26/3期自動車・建機、舶用向け好調で1.7%増収24.8%営利増に増額修正
株価2493円(8/15) 時価総額 927億円 発行済株49757千株
PER(26/3DO予:11.9X)PBR(0.97X) 配当(26/3会予)110円 配当性向4.4%
要約
・26/3Q1は一般産業向け以外増収から1.6%増収14.2%営利増も円高で17.7%経常減益
・26/3期自動車・建機、舶用向け好調で1.7%増収24.8%営利増に増額修正
・27/3期は半導体向けの本格回復、新製品寄与も期待され、収益本格拡大期待
26/3Q1は一般産業向け以外増収から1.6%増収14.2%営利増も円高で17.7%経常減益
NOK系列のメカニカルシール、特殊バルブ大手、船尾管シールなどでは世界シェア6割占める。8/5に26/3Q1決算が開示され、26./Q1は売上高424.89億円(1.6%増)、営業利益29.98億円(14.2%増)、経常利益39.27億円(17.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は25.93億円(16.8%増)となった。売上面では一般産業向けのみ減収で他部門は増収となった。また利益では営利増も円高で経常減益、親会社株主に帰属する当期純利益は前期にグループ内組織再編に伴う非支配株主に帰属する純利益が7.78億円減少したことで増益となった。
セグメント別では自動車・建機向けが売上高227.97億円(1.0%増)、営業利益6.28億円(40.2%増)。EVの伸び率鈍化もグローバル台数は伸びており、同社製サスペンション用ソレノイドバルブ搭載車種の販売好調から内燃機関向けなどの低調を補い増収を確保、計画を上回る売上となる。利益面ではMIX良化で計画を上回り大幅増益となり、期初計画営利2億円に対し既に4.28億円上振れている。
一般産機向けは売上高90.58億円(10.8%減)、営利10.70億円(13.6%減)と唯一同期比減収に。石化業界の競争激化で東南アジア地域のプラント稼働率が低下し、補修需要が減少、利益も稼働率減で減益に。
半導体業界向けは売上高36.97億円(30.0%増)、営業損失3.16億円(同期比6.1億円赤字減少も赤字継続)となった。生成AI関連で業界は回復過程から同社製品の需要も緩やかに回復、在庫調整一巡で売上の伸び率は高い。利益面では製品構成がレガシー向けが多いとみられ、他社よりも収益性が低く、加えて大型設備投資実行の影響で固定費の重荷が足を引っ張っている。
舶用向けは売上高48.07億円(9.4%増)、営業利益15.14億円(6.5%減)となった。地政学的な問題等も背景に修繕需要が増加、新造船需要も拡大し売上が増加した。利益面ではMIX悪化で利益率が低下し減益に。ただし主力の船尾管シールは新造船後、5年に1度はドック入りし交換・メンテナンスが生じ安定した需要があり、フタサービスは高単価、高収益率を誇る。四半期推移では25/3Q2ボトムに収益率が向上、計画比で上振れしている。営業利益の進捗率も33.6%となっている。
航空・宇宙関連は売上高21.27億円(11.6%増)、営利0.91億円(55.1%減)と、防衛関連の予算の伸びと宇宙関連の売上増で売上増、利益は一部在庫評価減計上で大幅減に。
全体としては自動車・建機向け、舶用向けが会社計画を上回って推移、26/3Q1として上振れての着地となっている。なお円高に伴い営業外で為替差損0.25億円を計上(25/3Q1は7.77億円の為替差益)、持分利益も半導体関連や欧州企業の伸び悩みから7.41億円(0.83億円減、同期比10.0%減)と減少し経常利益は減益に転じた。親会社株主に帰属する当期純利益は四半期純利益では31.37億円(同期比4.05億円減、11.4%減)ながら、前期にグループ内組織再編に伴う非支配株主に帰属する純利益が5.43億円(同期比7.78億円減、58.9%減)となったことで増益となった。
26/3期自動車・建機、舶用向け好調で1.7%増収24.8%営利増に増額修正
26/3期は26/3Q1の収益が上振れたことを踏まえ、26/3Q1発表前の7/25に増額修正を発表している。26/3期修正予想は売上高1710億円(期初計画比10億円増額、1.7%増)、営利106億円(同16億円増額、24.8%増)、経常利益145億円(同14億円増額、20.6%増)、税引利益92億円(同7億円増額、88.6%増)予想、配当110円(同10円増配)とした。内容としては26/3H1が売上高847億円(期初計画比売上で7億円増額、同期比2.1%増)、営利48億円(同22億円増額、12.5%増)、経常利益65億円(同19億円増額、13.0%増)、親会社持分税引利益42億円(同11億円増額、54.8%増)とした。
