11月27日13時、大和工業は10月末に発表した26/3期2Q決算を受けて説明会を開催した。説明に使われた資料はこちら。なお、説明会資料は決算発表時にも開示されていたので、今回新たに追加された「2030年ありたい姿」について掲載する。26/3期の上期実績及び通期見通しについては関連記事及び説明資料を参照。

関連記事
⇒「大和工業:26/3期2Q決算を発表し、業績見通しを上方修正」
<2030年ありたい姿>
〇「2030年ありたい姿」への挑戦(資料31ページ)

23年11月に公表したもの0だが、同社は2030年ありたい姿として形鋼グローバルナンバーワンとしての地位を確固たるものとし、新たな事業領域でも挑戦を続ける企業、これを実現するための重点事業戦略として、コア事業である形鋼事業の強靱化と、新たな鉄インフラグリーン事業領域への進出を掲げている。
これら2つの重点戦略を包含し、2030年ありたい姿のベースとなる指針が、カーボンニュートラル循環型社会実現に向けた継続的な取り組み。収益拡大という観点での投資を実行しつつ、合わせて、カーボンニュートラル循環型社会の実現に向けた観点での投資も積極的に実行し、グローバル企業として新たな価値を創造し、豊かな社会の実現に貢献していきたいと考えている。
最後に、2030年ありたい姿を実現するためには、何より人材が重要。新たな挑戦を支えるプロフェッショナル人材の育成と充実に向け、同社の抱える最重要課題の1つとして積極的に取り組んでいく。
〇「2030年ありたい姿」実現への歩み(同32ページ)
コア事業の強靱化の取り組みとしては、昨年5月にインドネシアでのGYS設立により、米国に次ぐ第2の収益の柱を構築すべく取り組んでいるASEAN3拠点体制を確立した。3拠点間でのシナジーの最大化に引き続き取り組み、競争力強化を図っていく。こちらについては後ほど説明する。
既存拠点の競争力強化の取り組みとして、日本において積極的な設備投資や協業関係の強化に取り組んでいる。JFEスチールグループとの協業については、協業の第1歩として、この4月より、JFEスチールの形鋼製品の一部について、ユーザーの要望に応じて同社を供給元として紹介してもらう取り組みを開始しており、実際に受注量の増加にもつながってきている。また、両社の強みを生かした加工事業の一体運営のあり方についての協議も継続している。
さらなる成長に向けた新拠点の獲得については、インドを有力候補と定め、進出に向けた検討を進めている。インド進出にあたっては、同社単独ではなく、インド現地企業との合弁を前提に検討を進めている。
これまで同社がグローバルで培ってきた技術力や創業ノウハウ、これらを最大限に活用して、インド市場に高品質な形鋼を供給し、インドのインフラ成長を支える役割を果たしたいと考えている。
新事業領域への進出への取り組みとしては、今年の4月に、新鉄源製造技術を保有する米国のElectra社への出資を行った。
世界的に脱炭素化が加速化する中、次世代の電炉向け鉄源として大きな期待が寄せられており、同社もステークホルダーとして、Electra社の鉄原技術を同社グループの電炉で使用し、最終製品まで一貫したバリューチェーンが構築可能かどうか、これを検証する共同実験を実施するなど、Electra社の技術発展に寄与し、将来的な鉄源の多様化やコストの最適化に取り組んでいく。
Electra社の直近状況を共有すると、将来的な量産体制の確立に向けた第1歩である生産規模1,000トンの試験プラント、デモプラント、これの建設を10月に開始した。今後、製造設備等を順次導入していって、来年度は500トン程度の製造からスタートする。その後、生産規模1,000トンへと拡大させていき、商業化に向けた資源研究活動を進めていくことになる。なお、Electra社へは、同社の米国事業における重要なパートナーであるNucorも創業当初から資本参画しており、本件を機に、NYSの運営のみならず、Electra社を通じた協業にも取り組むことで、Nucorとのパートナー関係をさらに強化、発展させていく。
〇「2030年ありたい姿」達成へのロードマップ(同33ページ)
この資料については、中東事業からの撤退方針を踏まえ、少しアップデートしているが、コア事業である形鋼事業の強靱化において、加工生産能力800万トン体制の構築を目指すという基本方針に変わりはない。既存拠点での競争力強化に取り組むとともに、有力候補であるインドをはじめとした新拠点の獲得による生産拠点の拡大により、事業ポートフォリオを再構築し、グローバルでの持続的な成長を図っていく。
〇コア事業の強靭化に向けた主な投資(同34ページ)
こちらは、コア事業である形鋼事業への主な投資内容及び進捗状況を示した資料。引き続き着実に実行していく。
〇コア事業の強靭化
●米国事業(同35ページ)
米国のH形鋼の市場規模約550万トンと推定され、同社のJVであるマーケットリーダーのNYSを含め、3つのプレイヤーが加戦している。
また、貿易障壁によって輸入材の入りづらいマーケットであるため、高水準の高材マージンを維持できる環境が続いている。
需要面においては、2021年以降の高収益は、コロナ禍を契機としたパソコンを使った在宅勤務の状態化、これがデータセンターの増設につながり、また、ネット購買の拡大によってAmazonの物流倉庫の拡充、これらに加えて、半導体メーカーの米国への誘致や会議、これによる新しい半導体工場の新設、そしてAIの発展によるさらなるデータセンターの増設、加え、総額1兆ドルのインフラ法案に裏打ちされたインフラの維持強化の動きなど、すべてが形鋼需要に直結している。
特に、データセンター需要においては、Nucorグループとしての一体販売戦略の強みを活かして確実に受注を確保し、収益につなげており、今後も非常に明るい見通しを持っている。
当面の間、米国での加工需要は強含みで推移すると思われ、引き続き、大型サイズのH形鋼及び鋼矢板の受注は安定的に確保できると考えている。
