イーグル工業(6486) 26/3H1決算メモ 再増額修正ややポジティブに変更
26年6月にNOKと経営統合を発表、26/3期は4.1%増収37.7%営利増に再増額修正
株価2772円(11/10) 時価総額 1379億円 発行済株49757千株
PER(26/3DO予:12.8X)PBR(1.08X) 配当(26/3会予)120円 配当利回り4.3%
要約

26/3H1は一般産業向け以外増収から3.1%増収30.1%営利増と上振れ着地
NOK系列のメカニカルシール、特殊バルブ大手、船尾管シールなどでは世界シェア6割占める。11/10に26/3H1決算が開示され、同日説明会が実施された。26/3H1は売上高855.10億円(期初計画比15.10億円上振れ、8/5修正予想比8.10億円上振れ、3.1%増)、営業利益55.47億円(同29.47億円、同7.47億円上振れ、30.1%増)、経常利益72.31億円(同26.31億円上振れ、同24.31億円上振れ、25.7%増)と、大幅な利益上振れ着地した。

セグメント別では自動車・建機向けが売上高459.45億円(3.6%増)、営業利益15.07億円(2.2倍)。EVの伸び率鈍化もグローバル台数が伸び、トランスミッションの多段化、および無段化による低燃費化に貢献するサスペンション用ソレノイドバルブ搭載車種の販売好調なことから、内燃機関向けなどの低調を補い増収を確保した。利益面ではMIX良化で計画を上回り大幅増益となった。

一般産業機械向けは売上高185.67億円(8.0%減)、営利21.59億円(18.7%減)と唯一、同期比で減収となった。石化業界の競争激化で東南アジア地域のプラント稼働率が低下し、補修需要が減少、利益も稼働率減で減益に。

半導体業界向けは売上高73.62億円(25.2%増)、営業損失9.79億円(同期比11.36億円赤字減少も赤字継続)となった。生成AI関連で業界は回復過程にあることから同社製品の需要も緩やかに回復、在庫調整一巡で売上の伸び率は高い。利益面では製品構成がレガシー中心とみられ、他社より収益性が低く、加えて大型設備投資実行で固定費負担増が重荷になっている。

舶用向けは売上高94.83億円(11.0%増)、営業利益26.37億円(0.7%増)となった。新造船需要が拡大し、修繕需要も堅調に推移し、順調に売上が増加した。利益面ではMIX悪化で利益率が低下し微増益に留まった。

航空・宇宙関連は売上高41.51億円(4.2%増)、営利2.15億円(50.0%減)と、防衛関連の予算の伸びと宇宙関連の売上増で売上増となったが、利益は増産対応費用増で大幅減益となった。

営業利益の増減要因ではコストダウンや生産性向上で15億円、MIX良化で9億円、販売価格値上げ7億円の増益効果に対し、原材料高8億円、人件費増6億円、為替円高5億円のマイナス効果の差し引き、12億円の営業利益増加となった。

26/3期自動車・建機、舶用向け好調で4.1%増収37.7%営利増に再増額修正
26/3期は26/3H1の収益が上振れたことを踏まえ、8/5の増額修正を再増額し、配当も10円増配の年間120円配当予想とした。26/3期再修正予想は売上高1710億円(期初計画比50億円増額、8/5予想比40億円増額、4.1%増)、営利117億円(同27億円増額、同11億円増額、37.7%増)、経常利益153億円(同22億円増額、同8億円増額、27.2%増)予想とした。また配当を10円増配の年間120円とした。

事業別では期初計画に対し自動車・建機、舶用が収益ともに増額となっている。自動車向けは下期も数量で上期並を確保、価格改定も進めるとのこと。半導体についても下期が上期並みに推移し、利益面では赤字半減を見込む。航空宇宙は投資先行で減益予想としている。
具体的に自動車・建機向けではサスペンション用ソレノイドバルブの好調な販売、EVのグローバル生産増が継続するとしている。前者は自動車の動力源に依存しない品目であり、電池搭載による車両重量が重くなるEV向けとして採用が拡大している。またEV向け製品群も着実に増えている。

