏まえた在庫調整などが影響、計画比大幅未達に。LED用拡散レンズも12.12億円(同1.68億円未達、11.9%減)とLCDTV低迷とサムスンの低迷継続で低迷が深まった。利益面では減収影響で円安でも利益率が低下、2ケタ減益に。なおR&D費用負担増前では20.4%営利減となっている。
全体として経常利益の増減分析では、増収効果で1.74億円、原価率改善で2.90億円、コスト削減から販管費削減効果で1.77億円の増益効果に対し、営業外で為替差損が5.71億円で営業外は4.59億円減益要因となり、経常増益幅は1.83億円にとどまった。なお営業利益では為替円安効果8.07円円安(1$=144.4円から152.47円)で約9億円の円安効果がプラスされており、為替影響を除くと営業利益は5.6%営業減益だったとみられ、実質経常利益は13.6%減益と推測される。
なお四半期推移では、25/3Q4は売上高92.64億円(同期比6.0%減、Q3比1.8%増)、総利益41.31億円(同13.5%減、同4.3%増)、営利12.03億円(同10.4%増、同65.0%増)と、減収ながら営利増益に。これは半導体部門がA1関連で伸長し半導体部門の営業利益が4.20億円(同期比25%増)となったこと、ライフサイエンス部門も新規量産効果で売上高9.44億円(同期比83.7%増)、営利が同期比4.51億円改善し黒字転換したことなどが増益寄与した。一方ではデジタルコミュニケーションが売上7.84億円(同期比36.7%減)、営利2.62億円(61.6%減)と大きく低迷、特に光通信向けが5.29億円(同期比43.9%減)と大幅減となったことが影響している。なおエネルギーセービング部門は同期比横ばいとなっている。
26/3期デジタルコミュニケーション不振、トランプ関税等で0.2%減収52.7%営利減予想
26/3期会社予想は売上高380億円(0.2%減)、営業利益25億円(52.7%減)、経常利益30億円(44.9%減)、税引利益21億円(46.8%減)と、トランプ関税の影響や円安一巡、MIX悪化などで大幅減益予想としている。
部門別に半導体事業を売上高166億円(3.0%増)、ライフサイエンス32億円(4.8%増)、デジタルソリューション32億円(34.6%減)、エナジーセービング150億円(7.2%増)予想としている。半導体事業は前期同様にAIサーバー向けなど増加も、その他はいずれも低調に推移するとみている。またライフサイエンスは上期に一巡し下期は大幅減となり、伸び率大幅鈍化を見込む。デジタルソリューションは光通信デバイス向けが新製品の納入遅れなどで今期も減少を見込み、LED拡散レンズもボトム継続を想定している。なおエナジーセービングは電動化ニーズから堅調な伸び、事務機系は低迷続く見通しとしている。
経常利益の増減見通しでは、円高による為替影響が12円円高想定で18.71億円、トランプ関税の影響額7億円、マーケティング強化やベースアップによるコスト増6億円の減益要因に対し、為替除く増収効果、収益性改善効果で7億円の増益効果を見込む。
現状、自動車関税についてはかなり厳しい状況が想定され、同社が電動化によるエナジーセービングについて増収を見込んでいるものの、これに対して未達懸念がある。その他事業については光通信関連の減収などは織り込まれており、会社計画並みの売上が見込めよう。このため為替が多少140円より円安に推移するとしても、会社計画に対し、多少、収益減額のリスクがある。
28/3期に売上高500億円、営利80億円目標もハードル高い
同社は従来、中計計画を外部に公開してこなかったが、今回中計をアナウンス、28/3期に売上高500億円(決算発表資料では足し合わすと530億円となるが為替の関係で大枠500億円とのこと)、営利80億円を目指すとした。基本的にAIインフラ投資が加速、GAFAMの設備投資が25/3期には2380億ドル(21/3期比2.3倍)となっており、今後もさらに加速する見通しの中で、同社の半導体、光通信事業の拡大が続く見通しとしているほか、車載関連でも電動化で全部門の増収寄与が見込まれるとしている。収益性についてもニッチな分野でイノベーションセンターの設置で顧客ニーズを的確にとらえ、事業別に高付加価値製品群の構成比をアップし収益性も回復を目指すとしている。