また、米国での関税動向に伴う事業影響だが、鉄鋼製品について、3月に、これまで適用除外となっていた国からの輸入品に加え、それからFabricated Steelも含め、全ての輸入品へ25%の関税が課せられた。さらに、この25%の関税率については6月4日に50%で引き上げられた。
H形鋼以外で輸入が増えていたFabricated Steel、これが近年での厄介事だったが、今回、Fabricated Steelも課税の対象となったので、これは我々の米国事業への追い風になると考えている。
実際のところ、NYCは3月から9月にかけて計4回、合計135ドルの値上げを行っており、受注残高も3月以降は高水準を維持している。そして直近、11月の25日にはさらに40ドルの値上げを発表している。
トランプ政権の通商政策による米国景気自体の後退懸念もあるので、景気動向については注視していくが、米国事業の中長期展望としては、堅調な需要と需給バランスの維持が見込まれる市場においてNYSの強みを発揮することで、これまで同様に安定的に高収益を確保し、今後も同社連結業績を大きく牽引していくと考えている。
こちらはNYCとのポジション、そして強みをまとめた資料(同36ページ)。NYCは、巨大な米国市場において高い生産能力と技術力を生かしてマーケットリーダーの地位を確立している。大型サイズやAEOS(アイオス)と呼んでいる高強度それから溶接性に優れた製品などの付加価値の高い製品については、米国内ではNYCのみが生産可能であり、生産ラインナップの観点で国内の競合他社との差別化が図れているということが大きな強みになっている。
これらの製品は、かつてアメリカは主に輸入品、ArcelorMittalの輸入品に頼らざるを得なかったが、バイアメリカ指定のいわゆる政府主導案件での有利性の確保、そして輸入材と比べてのリードタイム短縮などのユーザー側のメリットがあることから、こういった製品供給での商機ありと考え、NYCでは、必要な投資も実行しながら製品開発を進めてきた。この取り組みが今日の収益力につながっている。
また、Nucorグループとしての一体販売戦略も、NYCの強みの1つ。Nucorグループは、データセンター関連の鉄鋼製品の95%以上を自社で製造、供給しており、建物の外壁から内部構造まで一貫して対応できる体制を整えている。これにより、柔軟かつ迅速なプロジェクト遂行を支えるということで、Nucorグループとしてデータセンター需要を囲い込んで、NYCの受注量の増加にも繋がっている。
●ASEAN3拠点(同37ページ)
ASEAN地域は安価な中国材との競争が激しさを増す中、中国材への対抗策としては、政府による関税措置強化への働きかけなどもあるが、中国材との差別化を図るべく、同社グループの技術力を生かして、耐震性に優れた製品など高付加価値製品の製造・販売の強化を推進している。
今年の3月に発生したミャンマーの中部地震以降、ASEAN地域において耐震性の高い製品への関心が高まっている中で、高い技術力とインサイダーの強みを生かして、今後も需要の伸びが期待できるデータセンター案件などの受注確保につなげていきたいと考えている。
また、インドネシアでは、インフラ投資予算の大幅削減などにより足元の形鋼需要は停滞しているが、将来の需要を見越して、GYSでの大型の圧延ライン増強に向けた設備投資を決定するなど、今後も中長期戦略による成長投資を進めていく。
引き続き、ASEAN地域のマザー工場であるタイのSYSを核に、タイ、インドネシア、ベトナムの3拠点で、製造・販売、調達のそれぞれの分野でシナジーの最大化を図り、域内シェアを拡大することで、米国に次ぐ第2の収益の柱に成長させていく。
〇企業価値向上のための戦略的なキャッシュ配分(同38ページ)
2030年、ありたい姿の実現のために、手元キャッシュを有効活用し、これまで説明してきた。重点事業戦略を実行し、さらなる高収益化を図ることで、安定したキャッシュインを確保し、そして、これらのキャッシュを継続的に株主還元の充実及びさらなる成長投資へと適切に配分し続けることで、継続的な、持続的な企業価値の向上を目指したいと考えている。
この基本方針をもとに、適切なキャッシュポジションを明確化するなど、さらに2030年ありたい姿の実現に向けた財務戦略の進化を図っていきたい。
<主なQ&A>
Q、タイのH形鋼に対するADは、来期の業績にどのような成果があるのか?
A、今回の中国材のH形鋼のAD措置によって、当然、同国からのH形鋼の輸入材の減少が期待される。一方で、鉄骨、これは関税の対象でないため一定の輸入量は続くということで、そことの競合は続くが、輸入材からの市場シェアの奪回に向けて、引き続き販売強化を進めていく。
来期の業績としては、AD措置の効果によるシェアの上昇、そしてデータセンター需要などの補足による販売数量の増加による利益向上を目指していきたい。
Q、インドネシアのGYS業績が低迷しているが、GYSに対する投資をどう評価しているのか?
A、GYSの上期のセグメント利益は、インフラ投資予算の大幅削減などによって需要が低迷したこと、それから安価な中国材の流入の影響等々あり、前年同期比で大幅減益の3,100万円の損失となったが、連結決算上ののれんの償却6億円を除いた現地ベースでの業績では6億円の利益は確保している。
事業環境の悪化によって稼働率が2-3割ほどにとどまっている中でも現地ベースの業績で利益が確保できているのは、GYSがインドネシア国内において中大型サイズを製造できる唯一のメーカーであり、また、耐震性に優れた製品などの高付加価値製品を製造できる高い技術力によるものだと考えている。
引き続き、中国材に対抗すべく販売戦略を強化するとともに、中長期地点での投資などについてもしっかりと実行し、業績の改善に努めていく。
(IRuniverse 井上 康 )