11月26日17時半、三菱マテリアルは中期経営戦略について説明会を開催した。説明に使われた資料はこちら。説明は田中社長が行った。

<私たちの目指す姿>(資料2ページ)
同社は、現中期経営戦略2030策定時に、人と社会と地球のために循環をデザインし、持続可能な社会を実現することを私たちの目指す姿として定めた。この目指す姿に変更はない。
<中期経営戦略2030 Phase1 振り返り>(同3ページ)
Phase1の最終年度である2025年度の財務計画は、ネットD/Eレシを除き未達となる見込み。
これは、需要増を前提とした事業戦略、投資計画となっており、外部環境が大きく変化した際の戦略や計画の見直しが十分ではなかったことに起因すると認識をしている。
加えて、25年度は、鉱山会社からの銅精鉱を購入する際の条件であるTC/RCが大幅に悪化。これらを踏まえて、外部環境悪化時にも収益性を確保できるよう抜本的構造改革を開始するとともに、中計2030のPhase2の計画をリセットし、新たに2026年度以降を対象とする中期経営戦略を策定することにした。
<新中期経営戦略>(同4ページ)
〇新中経
今回の新中経で最も伝えしたいポイントをまとめている。同社は、資源循環ビジネスで未来を作る企業となることを基本方針に掲げる。
ここで言う未来を作る企業とは、単なる現状の延長線上での成長を目指すのではなく、私たち自身が変革し、社会や産業の持続可能性を支える存在になるという強い決意を示している。
具体的には、資源循環ビジネスを通じて限りある資源を最大限に活用し、廃棄物を新たな価値へと転換することで、環境負荷の低減と経済的価値の両立を目指す。
これらは大きく3つに集約される。まず1つ目の成長戦略は、資源循環ビジネスのグローバル展開。これまで日本の精錬所を中心に展開してきた資源循環事業を、今後は欧州、米国での2次原料製錬所の新設などを通じてグローバルに拡大していく。
また、すでにグローバルに展開しているタングステン事業や超硬製品事業などについても展開を加速する。
2つ目の成長戦略は、Eスクラップなどの2次原料製錬の拡大とタングステンリサイクル率の向上。具体的には、Eスクラップ処理量を35年までに倍増させ、タングステン製造拠点でのリサイクル原料比率を30年までに100%とすることを目標とする。加えて、低TC/RCが継続すると見込む中、3つ目に記載している銅精鉱の他社との共同外交により、銅精鉱調達の国際競争力強化図ることも重要な施策となる。
〇事業機会×競争優位(同5ページ)
まず、現状の銅精鉱の低TC/RCの状況は今後も続くと見込まれる。そのため、収益性の高いEスクラップへのシフトは、同社の持続的な成長に不可欠。銅の将来需要は、脱炭素化やデジタル化の進展により長期的に増加すると予測される一方で、銅精鉱の供給量には限りがあり、Eスクラップなどのリサイクル原料の重要性がますます高まっている。
世界的にEスクラップの発生量の増加が見込まれるが、欧州と米国では発生量が処理量を上回る状況が継続すると予測している。また、重要鉱物の囲い込みの動きも強まっているため、発生地域での処理体制の構築が求められる。
同社は、世界トップクラスのEスクラップの集荷、処理能力と技術力を有していることに加え、下段リサイクルから伸銅品までのバリューチェーンを保有している。
これらの強みを生かして、Eスクラップの集荷、処理をグローバルに展開することで、35年度までに処理量を倍増することを目指すことにした。
次に、レアメタルであるタングステンについて。次世代の電池や防衛産業での需要の増加が見込まれる一方、一次原料の埋蔵地域は偏在している。同社は、24年度にドイツのH.C.Starck社を買収したことにより、世界最大のスクラップ処理能力を獲得している。さらに、処理能力を拡大し、中国を除くタングステン製造拠点におけるリサイクル原料比率を30年度までに100%とすることで、需要増に応えるとともに、収益力の向上を図っていく。
〇新たな組織体制へ移行(同6ページ)
同社の資源循環ビジネスは、大きく銅に関する資源循環とタングステンに関する資源循環に分けられる。今回の組織再編では、リサイクル原料の集荷処理から伸銅品やタングステン素材までをマテリアル領域とし、さらに川下に加工を進めた高機能製品や超硬製品をプロダクト領域と位置付け、それぞれグローバル展開を加速する。