具体的には半導体事業では250億円(25/3期比55%増)と一番の増収率を見込む。米国中心にマーケティングを展開、AIサーバー、汎用サーバー、モバイル、車載SoCなどのテスト需要、また次世代半導体のテスト市場への参画を図る。同社の強みは、独自の微細加工技術と高機能樹脂の応用技術にあり、これにより0.25mmピッチ、3,000ピンを超えるような微細化・多ピン化が進む先端半導体の開発・生産に対応可能なICテストソケットおよびバーンインソケットを提供している。例えばヒートシンク付きソケットの放熱性最適化や、高周波測定を可能にする「カプセルコンタクト」のような低インダクタンス設計、高温環境下での耐久性を高める「ESめっき」や「カーボンコーティング」といったコンタクトソリューションなどを提供、今後、高度な3Dシミュレーション技術を駆使し、複雑化する先端パッケージに対応したソケット設計で受注拡大を目指す。ユーザーとしてAMDなどAI半導体ユーザーとのつながりもあり、半導体事業については計画通りの拡大が見込める。
デジタルコミュニケーションでは70億円(25/3期比43%増)を見込む。LED拡散レンズは成熟製品でボトム継続、中心は光通信デバイスで58%程度の伸びを見込んでいるとみられる。この分野では、次世代対応での新製品開発が進んでいる。具体的にはビヨンド5Gに向けて日本では総務省がBeyond 5Gに向けた情報通信技術戦略を令和6年にまとめているが、同社は大阪万博においてレンズアンテナを使用した300GHz帯での4K非圧縮映像伝送システムの展示を行っている。レンズアンテナとは光学レンズが光を集光・平行化するように、電磁波を制御してアンテナの利得(ゲイン)や指向性を高める技術を使ったアンテナで、アンテナ素子から放射された球面波をレンズに通すことで平面波に変換し、エネルギーを特定の方向に集中させることができる。同社は60~300GHz帯のミリ波レーダー対応で6G用途に使える小型の製品として開発した。これは射出成技術で大量生産を可能とし、ガラスやセラミックスといった他の誘電体材料を用いたレンズ製造と比較して大幅なコスト削減の可能性があり、ガラスやセラミックスよりも軽量で、アンテナ全体の重量削減に貢献するため、自動車や携帯端末、ドローンなど重量が制約となるアプリケーションで有利となるなどが期待される。既に同レンズアンテナはRohde & Schwarz(R&S)社(60~300GHz、THz帯に至るまでの信号発生器、アナライザ、ネットワークアナライザ、Over-the-Air試験チャンバーなど、包括的な試験・測定ソリューションを提供し、6G、AI/ML、ISAC、自動車レーダーといった将来技術への戦略的投資と、NVIDIA、Nokia、Qualcommなど業界主要企業との積極的な協業を通じて高周波技術エコシステムの発展を支える中心的な役割を担っている会社)にも採用されており、今後量産化が期待される。
またロームに対してはロームのテラヘルツ(THz)波共鳴トンネルダイオードデバイス(RTD)にも採用された。テラヘルツ波は電波(特にミリ波)と遠赤外光の中間に位置する周波数帯域の電磁波であり、一般的に約0.1 THzから10 THz(ギガヘルツ換算で100 GHzから10,000 GHz)の周波数、波長では0.03 mmから3 mmの範囲を指すが、広大な周波数帯域を利用できるため、従来の無線通信システムを大幅に超える大容量・高速データ伝送が期待され、Beyond 5G/6Gといった次世代通信技術の候補として期待されている。またレーザー光のように高い直進性を持ち、鏡による反射やレンズによる集光といった光学的処理が可能で、イメージング技術への応用が期待され、X線のような電離放射線とは異なり、テラヘルツ波のエネルギーは可視光よりも低く、人体や物質に対して非破壊的であり、安全性が高いなどの利点がある。
