ヨコオ(6800) 26/3H1決算WEB取材メモ ニュートラルからややポジティブに変更
26/3期5.6%増収、5.4%営利減、7.0%経常減予想に8/6予想比増額、27/3期本格回復へ
株価2247円(12/22) 時価総額536億円 発行済株23850千株
PER(26/3期DO予15.4X)PBR(0.98X) 配当(26/3DO予)55円 配当利回り:2.4%
要約

26/3H1は4.6%増収、28.4%営利減も半導体向け回復と円安で8/6予想比上振れ着地
26/3H1は売上高426.75億円(8/6予想比16.75億円上振れ、前年同期比4.6%増)、営業利益15.07億円(同3.07億円上振れ、同28.4%減)、経常利益13.01億円(同9.51億円上振れ、同22.3%増)、税引利益13.32億円(同9.82億円上振れ、同2.3倍)と、半導体向け回復と円安寄与で8/6予想を上振れて着地した。

セグメント別では車載通信機器(VCCS)が売上高272.38億円(8/6計画比9.88億円上振れ、同期比1.7%減)、営利8.95億円(同0.55億円未達、同35.6%減)となった。部門の4割弱を占め中心となるシャークフィンアンテナが計画比増額もトランプ関税影響などで伸び悩み同期比若干減少となった。同じく4割弱を占める中継コードも在庫調整完了し計画比若干増額、同期比横ばいに。GPSアンテナも同期比若干減少し、計画比増額も同期比減収にとどまった。仕向け先では国内が135.81億円(同期比12.6%増)とトヨタ向けの回復が寄与も、海外は同期比6.7円の円高推移もあり176.25億円(同4.8%減)と、台数は増加も、販売額は伸び悩んだ。なお、新製品分野としてADAS関連事業が加わっているが、すでに売上構成比で同部門の14~15%、金額にして40億円規模となっているとのこと。上期については1社グループ向けが中心となっている模様。ADAS向けとしてカメラケーブル、接続用コネクタなどが含まれているとのこと。

利益面では労務費、物流費増、関税影響などに加え、計画比円安で売上が膨れたものの、販売数量での伸びは小さく、利益面ではコスト増となり、大幅減益を余儀なくされた。

回路検査コネクタ(CTC)は売上高89.52億円(8/6予想比4.52億円上振れ、前年同期比19.9%増)、営業利益8.04億円(同3.04億円上振れ、同1.9%増)と上振れ着地した。セグメント別では主要製品で8割弱を占める半導体後工程向け検査用治具がほぼ上振れの大半を占めた。これは生成AI向けロジック用テストピンの売上が、Nvidia向けなどで高シェアを誇り世界最大の半導体テストソケットサプライヤーに躍り出た台湾WinWay向けに伸長した。26/3H1では後工程の1/4程度を占め、同部門の最大仕向け先となっている。また主要顧客のクアルコム向けも新年度向けに新モデル向けがQ1に前倒しで受注が入るなどで上期として堅調に推移した。その他、欧州系のユーザーも堅調に推移している。一方、インテル向けは激減している。全体として後工程向けは14%程度の伸びとなった。全体の10%強を占めるクアルコムを中心とする前工程向けは、ほぼ計画通りに推移、新モデル向け納入が寄与し30%強の伸びとなった。電子部品向けも高周波電子部品検査治具用MEMSプローブカード(YPX)が新分野への投入で伸長、計画通りに推移し約倍増となった。

利益面では収益性の高いAI半導体検査ソケット向けピンの売上増寄与が大きく、8.15億円の増益効果があった。また為替の想定比6円の円安効果も利益増に寄与した。

無線通信機器は売上高55.25億円(同2.25億円上振れ、同1.2%増)、営利2.39億円(同0.89億円上振れ、同31.1%減)となった。主力のスプリングコネクタがPOS向けの在庫調整、トランプ関税の影響を受けて受注が減少した。またサムスンスマートフォン用ワイヤレスイヤフォン向けも、一部後ろ倒しとなったことで売上微減にとどまった。医療用微細部品はベンチャーエコシステム向けが販売力不足もあり伸び悩んだが、主要顧客向けカテーテル用部品等が好調に推移し、計画を若干上回り、同期比では3%程度の伸びとなった。

