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BIRバンコク2025 現地レポート:次世代リサイクルの潮流

2025/10/30 08:19 FREE
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BIRバンコク2025 現地レポート:次世代リサイクルの潮流

BIR(Bureau of International Recycling)2日目の会場では、世界各国からリサイクル業界の多様なプレーヤーがブースを構え、ラウンジや展示エリアでは活発な商談や技術交流が行われていた。
IRuniverse取材部もDanieli、Tanaka/Austin AIなど注目企業のブースを訪問し、さらに日本市場への展開に関心を示す韓国やインド出展者や参加者にも話を聞いた。

Tanaka/Austin AIを訪問 ― LIBS技術によるアルミスクラップ自動選別装置を紹介

IRuniverse取材チームは、田中科学機器製作株式会社(Tanaka)および米国Austin AI社を訪問し、最新のアルミスクラップ自動選別技術について話を聞いた。

田中科学機器製作株式会社は2024年10月、米Austin AI社と業務提携を締結。Austin AIが製造・販売するレーザー誘起破壊分光法(LIBS: Laser-Induced Breakdown Spectroscopy)を活用したアルミスクラップ自動選別装置について、日本国内の代理店として設置・修理・点検・アフターサービスを担っている。

Austin AIは、米テキサス州オースティンを拠点とするセンサーソーティング技術のリーディングカンパニーで、LIBSを用いた非鉄スクラップの高速・高精度選別装置を展開している。レーザーをスクラップ表面に照射し、発生するプラズマの発光スペクトルを解析することで、アルミ合金の種類や微量成分を瞬時に判別できるのが特徴だ。

軽金属の高効率リサイクル化が求められるなか、両社の提携は、日本国内における高付加価値リサイクル推進に向けた大きな一歩として注目されている。

Danieliもブース出展 ― イタリアと日本の協業が拓くグリーンスチールの未来に期待

同じく会場内では、イタリアの、冶金業界向けの機械・プラントの設計、製造、販売、設置を行う大手企業Danieli社も展示ブースを構えていた。

Danieliは、今年大阪で開催された万博においてイタリア館のスポンサーを務め、同社のデジタル電気炉を「楽器」として使用した世界的にもユニークなコンサートを開催したことで話題を呼んだ。

ブースでは担当のOmar氏が、「イタリアと日本の企業が協力し合うことで、グリーンスチール分野において革命的なソリューションを生み出せると期待している」と語った。環境対応と高効率化を両立させるDanieliのリサイクル技術は、今後日本市場でも一層存在感を高めるとみられる。

また、日本法人として「ダニエリ エンジニアリング ジャパン株式会社」が近年JFEスチールの大型電気炉受注など、実績を重ねている。来月11月25日に名古屋で開催されるCircular Economy Symposium in Nagoyaでは、ダニエリ・ジャパン(DEJ)の泉社長が登壇し、最新のリサイクルマシンを紹介する予定だ。日伊両国の技術連携が、グリーンスチールの潮流をさらに加速させると期待されている。

A C L Metals Private limited(インド) ― 月間1,000トン規模のアルミケーブル再資源化

インド・アーメダバードを拠点とするA C L Metals Private limited 社は、アルミニウムケーブルリサイクルを中心に事業を展開し、日本との新たな協業に強い関心を寄せている。

同社は現在、アルミスクラップケーブルを月間700〜1,000トン収集し、自社工場で解体・処理してアルミニウムを取り出し、最終的にインゴット製造へとつなげている。プラスチックも同時にリサイクルし、資源の最大活用を図っている。

 

担当者は「当社は鋼心アルミより線(ACSR)ではなく、絶縁体付きアルミ電線を求めています。プラスチックを再利用でき、アルミニウムの品質も維持できるからです」と語った。
実際に現場映像では、ケーブルが機械に投入され、プラスチックが剥がされ、スチールが取り出される効率的な循環プロセスが紹介された。

A C L Metals Private limited社では現在、原料の100%を海外から調達しており、主な輸入国はスペイン・米国・オーストリア。かつては日本からの輸入も多かったが、近年は発生量の減少により減っているという。同社は「今後、日本からの輸入を再び拡大させたい」と話した。

家族経営の小規模アルミホイルメーカーとして始まった同社は、現在グループ全体で50社以上を抱える規模に成長。
「2021年にこのリサイクル事業を立ち上げました。再生アルミを通じ、社会に還元する仕組みを広げていきたい」と語り、来年3月に開催されるTokyo Battery Summitへの参加にも意欲を見せた。

ECOYA EXPORT(韓国)― IT・GPS・ブロックチェーンで変えるリサイクルのトレーサビリティ

韓国のHRM Corporationが開発した「ECOYA EXPORT」は、リサイクル素材のトレーサビリティと認証の高度化を目的としたデジタルプラットフォームである。すでに韓国内で導入が進んでおり、IT、GPS、ブロックチェーン、リアルタイムデータ追跡などの技術を組み合わせることで、リサイクルプロセスの透明性と信頼性を高めている。

ECOYAを利用することで、ヤードオペレーターは原産地証明書(Certificate of Origin)やCRFレポートを効率的に作成でき、物流情報は自動的に記録・追跡される。QRコードによるログイン不要のアクセス方式を採用しており、ユーザーは即座に情報へアクセスできる利便性が特徴だ。

現在、ECOYAは中国語・日本語対応を進めており、東アジア市場全体への展開を目指している。新規ユーザー向けに6か月間のトライアル期間を設けており、自社のデジタル技術への自信がうかがえる。

ECOYAとBIR前夜祭の出会いでお話を伺った欧州発のSafiはいずれも「AI × デジタル技術でリサイクル業界の透明性と効率を高める」という共通の目的を持つが、Safiが素材識別と分析に強みを持つのに対し、ECOYAは追跡と証明に特化している点が異なる。

ECOYAの営業マネージャーTeddy Jue氏は、来月11月の「Circular Economy Symposium in Nagoya 」への登壇も検討中であり、IRunvierseとしても名古屋シンポジウムがECOYAの技術を日本に広める第一歩となることを期待したい。

まとめ ― BIRが示した“デジタル×グリーン”の新潮流

今回のBIRバンコク大会では、リサイクル技術の高度化に加え、AI・デジタル化・自動化がキーワードとして浮かび上がった。
IRuniverseでは、今後もBIRを通じて紹介された革新的なリサイクル技術の動向を追い、日本企業による導入や実用化の展望について継続的に取材していく。

 

(IRunvierse. R.S.)

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