舶用業界向けでは新造船、アフターサービスともに堅調に伸びているが、中大型船の船尾管シールトップシェアを活かしシェアアップを続けている。

半導体向けでは先行投資してきた新製品群の寄与が始まりつつある。具体的には高周波通電用途(エッチングやプラズマCVD)向けに回転するステージやアームに高周波電力を供給、あるいはウエハ表面検査、電気特性検査のプロービングシステム向けのスリップリングがある。さらに、次世代成膜装置向けロータリージョイントなどが先端半導体生産向けに実証段階まできている模様で、赤字の急速な縮小が見込まれる。

航空・宇宙分野では、売上面では防衛を含む航空機、宇宙産業向けともに拡大している。利益面では投資先行が続いているが、受注増加で27/3期には100億円大台超えが視野に入ってこよう。

一般産業機械は足元で東南アジアでのプラント稼働率低下によるアフターサービス需要の低迷により収益は横ばい状況にあるが、在庫調整が進展、底打ちから緩やかな回復が見込める。
営業利益の増減予想では、MIX良化で20億円、販売価格値上で15億円、コストダウン・生産性向上で30億円の増益効果を見込む。一方、原材料高16億円、人件費増11億円、為替円高6億円(1$=150円、前期比2.6円の円高)を減益要因として見込んでいる。ちなみに期初計画に対し売上増額・MIX良化で8億円、新規プロジェクト受注に伴う損失10億円軽減、人件費増の抑制6億円などが増額修正の要因となるとしている。全体として、会社想定は妥当性があり、今回の増額修正に沿った収益が見込まれる。

2026年6月にNOKとの共同株式移転による経営統合を発表
同社は11/10の決算発表と同時に、同社、NOKの取締役会においてNOKとの共同株式移転による経営統合計画を発表した。具体的にはNOK:イーグル工業=1:1の新設する共同持株会社としてNOK Group株式会社を設立、これを株式移転完全親会社とする共同株式移転による経営統合契約締結を承認した。経営統合スケジュールは2026年6月下旬に株式移転計画承認定時株主総会を開催し、9月上場廃止、2026年10月1日に新規東証プライム市場にNOK Group株式会社として新規上場する予定とした。