利益面ではスプリングコネクタにおいて金の上昇で金メッキコストが上昇し、1億円の原材料高影響がでた他、MIX悪化もあり0.5億円のコスト増が影響している。医療分野はエコシステムのコストなどもあり、部門として赤字継続となったと推定され、利益寄与にはなっておらず、全体として減益を余儀なくされた。

インキュベーション事業はほぼ大半が車載関連を占めるビジネスとなっていた。しかし5/1付けで承継した光波の光ネットワークソリューション事業の売上が寄与した。そのため売上高9.56億円(同0.06億円上振れ、同5.8倍)、営業損失4.53億円(同0.53億円未達、同5.3%赤字拡大)となった。利益面ではほぼ計画線で推移した。
26/3期5.6%増収5.4%営利減7.0%経常減予想に8/6予想比増額、円安で再増額も
26/3期会社予想を売上高875億円(8/6予想比35億円増額、5.6%増)、営利40.0億円(同10億円増額、5.4%減)、経常利益36.5億円(同15億円増額、7.0%減)、税引利益30億円(同14億円増額、34.7%増)予想と増額修正した。なお為替前提を1$=140円から145円に変更し、為替差損は8.5億円から3.5億円に縮小を見込んでいる。

セグメント別ではVCCSを売上高547億円(8/6予想比19.5億円増額、前期比2.3%減)、営利21億円(同0.5億円増額、前期比26.0%減)予想としている。全体の4割弱を占める主力のシャークフィンアンテナがトヨタの生産正常化で数量が回復、但し円高想定(25/3期152.74円→26/3期145.0円)としており、金額では6%減見通しとした。中継コードも同様な動きで8/6予想比増額、円高想定ながら銅価格上昇でこちらは1%増予想とした。なお、同部門について、Q4にはADAS関連で新規納入の量産化が始まるとして、26/3期ではADAS関連で15~20%まで構成比が高まる見通しとした。利益は26/3H1で一部海外での給与アップなどで原価高となったが、26/3H2はトランプ関税の影響が軽減、製品値上げなども見込まれ、営業利益率が上期比1.0ポイント程度改善する見通しとしている。但し通期では大幅減益は避けられないとしている。
CTCでは売上高190億円(同10.0億円増額、同21.7%増)、営利21.5億円(同7.5億円増額、同45.4%増)予想と大幅増額見通しに。基本的にAI半導体向けの好調持続でWinWay向けの拡大が継続、増額の大半が後工程の増加となり、後工程としては25%増を見込む。前工程はクアルコム新モデル向けで一部、クアルコム向け以外の立ち上げ遅れで、期初計画比多少減額、前期比横ばい程度と予想している。YPXも26/3H2に新規受注の取り込みを見込んでいたものが多少遅れる見通しから減額、前期比は40%程度の伸びにとどまる見通しとした。いずれにしてもAI半導体向けプローブピン生産が活況で、この増産対応に全力投球する見通しとしている。利益面では高採算のプローブピン拡大でMIX良化が見込まれ、加えて為替前提を見直した効果も大きく、利益では大幅な上振れ予想とした。
FC・MD事業は売上高112億円(同5.5億円増額、同1.5%増)、営利5.5億円(同2.0億円増額、同30.2%減)予想。主力のスプリングコネクタがPOS端末向けに在庫調整一巡、ワイヤレススマホ向けも多少伸びる見通しも、為替の見直し効果が主で、売上が2%増とどまる。医療用機器は既存大手向けが好調もベンチャー製品の減額から1%増にとどまる見通し。利益面ではスプリングピンの金価格高騰影響から、大幅減益が避けられないとした。
インキュベーション事業は8/6の期初計画を変更せず、売上高26億円、営業損失8億円予想。基本的に光波事業の取り込みが26/3H2はフルに寄与する見通しで、光波の利益寄与は27/3期以降となる見通しのため。
現状、CTCについては半導体生産の拡大が継続、特にAI半導体向けの活況が続く見通しで、増額修正が期待される。一方、CTC以外の部門においては不透明な要素も多い。会社前提よりも円安に推移しており、VCCSは利益下方修正圧力、FC・MDは金価格高騰影響、米中摩擦によるPOSの回復遅れも懸念され、会社計画並みにとどまると見られる。このため、全体としてはCTC事業の上振れによる営業利益の増額、経常利益では会社前提に対しさらに円安影響で経常利益の上振れが見込まれる。なお税引利益は光波の負の暖簾償却や補助金収入などがあり、前期比大幅増益予想と、税引利益も再増額修正が見込まれる。
中期経営目標で29/3期に売上高1080億円、営利129.6億円目指す
同社は28/3期に売上高1000億円、営業利益100億円、29/3期には新規事業拡大で売上高1080億円、営業利益129.6億円、ミニマム10として売上営業利益率12%を目標として打ち出した。

