11月18日13時半、大平洋金属は11月11日に発表した26/3期2Q決算について説明会を行った。説明に使われた資料はこちら。説明は岩舘社長が行った。
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同社はフェロニッケル専業メーカーであるため、業績については関連記事及び説明資料を参照。ここでは、25年5月14日に公表した「中⻑期戦略PAMCOvision2031」について、特に事業ポートフォリオの再構築について掲載する。
<中⻑期戦略PAMCOvision2031>

〇事業ポートフォリオの再構築(資料11ページ)
事業ポートフォリオの再構築については、資料12ページの左図の通りに成長性・収益性を見込む。現在のコア事業であるニッケル事業について、業態をゼロベースから見直し、新たなステージへの発展を目指している。
また、右側の損益サマリーについては、28/3期からの営業黒字化と、その後の安定した収益確保を目指している。
〇金属製錬事業(同13ページ)
ニッケル事業は、ステンレス原料向けの事業からマット原料向けに用途を拡大し、転換も視野に事業損益の大幅な改善を目指している。
また、製錬時に大量消費するエネルギー関連基盤は、新規事業においても活用することから、速やかな利用とともに、途切れない体制を維持する。
多金属ノジュール事業は、30/3期から本格稼働を見込んでいることから、一定期間は業績の改善ペースは緩やかになることを見込む。
7ヵ年の事業損益サマリーは、左下のグラフの通りで、26/3期及び27/3期は業態転換期と位置づけている。右側の進捗状況では、ニッケル事業のうち、マット原料向け事業については、事業に必要となるニッケルリサイクル資源の活用を検討している。これにより、現行のフェロニッケル事業の損失は抑制傾向となることを見込んでいる。また、継続的に調達できるよう、ニッケルリサイクル資源の収集ルートを探索している。
多金属ノジュール受託製電事業は、フィージビリティスタディが終了し、受託製錬コスト等を精査している。設備投資については、投資金額、投資時期、発注部品など、必要な投資のスケジュールを精査している。また、事業を幅広く展開するため、国内外の関係先と意見交換し、確実な事業化を目指している。
〇小売電気事業(同14ページ)
小売電気事業者として高圧特高圧事業者向けの小売電気事業を立ち上げ、電気事業分野への進出を目指す。また、地域の発電事業者と連携し、付加価値の高い地場の再生可能エネルギー発電による電力の供給を目指している。
7ヵ年の事業損益サマリーは左下のグラフの通りで、26/3期及び27/3期は構築機関と位置付けている。
右側の進捗状況だが、25年4月より小売電力の販売を開始した。主に東北エリアの顧客発掘を目指し、高圧・特高圧事業者向けの販売活動を展開している。また、単なる電力の販売にとどまらず、これまでの電力需給に関わるノウハウを生かして需要家のニーズに応えられる事業展開をすべく、25年10月から専門部署である電力事業部を設置し、体制を一層強化した。さらに、風力、太陽光、バイオマスなどの非化石エネルギーにより発電されたグリーン電力の供給も合わせて展開している。その他、VPP(仮想発電)市場へ参入し、同社の電力負荷の調整力を生かし、収益の底上げを進めている。
〇ベリリウム事業(同15ページ)
ベリリウムに関しては、まだあまり広く知られていない素材ということもあり、ステークホルダーからも質問を多くいただいているので、まずはベリリウムとはどんな素材かについて概要を説明する。5月の説明会の本編資料の付録から一部を抜粋した内容。
ベリリウム事業は、ベリリム鉱石からベリリウム製品を製造し、将来的に核融合市場及び既存のベリリウム合金市場に販売する事業となる。
ベリリウムは、フュージョンエナジーを利用した、いわゆる核融合発電に必要不可欠な物質だが、現状では、価格が高すぎる、生産量が足りないといった問題があり、核融合発電の社会実装は困難となっている。また、従来の技術では2,000度での高温処理が必要であり、精練コストも高コストとなっている。
そこで、同社は、24年10月に、MiRESSO社と包括的業務提携契約を締結し、ベリリウム製造販売事業及び低温生成技術の技術プラットフォーム事業の事業化に向けて、両社が有する経営資源やノウハウを持ち寄り、推進している。
右上の同社が取り組む意義だが、MiRESSO社は、量子科学技術研究開発機構、略称QSTからスピンアウトした認定ベンチャーであり、青森県に拠点を置いて、ベリリウム事業の事業化により核融合発電の社会実装に貢献することを目標としている。
一方、同社は、古くから青森県八戸市に拠点を置き、各種鉱石から金属を製造した設備、インフラ、知識、経験及び実績を持っているため、ベリリウム事業の事業化に多くの点でシナジーの創出が可能と考えている。
左下、核融合発電市場の拡大イメージについて、将来的な核融合発電の社会実装に向けて、ベリリウム鉱石からベリリウムを製造することを目的としている。ただし、核融合発電の社会実装には期間を要するため、その間は、核融合発電の実証及び既存のベリリウム合金市場へベリリウムを供給する予定。
なお、ベリリウム合金市場と核融合発電市場の市場規模予測については、本説明会の別冊に記載しているので参照。
このベリリウム合金市場について、資料15ページ右下にあるように、航空・軍事、自動車、エレクトロニクス、ヘルスケアの各分野において成長が期待される製品となっている。
中長期戦略におけるベリリウム事業の事業戦略は、資料16ページ左上に記載の通り。7ヵ年の事業損益サマリーは左下の図の通り。
右側の進捗状況は、25年7月29日に、MiRESSO社との資本業務提携契約の締結及び第三者割当割当増資の引き受けを実施した。
