11月18日~20日までの間、名古屋のウィンクあいちで第66回電池討論会が開かれ、内外から多くの大学の研究者、企業の研究者、その他多くの技術者など合計2000人余が参加し、会議は盛況の内に終わりました。一言で電池といっても、その内容は多岐にわたり、発表件数も多く、一人で網羅できる訳ではありません。一部のセッションに参加しただけで、この電池討論会を語るのは“群盲象を撫でる”ことになり、筆者には不可能です。そこで筆者が参加した、Liイオン電池のリサイクルに関するセッションと、Liイオン電池の安全性を評価し、安全性を高める技術に関するセッションについて報告したいのですが、発表の内容や表示された図やグラフをここで開示することはできません。
全体の印象というか感想を述べるだけになりますが、ご了解願います。
電池討論会2日目のメイン会場では、Liイオン電池の回収、リサイクルについては、多くの研究がなされ、画期的な技術の発表もありました。Liイオン電池の回収・リサイクルには様々な方法があり、大別すると、EVから取り外した後に、状態を確認して再びEV用途にするリユース、ESSなどの他の用途にそのまま転用するリパーパス、ブラックマスにしてからバッテリーにするリサイクル等があります。
使用済みのLiイオン電池をどのように査定し、どう振り分けるかのノウハウが重要であり、その技術開発をする発表が多く見られました。セッション後の雑談で筆者が、
「日本にはリサイクル・リユースについて、これだけの研究実績があり、産業界の関心も高いのに、実際には多くのスクラップが海外に流れている。日本でリサイクルされないのはゆゆしき問題ではないか?」と言うと、他の参加者からも同意の声があり「中古車がどんどん海外へ流れている実態もあるし、何らかの対策が必要。リサイクル事業者に尋ねると『我々は対応する用意があるのに、肝心の材料が集まらない。スクラップを集める仕組みが必要』という返事だった」との発言がありました。
Liイオン電池のリサイクル技術は完成の域にあり、欠けているのは社会のサーキュラ-システムいう段階にあることを痛感しました。
もう一つ懸念するのは、リサイクルに関する発表では、リサイクルの対象が主に三元系の電池であり、LFPのリサイクルの話題が少なかったことです。三元系の場合、有価のCo,Niも回収できるため、リサイクルの採算性という点では魅力的ですが、もはや市場の主役はLFPに移りつつあり、LFPリサイクルに研究の軸足を移すべき段階と考えます。
無論、Liイオン電池の性能を追究する発表ではLFPについての報告が多くなされ、リン酸鉄系が重要視されているのは間違いありませんが、ことリサイクルについてはあまり議論されません。前述の通り、有価金属の回収が少ないからなのか、三元系のEVが主体である日本固有の事情なのか、LFPの登場が遅かったことによる時差によるものなのか、電池討論会の一部しか参加しなかった筆者には判断できませんでした。
面白いのはフッ素の問題に言及した発表が2件あったことです。リサイクル時のLi回収において、フッ素はLiFを形成して、Li2CO3の回収を阻害することから、Fをどう処理するかが課題です。その一方で、別のセッションでは次世代電池として全固体フッ化物電池の可能性が、議論されています。
一方では厄介者、他方では期待されるフッ素ですが、フッ酸となった場合の毒性を考えると、環境負荷も問題になります。その点を指摘する報告が無かったのがやや意外です。
電池討論会の3日目のメイン会場では、使用済みのLiイオン電池の劣化状況を診断評価する技術や、爆発・発火の可能性を予知評価する技術など、今すぐにでも現場に応用したい研究の成果が発表されました。これをLiイオン電池のリサイクルシステムに早く導入できるか、行政の手腕が試される段階にあると考えます。
またLi-SPAN電池という、エネルギー密度が500Kwh/kg~800kwh/kgという高性能電池に関する発表がありました。報告内容の詳細を紹介することはできませんが、これはLiイオン電池の応用範囲を広げるものです。
現在、航空機の電動化が複数の企業・団体で研究されていますが、電池のエネルギー密度が不足しているとの指摘があります。現在のLiイオン電池では200kwh/kg程度のエネルギー密度ですが、これでは実用航空機用としては全く不足で、最低でも400kwh/kgは必要だと指摘されています。
新開発のLi-SPAN電池ならその壁を乗り越え、航空機の電動化に道を開くものだと、筆者は考えます。
日々進化していく、新しい電池の世界からますます目が離せない・・というのが、今回の電池討論会に出席した感想です。
(IRuniverse Akai)