マテリアル領域では、関連事業を集約することで、2次原料製錬や資源循環ループ、タングステンリサイクルの拡大を推進する。
プロダクト領域は、高付加価値な製品やソリューションの提供を通じて収益性の向上を図ることがミッションになる。
具体的には、現行の金属事業カンパニーの製錬資源循環事業、高機能製品カンパニーの銅加工事業、加工事業カンパニーのタングステン事業、これらを集約し、マテリアル領域とする。
現行、機能製品カンパニーの電子材料事業及びLuvata社の事業、加工事業カンパニーの超硬製品事業は、プロダクトを領域とする。なお、マテリアル領域の銅加工は、伸銅品と呼称を変更する。
また、Luvata社の事業は、製品のライフサイクルなどを考慮して、電子材料事業と合わせて高機能製品事業とする。
さらに、資源事業は資源循環ビジネスには含めていないが、マテリアル領域で使用する銅精鉱の安定調達や安定した収益基盤の構築に貢献する役割を担っている。
再生可能エネルギー事情は、脱炭素社会の実現に寄与する位置づけ。
〇抜本的構造改革(同7ページ)
両から質への経営を転換し、銅精鉱鋼処理から二次原料製錬への収益構造の転換、生産体制や事業内ポートフォリオの最適化、本社機能の集約などを迅速に進める。
施策の意思決定は本年度中に行い、多くの施策について27年度までに執行を完了させる考え。これらの施策により、28年度には、25年度比でROE+3ポイント、ROIC+2ポイントの改善効果を織り込んでいる。
また、11月11日に公表している通り、JX金属、丸紅と銅精鉱の購入、銅精鉱由来の電気銅等の販売にかかる事業統合の協議、検討を開始している。
本件の影響については、検討、協議段階のため、ROE及びROICへの改善への影響は未折り込みであるものの、改善の上積み、加速に寄与するものと考えている。
〇財務目標(KPI)(同8ページ)
28年度の財務目標は、ROE8%以上、ROIC7%以上、ネットD/Eレシオを0.5倍以下、ネット有利子負債/EBITDA倍率3.5倍以下とする。先ほど説明した抜本的構造改革の効果により、ROE及びROICを着実に改善する。
抜本的構造改革の効果以外では、資源事業の高座配当や持分法投資利益の増加などを盛り込んでいる。
目標達成の蓋然性は高いと考えている。29年度以降の長期の目標値については、2次原料製錬の収益貢献の本格化により、ROE10%以上を目指す。なお、ROICについては、成長投資の実行段階において一時的に停滞することも想定しているが、同社で算定しているWACC約5%を上回る7%以上とすることを目標としている。
〇キャピタル・アロケーション(同9ページ)
26年度から28年度までの3年間、累計で5,000億円のキャッシュインを見込んでいる。財務規律を維持するため、一部を有利子負債済返済に充当するが、営業キャッシュフローや事業売却等で得た資金を、資源循環ビジネスのマテリアル領域を中心とした成長投資に優先的に振り分ける。
株主還元は安定的な配当の継続を重視し、DOEをベースとした方針への変更を検討している。
また、自己株式取得については、キャッシュフローの状況、株価及び財務記述を踏まえ、機動的に行うことを検討する。
〇マテリアル領域(製錬・資源循環)(同10ページ)
資源循環ビジネスのマテリアル領域のうち、銅に関する資源循環では、二次原料製錬への転換を進め、収益性の向上を図る。銅精鉱鋼処理量は、25年度のとの比較で60から70%に減少させる方向で検討している一方、Eスクラップ集荷量及び処理量は、先に説明した通り、35年度に倍増を目指す。
右下の図は、顧客とE-Waste排出先パートナーとの共用により使用済み製品を預かり、同社のリサイクルプラント、製錬プラントもしくは伸銅品のプラント2点、再資源化素材または加工品に変換する資源循環ループを表している。
資源循環ループを自ら構築、拡大し、トライサビリティを確保したリサイクル電気銅やリサイクル伸銅品の安定供給を実現する。
●グローバル展開(同11ページ)