ところで本経営統合の戦略的意義は、NOKの祖業であるシール事業の「再結集」にあるとみられ、1964年にNOKのメカニカルシール製造部門が独立して設立されたEKKと、約60年の時を経ての経営一体化を意味する。最大の背景には、自動車業界における「カーボンニュートラル」実現に向けたEVシフトという地殻変動がある。この変革に対応するため、NOKの強みであるオイルシール等の「有機材(ゴム)技術」と、EKKの強みであるメカニカルシール等の「無機材(金属・セラミック)技術」を融合させ、次世代モビリティ(EV、水素)市場で求められる高度な要求に応える、総合「シーリング・ソリューション」プロバイダーとしての地位確立を目指すことを狙っていると思われる。
今回の統合発表は、両社の対照的な業績動向が示された2025年11月10日の決算発表と同時に行われた。EKKが半導体・自動車事業の回復を背景に2026年3月期通期業績予想の再上方修正(営業利益117億円)を発表したのに対し、NOKは同日、主力の電子部品(FPC)事業の深刻な不振(スマートフォン向け低迷、車載バッテリー向けプロジェクト中止)を理由に、同通期営業利益予想を従来の377億円から329億円へと大幅に下方修正している。NOKが長らく成長の柱と位置づけてきた電子部品事業が停滞する一方、EKKが次世代市場で確実な収益を上げている現実を直視した結果であると結論付けられる。NOKがEKKの技術力と収益力を完全に取り込むことで、グループ戦略の軸足を祖業であるシール事業へと回帰させる、「原点回帰」かつ「防衛的再編」の側面を強く持つ戦略的決定と言えよう。本経営統合の最大の背景には、両社の主要マーケットである自動車産業が直面する、100年に一度の変革にあるとみられる。すなわち、気候変動対策としての「カーボンニュートラル」実現はグローバルな至上命題となり、各国政府の規制強化と市場の要求により、自動車の動力源は従来のICE(内燃機関)からEV(電気自動車)、PHEV、FCV(燃料電池車)へと不可逆的なシフト(次世代モビリティ市場)の渦中にある。この地殻変動は、NOKとEKKのコア事業であるシール製品に対し、「既存需要のシュリンク」と「新需要における要求仕様の高度化」という二つの側面から強烈な変革圧力を受ける状況にある。第一に、ICEの主要構成部品であるエンジン(クランクシャフト、バルブステム等)やトランスミッション、燃料タンク関連のシール(オイルシール、ガスケット)は、EV化の進展に伴い、その需要自体が構造的に減少する。これは特に、自動車向けオイルシールを主力の一つとするNOKにとって、中長期的な収益基盤の毀損に直結する重大な脅威となっている。第二に、EVやFCVといった新しいモビリティは、従来存在しなかったコンポーネント(e-Axle、大容量バッテリー、PCU、燃料電池スタック)を搭載する。これらの部品は、ICEとは全く異なる環境下(高回転、高電圧、冷却液(LLC)への対応、熱マネジメント、水素の封止)で機能する必要があり、シール製品にも従来とは比較にならない高度な機能が要求される。例えば、e-Axleのモーター軸シールには、20,000 rpmを超える高速回転への対応と低摩擦(電費向上)が、バッテリー冷却系バルブには精密な熱マネジメント機能が求められる。この「既存市場の縮小」と「新市場の高度な要求」という二重の課題に対し、経営統合により次世代モビリティ・次世代エネルギー市場に向けた環境・省エネに資する新製品の開発や海外へのさらなる販路拡大といった重要な課題への迅速な対応が可能となろう。最大のシナジーは、両社の技術的強みの融合にある。NOKの強みである「有機材(ゴム)技術」と、EKKの強みである「無機材(金属・セラミック)技術」という、異なる素材技術を幅広くグループ内に有することで、次世代モビリティやエネルギー市場で求められる高度な要求に応える製品ラインアップの拡充が可能となる。また両社の異なる顧客基盤(NOK:自動車、EKK:一般産業機械、半導体、航空宇宙等)を活用し、相互の販路拡大が期待される。さらに両社が保有する国内外の物流・営業・生産拠点を効率的に運用し、コスト削減を図るとともに、事業規模拡大により「購買力の向上」も見込まれ、収益性の改善が期待される。そして「NOK Group 株式会社」として持株会社の戦略機能がグループ全体を俯瞰した投資戦略を立案・実行することで、M&Aを含む事業投資なども戦略的に推進することができる。
なお今回の統合にあたり、NOKによるEKK株32.03%保有という資本関係下ながら、EKK側の独立した特別委員会が交渉を主導し「1:1」の対等比率を確保した点は、一般株主の利益保護の観点から高く評価される。
株価は5/14の決算発表で営業利益増予想としたこともあり、多少戻っていた。この中で7/25に増額修正が開示され、7/28から急上昇、8/5の26/3Q1発表日に2582円の年初来高値を更新し、その後も継続的に上昇、10/27には2841円の高値をつけている。現在26/3期再増額会社予想EPS216.13円に対しPER12.8倍はプライム市場機械平均PER20.0倍に対し割安感がある。なお類似事業を行うニチアス14.6倍、バルカー14.2倍、ピラー15.3倍に対しても似通った水準ながらやや割安となっている。またNOK(7240)の12.3倍とほぼ同じ水準である。同社は同業界では半導体向け比率が低く地味な存在であり、また防衛関連でもそのウエイトは低い。しかし26/3期は利益で大幅増額となり、再増額修正も行っており、ニュートラルから評価を上げたい。但し今回の経営統合は業績伸び悩みのNOKとの統合となっており、株価も11/11は下落に転じている。27/3期以降の業績拡大については伸び率鈍化も懸念されるため、評価としてはややポジティブに変更するにとどめたい。
(図表、写真はカタログ、会社説明会資料、ニュースリリース、HPから添付、チャートはヤフーから添付)



*バルカー(7995)、ニチアス(5393)、ピラー(6490)との相対比較

*NOK(7240),豊田合成(7282)、住友理工(5191)との相対比較

(IRuniverse Okamoto)