羽田近くリサイクル拠点で火災 廃棄物燃料保管施設、操業影響も
5日午後4時半ごろ、川崎市川崎区浮島町の廃棄物処理工場「タケエイ川崎リサイクルセンター」で火災が発生し、4階建て建屋の上層部が激しく燃えた。工場内で分別作業中だった従業員20~30人は全員避難し、けが人や逃げ遅れは確認されていない。施設内には廃棄物由来の固形燃料も保管されており、川崎市消防局は消防車約17台を出動させて消火活動に当たった。火災は同日夜までにほぼ鎮圧されたが、詳細な焼損状況や出火原因は調査中で、循環型経済を支える臨海部リサイクル拠点の安全管理が改めて問われることになりそうだ。
川崎市消防局などによると、119番通報は午後4時半ごろで、通報時には「4階部分が燃えている」との情報が寄せられた。同施設は通常時には約80人の従業員が勤務しているが、火災発生時は20~30人が作業中だった。全員が速やかに避難したため、人的被害は出ていない。
タケエイ川崎リサイクルセンターは、建設現場や工場から排出される混合廃棄物を受け入れ、分別処理を行う中間処理施設。木くずを木材チップに、コンクリート塊を砕石に再資源化するなど、産業廃棄物の循環利用を担ってきた。施設内には、プラスチックや紙くずなどを固めた廃棄物由来の固形燃料(RPF=Refuse Paper & Plastic Fuel)も保管されていたとみられる。
RPFは製紙工場やセメント工場などでボイラー燃料として利用される再生燃料で、石炭や重油の代替として需要が高まっている。ただし可燃性が高く、保管時の温度管理や防火対策が重要とされる。今回の火災で、こうした固形燃料の保管状況や安全管理体制が焦点となる可能性がある。
現場は川崎臨海部の工業地帯で、羽田空港から約5キロメートルの距離に位置する。周辺には石油化学コンビナートや物流倉庫が立ち並び、首都圏の産業・物流を支える一大拠点となっている。浮島町は埋め立て地で、廃棄物処理施設やリサイクル工場が集積する地域でもある。
川崎臨海部では近年、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の推進拠点として、廃棄物の再資源化施設の整備が進んできた。カーボンニュートラル実現に向け、廃棄物由来燃料の需要は今後も拡大が見込まれており、リサイクル施設の役割は一層重要性を増している。
一方で、可燃性物質を大量に扱う施設での火災リスクは以前から指摘されてきた。2019年には埼玉県内のリサイクル施設でRPFが自然発火し大規模火災となった事例もあり、業界全体で安全対策の強化が課題となっている。
タケエイは東京都に本社を置く廃棄物処理大手で、産業廃棄物の収集運搬から中間処理、最終処分までを一貫して手掛ける。川崎リサイクルセンターは首都圏における主要拠点の一つで、建設系廃棄物を中心に年間数万トン規模の処理能力を持つとされる。

今回の火災により、施設の操業に影響が出る可能性がある。建設現場や製造業からの廃棄物受け入れが停止すれば、首都圏の建設・製造活動にも波及する恐れがある。また、再生燃料の供給が滞れば、セメント工場など需要側の操業にも支障が生じかねない。
川崎市や消防当局は、出火原因の特定を急ぐとともに、施設の安全管理体制について詳細な調査を進める方針だ。廃棄物処理業界では、今回の火災を受けて、可燃性物質の保管・管理基準の見直しや、防火設備の強化を求める声が高まる可能性がある。
環境省は2020年、廃棄物処理施設での火災防止に向けたガイドラインを策定し、定期的な温度監視や消火設備の整備を求めている。しかし、全国で年間数十件の廃棄物処理施設火災が発生しており、実効性のある対策が課題となっている。
カーボンニュートラルの実現には、廃棄物の資源化・燃料化が不可欠とされる。その一方で、リサイクル拠点での安全確保も重要な課題だ。今回の火災は、循環型経済の推進と安全管理の両立という、産業界全体が直面する課題を改めて浮き彫りにした形だ。
同社は現時点で火災の詳細や今後の対応について公式な発表を行っていない。消防当局による原究明と、企業側の説明責任が注目される。
(IRuniverse T.Morio)