事業別に全体の柱となるのがCTC事業で、29/3期売上高260億円、営利60億円を目指す。各製品の具体的な目標数字は開示されていないが、製品ごとに今後の動向を見ていく。

まず後工程においては生成AI用GPU向けビジネスが牽引、新たなテストニーズ、新規顧客の拡大で事業拡大を図る。特にAI半導体向けはNVIDIA向けの台湾WINWAYへのプローブピン供給拡大に加え、テストソケット投入がカギを握る。これについてはすでにGAFAの一角から受注を獲得、検査ソリューション分野などで協業して事業拡大を目指す。また微細化の進展で、再配線前ウエハテストについてMEMSプローブを利用した全く新しいテストに対応する計画。スマホ向けではモバイルアプリ開発の重要性が年々増し、5G通信やAI・AR技術の進化から、ユーザー体験や開発プロセスに大きな変化が起きている。同社の主力ユーザーであるクアルコムにおいてもSnapdragonシリーズの開発において、高性能化、AI機能の統合、そして製造プロセスの微細化を加速させている。同社は高周波対応に優れた技術を有しており、同社へのAP向けソケット受注の拡大が期待される。さらに車載半導体向けテストソケットについてはオランダNXP社向けや米国アナログ大手のTI向けなどの拡大も見込まれる。このため、従来のインテル偏重による後工程での赤字転落の24/3期から、改めて27/3期以降の高成長が期待される。前工程についてはクアルコム向けに加え、第2ユーザーとしてオランダNXP向けのソリューション事業が26/3Q4から本格量産の見通しとなっている。現在、クアルコム向けは次世代通信技術(6G)向けにIRS(インテリジェンスリフレクションサーフェース:高機能反射板技術を利用した通信システム)トランシーバ向けの検査用用途が主力と見られる。今後、6G対応により27/3期以降はさらなる拡大が見込める。NPXについては、車載ネットワークMCUやトランシーバで高いシェアを有しており、CASEなどの拡大での検査ニーズ拡大で本格的な受注拡大が期待され、2社向けの供給本格化で27/3期から成長率が高まってこよう。YPXについては、ハイエンドAIスマホ向けなどでスカイワークス向けが拡大している。同分野は従来のSAWフィルタ向けに加え、BAWフィルタ(圧電材料の内部を垂直方向に伝搬・共振する弾性波を利用、プレミアムスマホなどの3GHz以上の高周波帯域で利用が拡大)向けの伸びを期待していたが、現状は多少伸び悩んでいる。しかし2026年のスマホモデルでは高機能AI対応スマホの普及が進むとみられ、改めて高い伸びが見込まれる。しかもスカイワークスが2025年10月に同業であるQorvoの買収契約を発表、スマホ向け高周波(RF)チップで競争力を増す可能性が高く、2027年以降に売上の伸長が見込まれる。
同社のCTC事業について事業戦略を下記に示すが、AI向け半導体、6Gを見据えたスマホ向け半導体、さらには自動運転を見据えた車載半導体向けの拡大が相まって、会社計画の達成は十分に可能な数字とみられる。

