オーストラリアの金属企業MTMクリティカル・メタルズ(MTM critical metals)は6月3日、上場するオーストラリア証券取引所(ASX)で、「米国で回収された電子廃棄物から高品位アンチモンを98%の割合で回収した」と発表した。アンチモンは主生産国の中国を含め世界的に資源枯渇懸念が強く、スクラップ利用が期待されている。
■通信機器やサーバーを加工して抽出
プレスリリース:ASX:MTM - High-Grade Antimony Recovered at 98% from U.S. E-Waste
発表によると、MTMが今回抽出したアンチモンの品位は3.1%Sbと、世界の一次アンチモン鉱石の品位(0.1%-1.0%)を大きく上回る。原材料は米国各地から集めた通信機器やサーバーなどの電子廃棄物で、同社の独自技術を使って加工・抽出した。同じ原料から金や銀、銅なども抽出できた。同社は米国をはじめ各地に金属回収工場を展開する。
アンチモンの抽出過程
(出所:MTM発表資料)
■資源枯渇と中国の統制で最高値圏
アンチモンは中国とロシアからの供給が世界の約7割を占める。特に中国は過去100年以上に渡る伝統的なアンチモン供給国。ただ、鉱石は枯渇懸念が強く、当局の環境保護面からの統制姿勢もあって、2024年に中国のアンチモン価格が急騰した経緯がある。さらに中国当局は2024年9月からアンチモンを輸出規制の対象とした。
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この結果、西側諸国ではアンチモンの品薄が常態化している。6月3日のMMTA Gradeアンチモン価格は高値6万6400/tonと、過去最高値圏で高止まりしている。
過去1年間のMMTA Gradeアンチモン価格の推移($/ton)
中国との対立が深まる中、米国をはじめ西側諸国ではスクラップを含めた新たな供給源を模索する動きが続く。MTMは発表資料の中で、「都市鉱山からの金属回収は米国の戦略的サプライチェーン(供給網)の構築につながる」とし、米国防省(DOD)の代表者との話し合いも持ったと明かした。
(IR Universe Kure)