期初計画では従来の中計に対し、半導体の伸び悩みを主因に2023年5月に策定した26/3期に売上高2000億円、営業利益145億円目標を引き下げ、営業利益、経常利益とも2ケタ減益予想としていた。しかし今回、一転して2ケタ増益予想に増額した背景には、トランプ関税など不透明要因を利益面で慎重に捉えていたためと見られる。一方、26/3H2は売上高863億円(同3億円増額、同期比1.3%増)に対し、営業利益58億円(同6億円減額、同37.1%増)、経常利益80億円(同5億円減額、同27.5%増)、税引利益50億円(同4億円減額、同2.3倍)予想と、利益予想を減額している。なお部門別の収益予想についての開示はなかった。
現状、上期は関税問題などの影響が軽微であったと見られ、高収益部門の計画上振れがあり、確実な売上見通しのもとに会社修正予想並みの着地が見込まれる。下期については自動車関税、材料費上昇懸念などを織り込んで多少減額したと見られるが、期初計画に対し大きな利益変更をしなかったと見られる。売上面では大きな差異はないと見られるが、為替について会社計画に対し円安に推移すると見られ、26/3H2も会社修正予想に対し多少増額が期待される。
ちなみに期初計画に対しQ1の進捗率は、売上で自動車・建機27.1%、船舶27.0%、営業利益でも自動車・建機3.14倍、船舶33.6%となっており、通期で上振れが見込める。その他事業はいずれも進捗率で売上高が21%から23.5%、営業利益は一般産業機械21.4%、半導体が赤字幅に対して21.1%にとどまり、航空宇宙は評価損もあり11.4%にとどまる。半導体は期を追うごとに拡大予想で計画比増増額、一般機械、宇宙航空は収益未達が想定される。
27/3期は半導体向けの本格回復、新製品寄与も期待され、収益の本格拡大期待
27/3期は半導体向けの製品群の本格回復、加えて自動車・建機向けではEV向けの製品群の拡大も寄与、収益の拡大継続が見込まれる。加えて持分利益も半導関連会社の収益回復、アジア地区でのメカニカルシールの拡販も進むとみられ持分利益増が見込まれる。
半導体向けでは同社が得意とする磁性流体シールと溶接ベローズ、ロータリージョイントを複合化し電力伝達機能を持たせた「スリップリング一体化ハイブリッドシール」を投入する。同製品は3要素を1社で設計・製造・販売できる唯一の企業である同社でなければできない製品と位置づけている。同製品は半導体製造装置の真空環境下で電力・信号伝達と密封機能を同時に実現でき、装置のコンパクト化と信頼性向上に寄与する。特に300mmウェハー対応の次世代装置向けに開発が進んでおり先端半導体向けに熱負荷の高いエッチング、CVD,CMP向けのなどで本格採用が見込まれ、27/3期に収益寄与が期待される。現在、同社半導体向け事業はメカニカルシールの比率が高く、消耗品比率が他社比で少ない。このため、装置メーカーの受注変動で収益が振れやすく、またレガシー半導体への比率が高いことが収益性の低い原因と見られる。しかも先端分野対応などに先行投資を行ったことで償却負担増とレガシー半導体不振で稼働率が低下した結果、大幅赤字を余儀なくされたと見られる。今回、投資が一巡し、新製品効果、レガシー向けの回復などで27/3期以降、営業利益の黒字転換が見込まれる。
成熟化している自動車・建機向けではEV市場向けにヒートポンプと直結した「統合型マネジメルブ」を開発、-40℃~150℃の広範囲な温度環境で作動でき、熱交換効率を従来比30%向上させることに成功している。2025年モデルに採用される見通しにあり、27/3期以降の収益に寄与しよう。またEV向けも23年度に量産を開始したEV駆動モータ用「表面テクスチャリング高速シール(低損失と高密封性を両立させた世界初のシール)」は回転抵抗を15%低減し、EVの航続距離延伸に貢献する技術として採用が増えると見られ、自動車分野の収益性向上に寄与しよう。
このように計画立案当初の中計では収益に寄与するはずの製品群の投入が遅れたものの、27/3期には実際に収益寄与するとみられ、改めて28/3期には売上高2000億円、営利145億円の達成も視野に入ってこよう。
株価は2/5に25/3期予想を再減額したことから下落が加速、4/7には1580円まで下落し、5/14の決算発表で営業利益増予想としたこともあり、多少戻っていた。この中で7/25に増額修正が開示され、7/28から急上昇、8/5の26/3Q1発表日に2582円の年初来高値を更新し株価を保った状況にある。現在26/3期会社修正予想EPS203.07円に対しPER12.3倍はプライム市場機械平均PER18.4倍に対し割安感がある。なお類似事業を行うニチアス13.9倍、バルカー10.8倍、ピラー13.1倍と似通った水準にある。同業界では半導体向け比率が低く地味な存在であり、また防衛関連でもそのウエイトは低い。26/3期は半導体以外で大幅増額となり、27/3期も収益拡大が期待されるものの、半導体、防衛関連の寄与が相対的に低く、株価は今回の増額修正を織り込んだと見られ、ニュートラル継続と判断する。
(図表、写真はカタログ、会社説明会資料、HPから添付)
*バルカー(7995)、ニチアス(5393)、ピラー(6490)との相対比較
(H.Mirai)