VCCS事業では車両進化に伴う高付加価値品の投入、ADAS製品への参入を見込み、29/3期売上高600億円、営業利益40.9億円を目指す。

同事業での成長ドライバはADAS向け製品の拡大が第一に挙げられる。すでに26/3期において戦略的製品の売上高を80億円と見込んでいるが、大半がADAS向けとなっている。しかも26/3Q4から、第2ベンダーへの量産が本格化するとのことで、27/3期には26/3期比1.5倍の120億円程度に拡大する見通しにある。その後は採用車種の拡大で29/3期にはADAS関連中心に240億円程度まで拡大する見通しとしている。このADAS関連は従来製品の営業利益率が4~5%にとどまるのに対し、5~10%の水準が見込めるとのことで、MIX良化で営業利益が高まる見通し担っている。
また新市場としてインド市場に注力する方針。インド自動車部品大手のLuma Industries社と合弁のLumax Yokowo Technologies Private Limited社(50%出資)が インドローカル向けに26/3期より売上拡大、同社の持分利益増が見込める。特に12/21にはVCCSの自動車用アンテナのインドでの生産能力増強を発表、合弁会社の工場を26年3月までにインド北部に移転・拡張し、29年度内に月産能力を現状比10倍となる月産50万台に引き上げる計画となっている。現在、新工場ではシャークフィンアンテナの他、自動車用ドア解錠、解錠用LFアンテナ、全球測位衛星システムなどを製作しているが、同事業関連で29/3期に40億円程度の売上寄与を見込んでいる模様。
同事業についてはADAS関連が日系メーカー中心とみられ、計画通りの展開が見込める。但し、自動車関税の問題は当面影響が軽微となったものの、EV伸び悩みなどもあり、事業環境の不透明さがある。このため既存事業の伸び悩みなどから、同事業での中計計画達成のハードルは高いと見られる。
FC(民生用コネクタ)事業については、29/3期に売上高110億円、営利17.3億円を見込む。既存のPOS事業はトランプ関税影響の一巡、物流合理化の進展から緩やかな成長を想定している。またワイヤレスイヤフォンもそれなりの需要を確保しよう。加えて期待するのはデータセンタ向け光トランシーバ。光電変換モジュール開発により、従来のSFP+の体積比1/3の小型化を実現している。またAIとスマート衣料のセンサ駆動型融合を図るスマートテキスタイル向けコネクタ等も少額ながら寄与しよう。但しデータセンタ向けは後発であり、事業拡大に時間を要し、当面は既存事業での緩やかな収益拡大にとどまろう。

MD(医療機器)事業は29/3期に売上高66億円、営業利益10.1億円を目指す。中身は既存のカテーテル関連が27/3期をボトムに緩やかな回復、またベンチャーエコシステムは販売力強化で29/3期に数億円の売上を見込む。これに加え、自社規格品でインオーガニックな成長を見込み、29/3期に20億円超を見込む。但し、従来から医療機器分野においては認証などで事業展開が遅延しがちであり、現実的には中計予想の未達の可能性が高い。

インキュベーションは29/3期に売上高44億円、営業利益1.3億円を見込む。26/3期は2025年6月に事業継承した光波のシステム・ソリューション事業の拡大が26.7億円寄与し、27/3期はフルに寄与し同事業で35億円程度に拡大するとしている。中計想定44億円は達成可能と見られるが、車両管理システムなどは提携などの進展が必要とみられ、これらの未達成を光は事業の拡大で補って中計計画の達成が見込まれる。
このように、同社の4事業において、特にCTC事業が成長の柱となり上振れが期待される。VCCSについてはADAS事業の拡大で計画並み、FC、MDは中計未達成懸念がある。インキュベーション事業は光波事業の拡大が期待される。全体としてはCTC事業の上振れで他の未達成事業を埋め、売上は上振れが期待される。利益については多少未達懸念があるものの、再度企業成長の軌道に回帰すると言えよう。
株価は26/3期期初計画が8/6に発表されて以降、緩やかに上昇、その後11/11の増額修正で急上昇し、12/11には年初来高値2360円まで上昇し、その後も高値圏で推移している。現在、26/3期会社修正予想EPS128.7円に対し、 PER17.5倍はプライム電機平均PER21.3倍に対し多少割安感があるが、特別利益分を除くと実質EPS110円程度と想定され、実質PERは20.5倍程度となり業界平均並みとなる。また山一電機16.4倍比較で割高、エンプラスの20.3倍に対して同等、日本マイクロニクス29.1倍に対して割安となっている。同社はNVIDIAのGPU検査用ピンの高シェア納入、クアルコム向けの高周波デバイス向けの拡大などが期待され、26/3期収益の再増額が見込まれる。また27/3期以降は先端半導体向けの売上拡大、ADAS向けの拡大によるVCCS事業の収益性回復が見込まれる。このため、AI半導体関連として評価が高まるとみられ、評価をニュートラルからややポジティブに引き上げたい。
(出所:図は25/3期、26/3H1決算説明資料より添付、もしくはIRユニバースで加工、チャートはヤフーから添付)



*山一電機(6941)、エンプラス(6961)、日本マイクロニクス(6871)との比較

(IRuniverse Okamoto)