集荷面では、サンプリング分析技術の強化やリサイクラーとの協業を図る。二次原料処理の拡大は、まず、日本においては、Eスクラップ処理量を拡大する設備投資を実行中。さらに、銅精鉱処理量に対するEスクラップ処理量比率の最大化に向けた技術開発を進める。
欧州においては、三菱マテリアルヨーロッパ社において二次原料製錬所新設の検討を開始している。
米国では、二次原料製錬所新設のプロジェクトを推進している。
資源循環ループについては、E-Waste排出元パートナーとの提携を強化し、日本で確立したスキームネットワークを海外にも展開することを想定している。
●伸銅品(同12ページ)
伸銅品事業は、資源循環ループにおける顧客との接点として重要な役割を担う。顧客発生スクラップの循環利用の推進や、合金リサイクル技術の高度化を目指す。加えて、付加価値の高い銅合金の開発やデータセンター向けなどの新分野の改革を進める。
●タングステン(同13ページ)
レアメタルであるタングステンに関する資源循環をグローバルに構築する戦略について。
H.C.Starck社において、リサイクル量を1.5倍に拡大する設備投資や、米国内リサイクル拠点の新設を検討している。
集荷面では、Eスクラップ集荷ルートの活用や、後ほど説明する超硬製品事業での使用済み製品の回収強化を図る。これらの施策により、30年度までに中国拠点を除く欧米、アジア、日本のリサイクル輸出100%を目指す。また、超硬製品向けの安定供給と合わせ、電子部品向けのタングステンフンなど高付加価値製品の拡販を推進する。
〇プロダクト領域(同14ページ)
●超硬製品事業の戦略については、タングステンの資源循環の観点では、各国の販売会社での使用済み製品の回収を強化する。また、抜本的構造改革として、生産体制最適化による固定費圧縮を図る。
販売面では、航空宇宙、医療、半導体分野を政策候補のターゲット市場とし、高付加価値な製品とソリューションを提供する。
地域戦略としては、インドを起点にした拡販を推進する。これらの施策により、超硬製品事業は、収益性とキャッシュ創出力を高め、同社グループ全体の成長に貢献する役割を担う。
●高機能製品の事業戦略については、事業内ポートフォリオの組み替えによる資本効率の最適化をまず実行する。その上で、半導体、xEV、ヘルスケア領域への高付加価値な製品とソリューションの提供、事業内横断の開発推進などにより、収益性と資本効率を高め、超硬製品事業と同様にグループの成長に貢献する役割を担う。
〇資源 / 再生可能エネルギー(同15ページ)
●資源事業では、銅精鉱の安定調達や既存経営の収益性向上に努める。マントベルデ銅鉱山では、プラントの処理能力の拡張計画が進行中。これらにより、同社銅鉱石処理量に対して持分銅量比率を拡大し、低TC/RCによる減益影響を緩和する。また、コバルト、スカンジウム等の副産物有化元素の回収に関する技術開発も行っている。
●再生可能エネルギー事業は、脱炭素社会の実現に向けて、自社消費電力量相当の電力量調達を長期的な目標としている。地熱を中心に新規開発拠点の開拓を進める。
ここまでご説明した事業戦略を実行する上では、経営基盤をさらに強化し、これと事業戦略を連動させながら一体的に進めていくことが不可欠。
〇経営基盤強化(同16ページ)
●人事戦略については、第1に、資源循環ビジネスのグローバル展開に採用した人材の育成、配置を戦略的に実現する。また、抜本的構造改革を進める中で、生産性と資本効率を高めるための変革を推進できる人材を後押しし、同社グループ全体の競争と成長を生み出す基盤作りを進める。
●開発戦略は、サーキュラーエコノミー、GHG削減分野において、新規事業や新技術の創出を目指す。
●生産技術に関しては、ものづくり力、エンジニアリング力の強化を図る。
●デジタル戦略については、グローバル標準のIT基盤やセキュリティ強化、AI活用の加速により、資源循環ビジネスの拡大に貢献する。
なお、これらの各戦略の詳細やカーボンニュートラルについては、次ページ以降に補足資料をつけているので参照。
これまで説明した通り、同社は資源循環ビジネスで未来を作る企業になることを目指す。
私たち自身が変革することにより、急速な環境変化に対応し、会社を絶えず発展させていく。
(IRuniverse 井上 康 )