この内容については、同社の八戸製造所に、MiRESSO社のベリリウム製造パイロットプラント「BETA」の建設に関する投資として15億円を引き受けたもの。このパイロットプラントは26年度中に完成を予定しており、製造及び販売の展開を速やかに行うための体制を整備している。現在、進行状況は順調。
ベリリウムは生産量が少ないためメジャー品ではないが、幅広い用途で活用でき、優れた材料であるため、今後、顧客基盤を拡大し、生産量の増加を目指していく。
〇カルシウムアルミネート製造販売事業(同17ページ)
高炉の電炉化により、脱硫材・造滓材としてのカルシウムアルミネートの需要拡大が見込まれる。そこで、同社は、アミタホールディングス社との協業によるカルシウムアルミネート製造販売事業を立ち上げ、環境リサイクル事業を目指している。これまでの事業で培った技術を利活用し、リサイクル原料の付加価値化を図る。
そして、低炭素社会を背景に、高炉から電炉へシフトする中、電炉鋼の不純物除去に必要なカルシウムアルミネートの需要拡大に対応していく。
7ヵ年の事業損益は左下の図の通り。右側の進捗状況は、25年度の下期より本格的に事業を開始しており、アミタホールディングス社との協業によって、これまでサンプルで使用いている顧客を中心に、脱硫材・造滓材としての販売を展開予定。
今後、事業計画の達成のための活動としては、製造面では、リサイクル原料の活用拡大による製造コスト低減とカルシウムアルミネートの高付加価値化を図る。販売面では、試験使用してくれる顧客の開拓と別用途への販売を検討している。17ページ右下には、製造実証試験の様子やカルシウムアルミネートの製品の写真を掲載している。
<資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について>)同18ページ)
同社の取り組み内容については、5月の説明会の本編資料でも説明の通り、企業価値向上に向けた取り組みを推進していく。
資金使途のイメージとしては、株主への還元、成長投資、財務健全性の確保の3つの要素のバランスを考慮しながら使途を決定していくが、株主還元については、利益配当金の方針として、25年2月に株主資本配当率DOE4%めどを指標として導入している。また、内部留保金については、経営環境の変化に機能的に対応するための基金とするとともに、事業投資、設備投資及び資本政策の一環として自己株式取得等々に活用していく。
進捗状況は、資料の19ページの通り。
<主なQ&A>
Q、30/3期以降は、多⾦属ノジュール受託製錬事業がメインとなるが、商業化へ向けた国際ルール化等。まだ決まっていないようだが、その⾒通しは?
A、25年7月までに第30回国際海底機構で採掘ルール化の議論が⾏われたが、⼀定の進展はあったもののルール化の⾒通しはまだ⽴っていない。国際海底機構(ISA)のルール化は⻑期化しており、速やかなルール化を望んでいることは事実。同社としては、状況を注視し、国際的に信任を得たルートで事業を立ち上げることを最重要課題として、今回の戦略で想定するスケジュールをターゲットに、ルール化され次第、速やかに事業開始できるよう進めていく。
Q、多⾦属ノジュール製錬について、南⿃島EEZ内の深海資源も注目されているが、同社はこちらのレアアースも製錬する可能性はある?
A、南鳥島の深海資源については国内で調達可能な資源であり、重要鉱物を海外依存している日本にとって今後の動き次第では製錬の可能性は⼗分にあるのではないかと考えている。
昨年、東京⼤学と日本財団が日本国EEZ(排他的経済⽔域)内の南鳥島沖の鉱床から多⾦属ノジュールの試験採掘を行った。この多⾦属ノジュールは、レアアースの鉱床の上に堆積している。そのためレアアースを採掘するためには、先に多⾦属ノジュールを採取してからレアアースを採掘するか、多⾦属ノジュールとレアアースを⼀緒に採掘することになる。
多⾦属ノジュールの製錬を検討する同社にとって、当然興味を持っている案件であり、東京⼤学と製錬技術について意⾒交換をしているが、技術的に南鳥島産の多⾦属ノジュールを製錬することは可能であり、日本国の重要鉱物のサプライチェーン構築にも貢献できるものと考えている。
ただし、南鳥島沖の多⾦属ノジュールのNi、Cu、Mnのメタル成分の含有量は太平洋に存在する多⾦属ノジュールと比較して、それぞれ約半分の含有量であり、多⾦属ノジュールだけ採掘して製錬するのではなく、⾼価なレアアースと⼀緒に採掘すれば多⾦属ノジュールは原料としての価格は非常に安く提供される可能性があるため、将来的には日本国内で採掘した多⾦属ノジュールの製錬事業も視野に入れている。
そのための⼀環として、東京都の助成にて、東京⼤学等が研究している南鳥島沖多⾦属ノジュール製錬に関する研究に参画している。
南鳥島沖の多⾦属ノジュールの商業採掘の計画は未定であり、実現するとしても2030年以降になるものと考えられるが、政府の⼒の入れ具合で進捗が早まることを期待している。
※ただ、同社のこれまでの技術では多金属ノジュールからニッケルやコバルトを取り出せても、レアアースの取り出す技術は今のところない。また、内閣府など関連企業数社にも取材したところ、深海から資源を取り出すのにはかなりのコストがかかるため、技術的なブレーススルーが必要との事。大学などのように小型潜水艦等で少量のサンプリングはできるが、長い間深海にも潜り超高圧のもと、長らく作業するための機械は、製造できても今のレベルではかなり高価なものになるとの事。ちなみに、機械の素材として耐食性の高いステンレスをメインにチタンなどが検討されているようだが、塩分による耐食性を考慮すれば、ステンレスなどは、かなり分厚くなり、コストもかかるようだ。陸上での掘削コストが高騰すれば、開発スピードが上がるかもとのことだった。
(IRuniverse 井上 康 )