2025 SMM APAC鉛蓄電池産業会議(LABC2025、主催:SMM)が2025年12月4日〜5日の2日間、ベトナム・ホーチミン市で開催された。同会議には世界30カ国以上から約300名の鉛蓄電池産業の主要プレーヤーが参加し、ベトナムの主要企業に加えて、世界の鉱石サプライヤー、電池メーカー、エンドユーザーが集結した。会場では、原材料調達、サプライチェーン最適化、持続可能なリサイクルソリューションの構築など、業界が直面する多様な課題について活発な議論が行われた。
本稿では、会議のブース展示で取材したインド系企業2社を紹介する。
Ardee Industries

Ardee Industriesは、インド南部にあるアーンドラ・プラデーシュ州のネロールに本社を置く鉛製錬・加工企業だ。ネロールはベンガル湾に近接し、主要港であるクリシュナパトナム港へのアクセスに優れる工業・物流拠点であり、金属加工産業が集積する地域として知られている。同社はCPCB(中央公害防止委員会)の基準に準拠したリサイクル施設を運営し、グローバルな供給網の一部を形成するクローズドループ体制を構築して高品質な鉛合金の製造を手がけている。
取り扱う製品は鉛合金、および純度99.97〜99.985%の鉛精製。顧客仕様に応じて製造しており、自動車用・産業用バッテリー、電線・ケーブル、弾薬など、幅広い産業で利用されている。同社の製造プロセスは環境負荷の低減と品質確保の両立を重視しており、国際基準に沿った精製・製錬体制を構築している。工場には5〜50トンの精製炉を複数備え、オートメーション化された鋳造ラインは1時間あたり約10トンのインゴットを生産できる能力を持つ。この設備により、世界各国からの需要に対応できる安定した供給体制が整っており、製品は鉛精製および鉛合金を合わせて月間約10,000トンであるとのこと。
MIRU取材チームはインド国内における鉛スクラップの流通状況や、同社での取り扱いについて質問した。インドでは鉛需要が依然として大きく、近年は輸入量も増加傾向にある。一方で、同社は国内でのスクラップ回収が十分に行われているとし、原料調達に不足はないという。
ただし、市場には違法業者の存在や、バーゼル条約に基づく輸入規制の厳格化といった課題があり、政府は違法業者を撲滅するためのルール整備を進めている。同社によれば、こうした政策環境のもとでもスクラップは主に国内調達で賄えており、安定した供給体制を維持できているとのことである。
ESWARI GLOBAL METAL INDUSTRIES (EMI)
ESWARI GLOBAL METAL INDUSTRIES (EMI)はインド南部カルナータカ州マンガロールに拠点を置く鉛製造企業であり、各種グレードの鉛精錬および鉛合金を製造・供給している。現在、3つの製造ユニットを操業しており、鉛バッテリーおよび鉛スクラップの年間処理能力は13万2,000トンに達する。
同社は、鉛スズ合金、鉛アンチモン合金(1.6%、2.5%、6%、10%)、鉛カルシウム合金(正極・負極用)、さらにグレーレッドリードを含む鉛酸化物など、多様な製品ラインアップを展開している。また、調達面では鉛蓄電池スクラップ、鉛地金スクラップ、ドロス類、はんだドロス、アルミニウム・銅・ケーブルスクラップ、PCBスクラップなど幅広い原料を取り扱っている。
EMIは「責任あるリサイクラー」であることを掲げ、倫理に反するリサイクルを行わず、従業員と環境に配慮した操業方針を貫いており、政府機関や企業のEPR(拡大生産者責任)対応先としても選ばれており、業界内で持続可能性に配慮した企業として評価されている。
MIRUチームの取材に対して、同社はインド国内の鉛スクラップ需要が非常に大きく、国内回収だけでは十分に賄えない状況であると説明し、この点は日本市場も同様であるだろうとコメント。インドではスクラップ価格がLMEの約50%程度で精錬所に販売されているが、供給不足は依然として深刻である。そのため、同社はアフリカやUAEを中心にスクラップを輸入しており、バーゼル条約の規制を遵守する企業からのみ購入する方針を徹底している。一方で、国内には違法業者が多く、業界全体の課題として問題視している。
今回の取材を通じて明らかになったのは、インドの鉛スクラップ市場に対する企業の認識が必ずしも一致していない点である。Ardee Industriesは、国内の回収体制が整っていることから原料調達に大きな不足はなく、安定した生産を維持できていると説明した。一方で、EMIは需要が増大するなかで国内回収だけでは十分に賄えず、輸入に頼った調達が不可欠だと述べている。
両社の見方には差異があるものの、共通しているのは、インド市場には違法業者が依然として多く、鉛スクラップの輸出入に関する透明性の確保が大きな課題として残っているという認識である。バーゼル条約に基づく規制の厳格化や政府の取締り強化によって状況は改善しつつあるものの、企業側は依然として慎重な姿勢を崩していない。両社とも、バーゼル規制を遵守する供給源を重視し、クリーンなサプライチェーンの形成を自社の競争力と信頼性の中核に位置づけている点が印象的であった。
インドは鉛スクラップの大規模な輸入国であり、国内需要の高さから今後も原料争奪が続く可能性が高い。今回取材した二社に共通していたのは、「違法業者の多さ」「透明性の不足」「国際規制との整合性」という点に対する強い懸念である。これらは、表層的な運用上の問題にとどまらず、インドの鉛リサイクル産業が抱える構造的課題そのものであると感じた。
(IRuniverse Midori Fushimi)