2025年6月23日~6月29日のバッテリー業界では、気温上昇に伴い警告が出されるなどバッテリー火災への注目が高まった。バッテリーの資源回収が進まない一方、中国系のアンカーは大規模な不良品回収を余儀なくされた。一方、日本企業をめぐり再生技術の進歩を示すニュースも多かった。米国を中心とした関税問題は、なお影響がくすぶった。
<国内>
●バッテリー火災に注意喚起 リチウムイオン電池の回収も道半ば 政府筋など
(出所:NITEのポスター)
製品評価技術基盤機構(NITE)は6月26日、リチウムイオン電池搭載製品の発火事故について注意を呼びかけた。特に夏場は火災発生件数が増える傾向にあるという。
プレスリリース:『夏バテ(夏のバッテリー)』にご用心~「リチウムイオン電池搭載製品」の火災事故を防ぐ3つのポイント~ | 製品安全 | 製品評価技術基盤機構
一方、総務省行政評価局は6月25日、リチウムイオン電池の回収についての最新の調査結果を発表した。住民がごみとして市区町村に排出したうちの4~5割が再資源化されず、焼却や埋め立てなどで処分されていると推計される。火災発生の遠因にもなっているとみられる。
家庭から出たモバイルバッテリーの処分経路
(出所:総務省行政評価局)
プレスリリース:総務省|報道資料|リチウムイオン電池等の回収・再資源化に関する調査 <結果に基づく通知>
●アンカーのモバイルバッテリー回収、数十万個規模に 部材の品質に問題
モバイルバッテリー大手アンカー・ジャパン(東京・千代田)は6月26日、「モバイルバッテリー4製品を自主回収する」と発表した。品質基準を満たさない部材が使用されていたため。回収対象が数十万個に上ることが6月27日までに伝わっている。、
同社は中国の安克創新科技の日本法人。手ごろな価格を武器に日本で急成長していた。
プレスリリース:弊社モバイルバッテリー4製品に関するお詫びと自主回収のお知らせ | アンカー・ジャパン
●Eキューブ、三元系電池の無力化で新技術
再生技術企業のEキューブドゴールズは6月26日、共同通信ビジネスワイヤを通じ、「三元系リチウムイオン電池の無力化および安全かつ完全な廃棄を実現する画期的な技術を確立した」と発表した。
早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科との共同研究。三元系リチウムイオン電池は使用済み製品の処理対策が進んでおらず、世界的な課題となっている。今回の開発で処理技術が一歩前進したことになる。
●東陽テクニカ、燃料電池を仏企業ブランドで生産へ
東陽テクニカ(本社:東京・中央)は6月26日、自社ホームページ上で、「燃料電池/水電解評価システムについて、7月にフランスのバイオロジック(BioLogic Science Instruments SAS)へのOEM(相手先ブランド製造)提供を開始する」と発表した。
プレスリリース:東陽テクニカ製 燃料電池/水電解評価システムについて仏・BioLogic社へのOEM提供を開始
●古河電工、ケーブルトラフが豪貯蔵システムに採用
古河電気工業(本社:東京・千代田)は6月25日、「リサイクル樹脂製ケーブルトラフが、オーストラリア・クイーンズランド州で進行中のデータセンタ向けバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS:Battery Energy Storage System)プロジェクトに採用された」と発表した。
プレスリリース:グリーントラフ®が海外のデータセンタ向けバッテリーエネルギー貯蔵システムエリアに初採用|2025|ニュースリリース|古河電気工業株式会社
<海外>
●SMM、8月に「バッテリーリサイクル・循環産業大会」
SMM(上海有色網)は8月14日〜15日、中国浙江省寧波市で国際会議「GBRC 2025 SMMバッテリーリサイクル・循環産業大会」を開催する。
関連記事: 【ご案内】SMM中国寧波「電池リサイクル国際会議」-日本企業限定・参加費無料招待 | MIRU
●米フォード、電池工場建設計画に危機感 雇用に影響と警告
米フォード・モーターは6月23日、連邦議会の共和党がトランプ米大統領の大型税制法案で税額控除を縮小すれば、米ミシガン州南西部にある自社の電気自動車(EV)用バッテリー工場で雇用に影響が及ぶ恐れがあると警告した。米ブルームバーグ通信が同日伝えた。
フォードはミシガン州で、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)から技術供与を受けたリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池工場を建設中。24日には工事の進捗状況を自社ホームページ上で発表した。
プレスリリース:Ford-Owned American LFP Battery Plant Paves Way for Next-Gen Electric Vehicles
●WTO、カナダと中国の関税応酬にパネル
世界貿易機関(WTO)は6月23日、ホームページ上でEVや農水産物への追加関税を巡るカナダと中国双方からの提訴について、裁判の「一審」に相当する紛争処理小委員会(パネル)をそれぞれ設置すると決定した。
関連記事:中国・カナダのEV関税応酬、貿易紛争として処理へ WTOがパネル設置 | MIRU
(IR Universe Kure)