
日本チタン学会・日本チタン協会産学連携委員会共同主催行事として第5回日本チタン学会 講演大会(2025年度)が、2025年10月9日(木)9:00~10日(金)12:00に、新潟県上越市、直江津学びの交流館で開催された。
アイアールユニバースは、本学会に取材枠として参加させていただいた。
初日9日の行われた基調講演を紹介する。
本講演では、日本製鉄(株)におけるこれまでのチタン・チタン合金の開発及び國枝氏が関わられたTi-5Al-1Fe(51AF)及びTi-5Al-1.5Fe-0.2Si(52AFS)の冷延薄板の開発、Ti-5Al-2Fe-3Mo(51AFM)の高機能について紹介した。

質疑応答 講演(國枝氏)質問(御手洗氏:東京大学)
座長 石本氏(富山大学):左 上田氏(右)
第5回日本チタン学会 講演大会のプログラムは下記のとおりです。
第5回日本チタン学会 講演大会(2025年度) プログラム / 日本チタン学会
10月9日
基調講演1:汎用元素を活用したV フリーチタン合金の開発 日本製鉄 國枝 知徳氏
参考文献 (高強度α+β型チタン合金Ti-5Al-1Fe について)
VフリーTi-Al-Fe系チタン合金ストリップの開発 418-08.pdf
日本製鉄(株)のチタン事業は、鉄鋼で培った高度な製造技術に基づいてチタン製品を効率的に製造しており,かつ製造プロセスとしては溶解から鍛造‐圧延‐製品までの一貫製造工程を有する世界でトップクラスのチタンの一貫製造メーカーである。
Ti-6 mass%Al-4 mass%V に代表されるα+β型チタン合金は、高比強度および耐食性に優れた材料として、古くから航空機用途に幅広く使用されている。
また、近年では、それらの特性に加え意匠性、生体親和性にも優れることから医療用途、マフラー、コンロッドなどの自動車用途、更にはゴルフ、時計、眼鏡 といった民生品用途に幅広く用いられるようになっている。
このように多種多様な用途に用いられることから、用途ごとに適したチタン合金が開発されている。
近年、チタン合金の合金元素として多用されるVが高価なだけでなく、原料の約95%が中国、ロシアおよび南アフリカに偏在していることからカントリーリスクの懸念がある。
そのため,Vフリーのチタン合金が望まれている。
日本製鉄(株)では、安価汎用元素である,Al,Fe,Cu,O,N を活用したVフリーのチタン合金を種々開発している。
今回の講演では冷延薄板製造可能なTi-5Al-1Fe(51AF)及びTi-5Al 1Feをベースに安価汎用元素のAl, Fe及びSiを用いて最適成分を検討したTi-5.5Al-1.5Fe-0.25Si(52AFS)について紹介した。
高強度α+β型チタン合金Ti-5Al-1Feは、Ti-6Al-4Vよりも室温で高い加工性を有しており,冷間圧延ストリップ製造が可能。
開発方針としては、Ti-Fe-O系において、酸素当量を増やせば、強度が上がるが、入れすぎると脆化する。そこで、Fe又はNで補う。
Feを増やせば、強度は上がるが、Feは偏析しやすい。そこで、Moを採用。

新日鉄住金(株)独自のチタン合金より
Super-TIX®51AF(Ti-5Al-1Fe)、Super-TIX®52AF(Ti-5Al 2Fe)は、最汎用α+β型チタン合金であるTi-6Al-4Vと同等の強度を有し、さらに製造コスト低減のため高価な希少金属元素であるVを安価なFeで代替したα+β型チタン合金である。1990年代に開発されて以降,自動車部品やゴルフクラブ等の民生品を中心に,様々な分野への適用が展開されている。
また,Super-TIX®523AFM(Ti-5Al-2Fe 3Mo)はβ安定化元素であるFeやMoを5mass%も含有し たnear β型のα+β型チタン合金であり,Ti-6Al-4V、Ti-Al-Fe 系合金よりも高強度、高延性で、高いコストパ フォーマンスを有する合金として2000年代初頭に開発さ れ、二輪車や一部高級四輪車の吸気エンジンバルブ等に 使用されており、今後のさらなる用途拡大が期待されている。
FeとMoを活用した523AFMは 時効硬化しやすい特徴がある。
通常は、時効硬化するのに保持時間は4時間~8時間の保持が必要となるが。僅か5分でビッカース硬さが100程上昇する。
これは、β相内に10nm程度の微細なα相が出現することによるもので、FE-TEM観察にて確認している。 Fe及びMoがスピノーダル変態をすることで、微細な組織となり、強度が出たものと考えているとのこと。
参考文献
高強度チタン合金Super-TIXX® 523AFMの機械特性に及ぼす熱処理条件の検討