2025年上期(1〜6月)の世界EV販売台数(BEV=バッテリー電気自動車、PHEV=プラグインハイブリッド、FCEV=燃料電池車)は合計983万台となり、前年同期比34.1%の増加を記録した。内訳はBEVが634万台(64.5%)、PHEVが349万台(35.5%)、FCEVがわずか2千台(0.0%)で、依然としてBEVが主流を占めている。販売台数の増加ペースはやや鈍化しているものの、過去5年間では年間平均360万台以上の純増を維持しており、市場拡大基調は続いている。

地域別動向
地域別にみると、中国が引き続き最大市場で40%増を達成。欧州も28%増と高い伸びを示した。一方で、米国市場は3%増にとどまり、成長が鈍化。カナダでは販売減少が確認された。国別ではノルウェーが依然として突出しており、新車販売に占めるEV比率が87%(BEV85%+PHEV2%)と世界最高水準を維持。スウェーデン、デンマーク、オランダなど北欧諸国もシェアが高い。一方で米国、スペイン、オーストラリアなどは2割未満にとどまり、地域ごとの差が鮮明になっている。
メーカー別・モデル別動向
メーカー別では、中国のBYDが圧倒的な存在感を見せた。BEV98万台、PHEV109万台を販売し、シェア21%で首位を確保。吉利汽車グループが2位、テスラが3位に続いた。BYDは特に海外市場で急成長しており、欧州での販売が380%増、米州でも117%増と拡大ペースを速めている。
モデル別ランキングでは、テスラ「Model Y」が46.9万台で首位を維持し、世界のベストセラーEVとなった。2位は「Model 3」(22.7万台)、3位は中国の「吉利ジオメ・星遠BEV」(20.5万台)。そのほかBYDの「シーガル」「ドルフィン」「宋Plus」シリーズ、五菱「宏光Mini EV」、小米「SU7」など中国勢が上位に並び、従来の欧米ブランドに取って代わる勢いを見せている。

普及率の推移
EVの普及率は世界の新車販売に占める割合で23.5%となり、HEVを含むxEV全体では39.9%に達した。過去10年で急速に上昇しており、特に2019年以降は大幅な拡大を続けている。今や主要市場の多くで新車販売の2割以上を電動車が占める状況となっている。
バッテリー市場
2025年上期のEV向けリチウムイオン電池搭載量は483GWhに達した。首位は中国のCATLで146GWh、シェア30%を確保。BYDが20%、LGエナジーソリューションが13%、パナソニックが6%、CALBが4%と続き、上位5社で74%を占める。韓国勢のSK On、サムスンSDI、中国のSVOLT、国軒高科(Gotion)、孚能(Farasis)なども一定のシェアを確保している。世界的に中国メーカーの存在感が突出する一方で、日韓勢が欧米自動車メーカーとの連携を強化し、シェア維持を図っている。
ハイブリッド市場
ハイブリッド車(HEV)市場も拡大を続けている。2025年上期のFHEV+MHEV販売台数は705万台で、前年同期比19.3%増。内訳はFHEVが379万台(シェア54%)、MHEVが326万台(46%)となった。メーカー別ではトヨタ自動車が圧倒的な首位でシェア31%を占め、ルノー・日産・三菱アライアンス、ステランティス、現代自動車、BMW、スズキなどが続いた。トヨタはハイブリッド分野において依然として他社を大きく引き離している。
今後の見通し
EV Volumesの予測によれば、2025年通年の世界BEV+PHEV販売は2130万台に達し、前年比19.6%増となる見込み。地域別では中国が1373万台、欧州が377万台、北米が176万台とされる。2030年には世界販売が4000万台に拡大し、成長率は次第に鈍化するものの市場の主流として定着する見通しだ。
まとめ
2025年上期のEV市場は中国メーカーの台頭と欧州での普及拡大が際立った。BYDを中心とした中国勢が販売・バッテリー双方で支配的な存在感を示す一方、テスラはモデルYの強さでトップモデルの地位を維持。北欧諸国が普及率で先行する一方、米国など一部市場では伸び悩みが目立つ。バッテリー供給体制の強化、各国の政策、インフラ整備が今後の市場拡大を左右するとみられる。
(本稿はEV Volumes提供の「EV and Battery Market Outlook 2025H1」に基づく)
(IRuniverse Lin)