東京製鐵は18日、2025年9月契約の鋼材販売価格について、4カ月連続で全品種据え置くと発表した。アメリカの関税問題が落ち着いてきたものの、日本国内の市場が先月同様に停滞気味であることを踏まえ、今月も据え置き判断となった。
生産予定については8月全体で20万トン(前月予定比から2万トン減)、H形鋼が6万トン(1万トン減)、ホットコイルは9万5000トン(5000トン減)[内、輸出は5000トン(横ばい)]、厚板3万5000トン(5000t減)。
物件価格や在庫販売価格は前月から変更なし。H形鋼が11万7000円、異形棒鋼が8万7000円、厚板が10万円(建値と同額)。8月18日(月)午後より販売開始した。
東京製鐵の基調コメントの概要は以下の通り。
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海外マーケットは、アメリカと各国との関税交渉がおおむね固まりつつある中、最大の貿易赤字の相手先である中国との決着がいまだ着かない状況にある。そのため、直接、間接を問わず、国際市場は模様眺めの様相が続いている。また、一部地域における政情不安や紛争の影響は、各国の保護主義政策と相まって、鉄鋼関連製品を取り巻く環境も不透明なものとなっている。
一方で、これまでの国際的な取引量の停滞と極端な製品価格の低迷により、鉄鋼メーカーは採算悪化を強いられており、足元では、生産抑制姿勢を伴う鋼材取引価格の見直しの動きも出ている。今後の国際鉄鋼関連市場の本格的な回復に向けては、中国国内のさらなる景気刺激策と鉄鋼減産の実効性に期待が寄せられるところではあるが、引き続き、世界経済や貿易動向、中国における鉄鋼需給の変化について慎重に注視していく。
国内マーケットでは、建設分野で根本的な人手不足による施工能力減少と労働時間の平準化により、足元でも施工会社による選別受注が続いている状況。特に中小案件に影響が大きく、市中の建設用鋼材の在庫水準は低いものの、全国的に荷動きも低迷。市況も軟化傾向が残っている。しかしながら、今後は既決の大型再開発案件の施工本格化に加え、物流施設をはじめとした新規案件の着工増加が想定されることから、荷動きの増加と商況の回復が期待されるところ。
鋼板品種については、特に製造業において米国との関税交渉の行方に注目が集まり、国内外市場における需要環境の変化を見極めるため、生産抑制を含めた様子見の動きが強い。それにより全体的に鋼材の荷動きは低位で推移し、景況感は迫力に欠ける環境にある。ただ、通信インフラや物流施設の再構築に加え、国内製造拠点のDX化の動きや建設関連の大型化により、設備関連業種では今後も需要は堅調に推移すると予想される。
以上のような状況のもと、各種鋼材を取り巻く国内外の環境を鑑み、早急な市況底入れを図るべく、今回も全品種据え置きとした。
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また、小松﨑裕司取締役常務執行役員営業本部長は基調コメントに補足する形で以下のように見解を示した。
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アメリカで新たな関税率の適応が徐々に固まってきたほか、中国との追加関税の一部停止措置延長も決まって、落ち着きを取り戻しつつある。今後はマーケットの価格がどう底離れしていくかが気になるところ。ポイントはやはり中国。目先は9月3日の抗日戦争勝利記念日に向けての減産体制となるが、それ以降の具体的な生産目標や経済政策がどのように提示されていくのか動向を注視していきたい。ご存じの通り、中国国内のメーカーの値上げだけでなくベトナムや台湾も値上げの動きがある中、国内は稼働日の少ない8月ということもあり、市況・商況は精彩を欠いている状況。先月同様に大きな変化をもたらすようなトピックスは特にない。
流通各社は、非常に慎重な購入姿勢を続けている。需給バランスを踏まえると、現時点から悪い方向に行くことは想定されない。今後の鋼材市況の盛り上がり次第ではあるが、東西市況の底打ちを期待したい。
スクラップは、国内市場をみると需要も供給もともに低迷ではあるが、拮抗状態にある。為替も直近1カ月で上昇下降を繰り返していることもあり、夏期は全国総じて様子見、横ばい傾向が続くとみられる。
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2025年9月契約の品種別販売価格(O/T NET ベース価格、トン当たり円)は以下の通り。
H形鋼及び形鋼:2023年4月契約において3,000円の値上げ後、1年5か月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。今回の2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。
H形鋼=11万2,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
縞H形鋼=12万2,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
I形鋼=11万3,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
溝形鋼=10万8,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
角形鋼管(コラム):2022年9月契約において5,000円値下げ後、2年連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万円の値下げ。
角形鋼管=11万8,000円(2024年10月契約にて1万円値下げ。)
U形鋼矢板:2023年4月契約にて3,000値上げ後、1年と5カ月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、1万2,000円値下げ。今回の2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。
U形鋼矢板=12万4,000円(2025年5月契約にて3000円値下げ。)
異形棒鋼:2024年10月契約において、1万円の値下げ。以降は5カ月連続で横ばいとなり、2025年4月契約は3000円の値下げ。
異形棒鋼=8万5000円(2025年4月契約にて3000円値下げ。)
厚板:2023年7月契約にて1万円下げ後、1年と2か月連続で価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。今回の2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。
厚板=10万円(2025年5月契約にて3000円値下げ。)
コイル類4品種:2024年10月契約で1万5,000円の値下げ。以降は5カ月連続で横ばいとなり、2025年4月契約で酸洗コイル5000円、他は3000円の値下げ。
ホットコイル=8万9000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
縞コイル=9万2000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
酸洗コイル=9万5,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて5000円値下げ。)
溶融亜鉛めっきコイル=12万1,000円(2024年10月契約で1万5,000円値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
以下カットシート類(2024年10月契約で1万5,000円の値下げ。以降は5カ月連続で横ばいとなり、2025年4月契約で3000円の値下げ)
熱延鋼板=9万4,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
縞鋼板=9万7,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
酸洗鋼板=10万4,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
[申込締切日:2025年8月20日(水)12時まで]
(IRuniverse K.Kuribara)