ロームのRTD技術は、テラヘルツ波の発生・検出における従来の課題であったデバイスの大型性、高コスト、高消費電力を克服する画期的なもので、同社のレンズ技術が性能向上を引き出す上で不可欠な役割を果たしているとみられる。特に、その超小型サイズ(チップサイズ0.5mm*0.5mmで4.0mm*4.3mmパッケージに実装されたLEDサイズを実現)、低消費電力、室温動作、そして従来比で大幅に低減されたコスト(サンプル価格は従来デバイスの1/10)は、これまで実用化が困難であった多様な分野へのテラヘルツ技術の応用を加速させる可能性を秘めており、同デバイスに採用となったことは黎明期にあるテラヘルツ市場への参入という点で、大きな意味があるとみられる。
さらに同社は2024年7月にAI・クラウド向け次世代MMF(マルチモードファイバー)光伝送技術でも新たな開発を進めた。具体的にはVI Systems GmbH(以下、VI Systems社)と提携しMMF技術においてマルチアパーチャ・シングルモードVCSEL(MA SM VCSEL)と最適化されたプラスチック光学部品を組み合わせ、AIおよびクラウドコンピューティングが要求する高速(100G/200G/レーン)データセンター相互接続でMMF伝送距離を大幅に拡張するもの。この技術は、狭線幅のシングルモードVCSELを独自のマルチアパーチャ形式で利用することで、MMFの従来の制限要因であった色分散とモード分散に直接対処し、106Gbpsデータレートにおいて、従来のMM VCSELと比較し2~4倍長いOM4 MMF上で200mを超える伝送距離を達成した。現在、AIによるデータセンター帯域幅への需要が急増する中で、高性能なMMF代替技術である短距離シングルモードファイバー(SR-SMF)、シリコンフォトニクス(SiP)、Co-Packaged Optics(CPO)との競争において、MMFが本来持つコスト優位性を維持しつつ性能を向上させることができ、光相互接続市場全体についてAIが主要な成長触媒となり2029/2030年までに220億~240億ドルを超える市場が創出されると予測されているだけに、今後の需要拡大の加速が期待される。
全体として、27/3期はAI半導体について新技術利用の先端デバイスの量産が本格化し、同社半導体向け需要が過去のピーク更新が見込める。また光通信部品も次世代製品群がAIデータセンターなどで需要が高まり、改めて需要急回復から過去最高売上の更新が期待される。エナジーセービングについてはトランプ完全問題やEV投資への見直し影響が継続し、伸び率が緩やかにとどまるとみられる。このような状況で、27/3期は収益回復が見込めるものの、25/3期の期初予想程度の回復に止まるとみられ、28/3期中計予想の達成はハードルが高いとみられる。
株価は生成AI向けに光通信デバイスの伸長を囃し、AMD向けもAIサーバー向けGPUの拡大が過大評価され、2024年1/22には15040円まで駆け上り、その後収益悪化で値を下げ続け、25/3期予想が増益予想となったものの割高感が拭えず下げを続け、2025年4/7には3240円と2年前水準まで落ち込んだ。今回、26/3期で再度収益低迷予想が出されたことから株価は冴えない動きが続いている。現状、会社26/3期予想EPS237.69円に対しPER15.7倍はプライム電機平均PER21.8倍比で割安、同業の山一電機コンセンサス8.2倍、ヨコオ11.7倍と比較して割高感がある。業績的には本格拡大が27/3期になるとみられ、株価大幅下落で悪材料を織込んだものの、トランプ関税問題や電動化の遅延等不透明な要素が多く、当面ニュートラル継続としたい。
*図・写真は同社決算説明会資料、HPより添付
*山一電機(6941)、ヨコオ(6800)、日本マイクロニクス(6871)との比較
(H.Mirai)